[図解]三橋貴明の「日本経済」の真実がよくわかる本(PHP研究所)は、国民が「常識」と思っていたことを覆す経済の真相を解説。現在、円安や「インフレ」といったキーワードで経済についての不安が語られますが、本書は理解を助けてくれます。
『[図解]三橋貴明の「日本経済」の真実がよくわかる本』は、タイトル通り三橋貴明さんがPHP研究所から上梓しています。
表紙には、『なぜ景気が悪いのか?なぜ所得が増えないのか?』『日本は本当にヤバイのか?経済ニュースは嘘ばっかり』経済の基礎から説明して、解決策を提示する1冊』というコピーとともに、こう記載されています。
日本国債デフォルトはありえない!
TPP参加は日本にとって何の得もない!
「日本は輸出に依存している」は嘘!
借金とは「経済の原動力」である!
為替介入に対して国民は怒れ!
こうした内容で、国民から「常識」と思われていたことを覆す1冊というわけです。
すでに、MMT関連の書籍を何冊もご紹介しているので、MMT関連については重複する部分もありますが、本書は経済全般を図解で示しているので、広く深くわかりやすくなっています。
三橋貴明さんは、以前反MMTの、ひろゆきさんと議論した動画をご紹介しました。
三橋貴明さんは、落ち着いていましたね。
本書は、以前はAmazonUnlimitedの読み放題リストに入っていたのですが、2022年11月5日現在は外れているようです。
750円ですね。
しかし、お金を払ってでも読んでおく価値はあると思います。
今の「インフレ」で財政出動は不要になったのか
昨今、物価が上がっていることをもって、インフレであると表現されています。
そして、緊縮財政はデフレだからであり、積極財政をせよというMMTの理論は、もはやインフレなのだから破綻した、もしくは不要である、という向きもあります。
果たしてそうでしょうか。
そもそも、現在が「インフレ」であるとの表現にも注意が必要です。
日本銀行が、5月16日発表した4月の国内企業物価指数(2015年平均=100、速報値)は113・5と、前年同月に比べて10・0%上昇しました。
総務省がその4日後の20日に発表した4月の全国消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は、前年同月比2.1%上昇の101.4でした。 伸び率の大きさは消費税増税の影響で2.2%上昇した15年3月以来約7年ぶりだそうです。
マスコミでは、これをもって「インフレ」と表現しています。
さて、この「インフレ」は、財政出動が不要になるインフレなのでしょうか。
結論を述べると、違います。
インフレーションには、「良いインフレと悪いインフレ」の2通りあり、現在の値上げは好ましくない方の「悪いインフレ」といわれています。
「良いインフレ」というのは、デマンドプル型インフレーションといって、需要が増大することで品物が不足気味になり、物価が上昇するインフレのことです。
ニーズが高まるわけですから、経済が好循環の時に生じるインフレで、賃金も上がります。
成長型インフレ、などともいわれます。
一方、現在のインフレは、コストプッシュ型インフレーションと呼びます。
コストプッシュ型は物価だけが上がり、国民生活は苦しくなります。
そして、何より決定的な指摘は、GDPデフレータはマイナスなので、実は日本は今もデフレである、ということです。
GDPデフレータというのは、簡単に述べると、輸入品の影響を取り除いた、純粋に国内要因だけを反映した物価指数です。
いま消費者物価が上昇しているのは、石油や天然ガス、小麦やトウモロコシなど、輸入品の値段が上がっているから、輸入原材料の価格高騰を商品価格に転嫁しているに過ぎません。
そこで、純粋に国内要因だけを反映した物価指数であるGDPデフレータを見ると、今年4~6月期で前年比0.4%の下落で、コロナ前との比較では1.1%の下落になっており、それはすなわち日本経済はいまだデフレ下にあるというわけです。
デフレということは、財政出動が必要ということです。
非課税世帯への5万円給付や、電気代負担などが取り沙汰されますが、正直、それでは足りないだろうといわれます。
だって、今までだって200兆以上の補正予算を組んでも、デフレはびくともしなかったわけですから。
なのに、「インフレだから財政出動なんてトンデモない」なんていう考え方は、正反対の考え方です。
現在の円安はハイパーインフレを騒ぐことか?
現在、値上げとともに騒がれているのが円安です。
急激に円安が進んで、ハイパーインフレになって日本は財政破綻するのではないか、という危機感を煽るマスコミもありますが、もちろん、三橋貴明さんはハイパーインフレはありえないとしています。
まず、ハイパーインフレの定義ですが、過度に物価が上昇することで通貨が信用を失い、物価上昇に歯止めがきかなくなる状態を言います。
本書によると、学術的には、1年間で物価が131倍になること(コロンビア大学のケーガン教授)だそうです。
しかし、そんな数字は、戦争などで供給力が壊滅的に失われるようなことがない限り、あり得ないといいます。
日本も、1946年の焼け野原時代に、物価が4.6倍になったものの、それは「131倍」に比べたら桁が違います。
かつて、アフリカのジンバブエでハイパーインフレが起こりましたが、ロバート・ムガベ大統領が、37年にわたる長期独裁政権を維持するために、財政出動乱発でインフレを抑えられなくなり、失業率97%というもはや一国の経済としては完全に破綻している状態になったことは以前ご紹介しました。
ジンバブエは戦争により国内の供給能力が破壊され、さらに政府が紙幣を無原則に印刷することで戦費を調達しようとしたことから起こったもので、戦争もなければデフレである日本とは事情が違うことも、そのとき述べました。
円安だからチャンスという考え方もある
ハイパーインフレは起こらなくても、円安自体を心配する向きもあります。
しかし、かつては円高の時もあり、そのときはその時でマスコミは円高を心配しているのです。
急激な為替相場の変動は良いことではないとしても、変動相場制である限り、円高のときもあれば円安のときもあるのです。
不安を煽るのではなく、もっと前向きな方向を啓蒙できないのでしょうか。
三橋貴明さんは、そのようなマスコミにも批判的です。
そもそも、1985年の「プラザ合意」以前は、1ドル250円前後でした。
ところが、為替レート安定化に関する合意と称する「プラザ合意」で、各国の外国為替市場の協調介入によりドル高を是正。アメリカの貿易赤字を削減したのです。
それ以来、円高になり、日本は「円高不況」に見舞われました。
その時は、内需を拡大していかなければならないのだということになりました。
その延長線上に、バブル経済があり、新自由主義やデフレにつながっていったことは、西田昌司参議院議員が解説しています。
円高により、日本の企業は海外でモノ作るようになりました。
それは、日本が債権国として配当が振り込まれることで、日本としては貧乏にはなっていないけれども、国民の所得にはその利益は還元されず、企業の内部留保にとどまってしまっている、と西田昌司議員は述べています。
それが、長期的な円安傾向によって、モノづくりが日本に戻ってくるなど、製造業が復活してデフレ体質から脱却できるいい機会であるというわけです。
さすれば、今度は一方的な円安にもなりませんから、国力に応じた為替相場として安定してくるというわけです。
こうした、経済の「常識」をひっくり返すいろいろな話が、本書には網羅されています。
ぜひ、ご一読をおすすめします。
以上、[図解]三橋貴明の「日本経済」の真実がよくわかる本(PHP研究所)は、国民が「常識」と思っていたことを覆す経済の真相、でした。
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