『「ケトン体」こそ人類史上、最強の薬である 病気にならない体へ変わる“正しい糖質制限”』は、ケトン体ほど健康の近道と解説しています。糖質制限を段階的に勧めたり、他の療法との併用を提案したり、より実践しやすい解説が書かれています。
著者は、糖尿病妊娠、妊娠糖尿病の患者に対して糖質制限による治療を推進、絶大な効果をあげている宗田哲男さんです。
もともと、北海道大学で地質学を専攻しましたが、帝京大学医学部に入り直して医師になりました。
本書では、さまざまな方法論を集約すると、すなわち『ケトン体』になることこそ健康への一番の近道だった、と述べています。
グルコース(ブドウ糖)がなければ、ケトン体がそれにかわる
『「ケトン体」こそ人類史上、最強の薬である 病気にならない体へ変わる“正しい糖質制限”』は、宗田哲男医師が、カンゼンから上梓した書籍です。
私は、AmazonUnlimitedで読みました。
ケトン体に関する書籍は数多ありますが、本書の特徴は、著者自身が糖尿病経験者でケトン体健康法の実践者であること。
そして、糖質制限を段階的に勧めたり、他の療法との併用を提案したり、より実践しやすい解説がわかりやすく書かれています。
ケトン体とは、脂肪合成や脂肪分解の過程で発生する中間代謝産物です。
これだけでは、その道の専門家でないと、何のことかピンときませんね。
私たちの体の細胞は、解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー回路があることはすでにご紹介しました。
いずれも、ブドウ糖を栄養源にしています。
体がエネルギーを消費し、体内のグルコース(ブドウ糖)が減ってくると、肝臓に蓄えられているグリコーゲン(グルコースが結合した高分子)が、グルコースに分解されて利用されるようになります(糖新生)。
しかし、それは無限ではなく24時間ほどで枯渇してしまうため、その後は筋肉中のたんぱく質や脂肪細胞に蓄えられている脂肪酸が、エネルギーとして使われます。
ただし、中性脂肪はそのままだとエネルギー源として利用できないため、肝臓でアセチルCoAという物質にまで分解されます。
そのアセチルCoAから作られるのがケトン体なのです。
ケトン体は血液の流れに乗り、エネルギーを作り出すための材料として使われます。
要するに、グルコース(ブドウ糖)がなければ、ケトン体がそれにかわるということです。
ケトン体は糖尿病やダイエット対策になる
宗田哲男さんは、産婦人科医。
赤ちゃんに、血中のケトン体濃度が高いことを発見しました。
人間は本来、ケトン体の代謝をエネルギー源として生きてきたと考えます。
宗田哲男さんは、インスリンを嫁姑の「姑」、体内のブドウ糖を「手元にある現金」、脂肪酸を「貯金」に例えて説明しています。
インスリンは膵臓で作られ、血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節します。
つまり、血中のブドウ糖を調節するホルモンです。
このようにインスリンは、人類の長い歴史の中で、飢餓状態から身を守るために働いてきました。糖質が体内に入ってこない状況では、脂肪をエネルギー源とするケトン体が出てくるので、自然と脂肪燃焼型の体になっていくのです。
しかし、最近は肉や魚など、タンパク質も脂肪も豊富な食材が揃っており、脂肪燃焼も無問題です。
一方、糖質はご飯、ラーメン、スイーツなど増えてきて、インスリンの過剰分泌状態になっている。
それが、糖尿病につながっていると指摘します。
本書では、ケトン体をエネルギーとすることのメリットを、以下のように枚挙しています。
- 生体内で必要に応じて合成できる
- 薬剤より簡単に脳血液関門を通過する 副作用、毒性がない
- 抗炎症作用、抗老化作用がある
- 抗糖化作用、抗酸化作用がある
- 抗がん化作用がある
- 心筋保護作用がある
- 脳神経保護、精神安定化作用など多彩な効果
脂質は糖質に比べて、効率よくエネルギーを蓄えることができ、1グラムあたりに蓄えられるエネルギーは、脂質が糖質の約2倍。さらに、脂質は体脂肪として、十数キロ以上、大量に体に蓄えられます。
たくさん溜め込んだ脂質が、人間本来のエネルギー源なのですが、現代人は糖質を多くとるあまり、脂質を使わず、糖質ばかりエネルギー源として使うようになっています。すると体の脂肪が燃えにくくなり、とり過ぎた糖質は脂肪に変わって いくという、肥満への負のサイクルができあがってしまうのです。
糖質を制限すれば、メインのエネルギー源は脂質になります。脂質を燃やすケトン体が出てくる体になれば、食事中も脂 肪が分解されエネルギーをどんどん消費していってくれます。糖質を制限すると、人間は自分の体内でブドウ糖を作るよう になります。 この働きを「糖新生」といいます。外から糖質が入ってこないため、多くのエネルギーを必要とする糖新生が 肝臓によって四六時 中行われることになり、たくさん食べても、エネルギーとして大量消費されるようになるのです。糖質 をとらなければ血糖値が上がらず、インスリンも分泌されません。脂肪を余計に溜め込むこともなく、ぽっちゃり体型はみ るみるスリムに。太りにくくやせやすい体質へと変貌し、長期的なダイエット効果が得られます。
いいこと尽くめですね。
ケトン体は段階的に行う
本書では、ケトン体質になるために、糖質制限の食事を唱えています。
つまり、グルコースがなければケトン体が生産されるわけですから、入り口(食事)で糖質を入れないようにするわけです。
糖質制限の食事は、具体的に3種類です。
無理のない範囲で、いずれかを実践することを勧めています。
- プチ糖質制限
- スタンダード糖質制限
- スーパー糖質制限
1日のうち1食だけを糖質制限する。米やイモ類を避け、タンパク質を積極的に摂る。
1日のうち2食で主食のカットを行う。
3食すべてにおいて糖質カット。1日の糖質摂取量を10~40gに抑え、ケトン体の生産を目指す。
あくまでも糖質カットであり、油を使用した料理やステーキなども存分に楽しんで問題ないそうです。
その際の約束事は。
- 主食(ご飯、パン、麺類)は食べない
- 主食の分のカロリーを、肉・卵・魚・チーズなどのタンパク質でしっかり摂る
- 野菜・きのこ・海藻を摂る
- アルコールは、焼酎などの蒸留酒やワインならOK
- お腹が空かなければ、無理に3食食べる必要はない
糖尿病対策というと、総カロリーを減らすことを求められますが、ケトン食は、あくまでも減らすのは糖質のみということです。
ビタミンC点滴療法との併用に適応
いい事ずくめのケトン体ですが、ではケトン体さえ産生すれば、病気になっても治療の必要はないのでしょうか。
そんなことは書かれていません。
むしろ、様々な試みと組み合わせることで、その効果が倍加するといいます。
私が興味深いと思ったのは、ビタミンC点滴療法との組み合わせです。
ビタミンC点滴療法というのは、大量のビタミンCを体内(血管)に送り込むことで、ビタミンCががん細胞に入って過酸化水素水となりがん細胞を破壊するという仕組みです。
ブドウ糖とビタミンCは構造が似ているため、間違って取り込みやすいのですが、ビタミンCは4時間ぐらいで体外に出てしまう点が難点といわれています。
ここでケトン食を採用して糖質を押さえれば、より多くのビタミンCを取り込むわけです。
ビタミンC点滴療法は、比較的効果が見込めると言われている悪性リンパ腫や卵巣がん、睾丸がんなどでも、それ単独で完治するというエビデンスはありません。
そこで、そのへんに転がっている抗がん健康食品と同じ扱いをする人も少なくありません。
ただし、私は単純に否定もしません。
それだけで治すというより、抗がん剤治療と併用することで、体へのダメージを減らし、もしくは上掲のようなビタミンCのがん細胞と戦う機能がはたらくなどして、厳しい抗がん剤治療を乗り切ることはありえるからです。
私の母は、なんと、80歳で悪性リンパ腫が2度目の発症をしたのに、ビタミンC点滴との併用で、標準の抗がん剤治療を乗り切ってしまいました。
その5年前は、もっと若かったのに、標準プロトコルの治療に耐えられなかったのに……です。
ケトン体によって、ビタミンCの取り込みが増えれば、さらに生還者は増えるかもしれませんね。
なお、ケトン体については、『2週間で効果がでる! ケトン食事法』(白澤卓二、かんき出版)のレビュー記事もご覧いただけると幸甚です。
以上、『「ケトン体」こそ人類史上、最強の薬である 病気にならない体へ変わる“正しい糖質制限”』は、ケトン体ほど健康の近道と解説、でした。
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