『9日間書き込み式妄想→現実化notebook』(かずみん著、Clover出版)は、自分の妄想(願い)を自由に書き込むことで願いが叶うとする書籍です。いわゆる「引き寄せの法則」に基づいた、その具体的な手順が9日間にわたって提示されています。
心の中の思いを文字化する助けをしてくれる書籍
『9日間書き込み式妄想→現実化notebook』(かずみん著、Clover出版)は、心の中の思いを書き出そう、
それを願い実現しよう、という趣旨の書籍です。
本書の思想的支柱となっているのは、いわゆる『引き寄せの法則』です。
運が良くなるとか、物事がうまくいくといった分野の言説では必ず使われる根拠です。
マイケル・J・ロオジエという人が唱えている、「注意と意識とエネルギーを向けるものは、良いことであれ、悪いことであれ、現実のものとなって現れる」というアレです。
つまり、願っていたら実現する、という話ですね。
本書は、9日間にわたって、妄想して願うことでそれがエネルギーになって叶うとしています。
その9日間の手順を精緻にまとめています。
妄想を書くと言っても、何を書いていいかわからないですよね。
そこで、書けるように導いてくれる設問が本書には記載されているのです。
本書の設問をたどってしっかり書いていくことで、自分の心の中にある顕在・潜在的事柄を枚挙できることでしょう。
本書は、2022年4月18日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
私も、それで拝読しました。
『引き寄せの法則』を「科学的」といえるのか
これを書いてしまうと身もふたもないかもしれませんが、引き寄せの法則は科学ではありません。
本当に科学的に明らかになっていたら、学界はとっくに大騒ぎしているでしょう。
科学的というのなら、願った人と願わない人でグループを作り、前向きコホート調査を行い、客観的に実現した(叶った)ものを明らかにした上で、その報告を学界の雑誌に投稿して、専門家の厳しい査読にサラサれなければなりません。
『引き寄せの法則』が、少なくともまともな学会や学術雑誌に発表された例は皆無でしょう。
もっともわかりやすいトリックあかしをしますが、『引き寄せの法則』を喧伝する書籍は、その成功例は出てきても、願っても引き寄せられなかった例は絶対に出てきません。
つまり、抗がん健康食品の体験談と同じです。
これをやってがんが治ったという主観は宣伝しても、本当にそうかという客観的(医学的)な検証はないし、ましてや治らなかったデータは絶対にとりません。
本書も例外ではありません。
願えば絶対に叶う、とは限らない
本書の前半の部分(29ページ)にこう書かれています。
叶うか叶わないか、
できるかできないかは知らん
「叶うか叶わないかなんてわからないけど、私はこの願いを大切にしたい」という気持ちで、大きな願いも妥協もせずに書き出してください。と書かれています。
このことがすべてではないでしょうか。
要するに、願えば絶対に叶う、とは限らない。
ただし、願わなければ叶いようがない、ということです。
だって、自分が何を願っているかも定かではありませんからね。
だから、妄想したものを書きましょうということです。
まあ、後者は、願ってなかったけれどいいことがあった、という場合もあるんですけどね。
野村克也さんが、よくメディアに仰ってましたよね。
勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし
自分に必然的な行為がなくても、偶然勝てることもあるという意味です。
一方で、勝利の方程式の采配でも負けることはある。
つまり、人生は偶然と必然が重層的に織りなす長い系列なのです。
すべてを計画して成就させることは不可能です。
たとえば、本書にあるような「引き寄せ」のエネルギーなるものを起こすべく必死に妄想しても、引き寄せる前に交通事故で亡くなってしまうかもしれないんです。
それが人生であり、世の中というものです。
もしかしたら、本書の著者は、本書の内容からして、いや、交通事故も「交通事故にあいたくない」という思いを持っていたから交通事故を引き寄せたのだ、と言い張るかもしれません。
だとしたら、交通事故の犠牲者はみな、悪い妄想をしていたからだということになります。
犠牲者の自業自得だということかな。
電車や飛行機、バスなど公共交通機関は、一度事故が起これば多数の犠牲者が出るわけですが、乗客たちの脳内は揃って事故引き寄せの妄想をしていたのでしょうか。
それはさすがに強引すぎる想定でしょう。
この世の中、空気を吸っても水を飲んでもがんのきっかけになるかもしれないように、想定し得ないリスクに満ちています。
がんになるかならないかも、結局は運である、というのは現役の医師や医学論文の報告にもあるのです。
つまり、それらにひっかかるのもひっかからないのも、現時点で幸運もしくは不運という表現しかできない「偶然」を絡ませないと説明がつかないのです。
誤解のないように添えますが、「引き寄せの法則」では絶対に成功できない、インチキだ、といっているわけではありません。
私は妄想だろうが自己暗示だろうが、「波動」だろうが、自分の心や行動を目的に向かって整理するための営みや考え方はあって良いと思います。
自分の心を文字化するという本書の眼目において、むしろ本書は積極的に評価しています。
だからこそ、こうしてご紹介記事も書きました。
ただ、すべてを妄想だの「引き寄せの法則」のエネルギーだので説明するのは、やはり強引すぎるということを言いたいのです。
「引き寄せの法則」で成功したかのように見える人は、本書にあるように、何を自分は願っているかを明確にできたからこそ結果が出たのだと思います。
つまり、「引き寄せの法則」の正体は、妄想することによる目的意識とロードマップの確立、および自己暗示ですね。簡単に述べれば。
何にせよ自己実現できたのならよいことであるし、ですから「引き寄せの法則」に熱中することは一概に悪いこととは言えません。
ただし、哲学で言う主観的観念論に過ぎないものを、あたかも科学的であるかのように喧伝することは、カルト宗教やインチキ健康食品といったトラブルの温床である疑似科学であり、私はそこに懸念を示しておきたいのです。
以上、『9日間書き込み式妄想→現実化notebook』(かずみん著、Clover出版)は、自分の妄想(願い)を自由に書き込み願いが叶うという、でした。
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