僕の妻は発達障害(ナナトエリ/亀山聡、新潮社)は、発達障害(ほぼADHD)の妻と暮らす漫画家アシスタントの夫の毎日を描くものです。ADHDは、注意力や集中力などが続かずに、極端にそわそわして落ち着きがない特徴がある発達障害です。
『僕の妻は発達障害』は、ナナトエリ/亀山聡という夫婦名義の漫画家が、新潮社から上梓したものです。
といっても、内容は作者夫妻のノンフィクションではなく、フィクションだそうです。
北山悟(30)という漫画家のアシスタントが、知花(32)と結婚したものの、彼女は発達障害。
ふたりの生活はいろいろな問題があるものの、折り合いをつけながら、毎日を過ごしているストーリーです。
医療監修として、四宮滋子さん(しのみやクリニック)のクレジットも入っています。
漫画家アシスタントの夫と発達障害の妻
北山悟は漫画家のアシスタント。
2歳年上の知花と結婚したものの、彼女は発達障害です。
彼女のことを理解しきれない自分を悩み、試行錯誤しながら夫婦生活を送っています。
発達障害の中で、具体的に何に該当するかは書かれていませんが、ほぼADHDに、若干アスペルガー症候群の特徴もあります。
たとえば作中、ルーチンワークが得意という件がありますが、それはアスペルガーの典型的な特徴です。
ただし、ADHDはどちらかというとその真逆なので、現実には知花のような人格は存在しないと思います。
知花は、アスペルガーなりADHDなり、きちんとリアルな障害でキャラクターを設定してほしかったように思います。
それと、失礼ながら、全体を通してコマ割りがあまり読みやすくない憾みを感じます。
もっとわかりやすくできるんじゃないかな、という気がします。
この際だから知ってほしい「障害者手帳」
知花は、聴覚過敏にチック症、さらに手帳持ち。
たぶん精神障害者保健福祉手帳だと思いますが、漫画では美術館の入場料が、介助者とともに免除されていました。
精神障害者保健福祉手帳は、次の病気や障碍のある人が対象となります。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
障害者手帳というのは、3冊あります。
身体障害者手帳、療育手帳(知的障害者用手帳)、そして精神障害者保健福祉手帳です。
それぞれ、何級、何度と、障害の度合いによって認定される段階が違います。
障碍者は、この手帳を1冊、もしくは複数持っています。
厳密に言うと、医学的な診断と、手帳の認定はイコールではありません。
つまり、医学的にどう診断されたか、ということとは別に、手帳の認定は行われます。
手帳を持つことによる、社会的サービスは、度数・級数によって異なります。
たとえば、厚生労働省のサイトには、精神障害者保健福祉手帳でウケられるサービスとして、「公共施設の入場料等の割引」とあります。
漫画では全額免除だったようですが、本当は「割引」なんですね。
多いところでは「半額」です。
昔、元フジテレビのアナウンサーで、選挙に出ようとした人が、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ! 無理だと泣くならそのまま殺せ!」などとブログに書き込み叩かれましたが、その人が、障碍者の「優遇」もケチを付けていたそうですね。
このまとめによると、
- 障害者は映画半額、公共交通機関利用料半額、タクシー初乗り無料、ディズニー横入りし放題(ガセ)
- 1級障がい者は医療費をすべて無料で受けられる(ガセ)
と述べていたそうですが、まあその方に限らず、ネットではその程度の無知な書き込みに満ちていますので、いい機会だから一言しておきますね。
まず、障害者手帳というのは、本人やその家族(配偶者や親権者など)が、申請しなければ永遠にもらえません。
中には、「手帳のことは知らなかった」「手帳はいらない」という人だっているのです。
それから、繰り返しになりますが、医学的診断とは別ですから、障碍があっても、どういう認定になるかはわかりません。
そもそも医学的診断にしたって、どこから線引するかなんて曖昧ですからね。
心肺停止した私の妻は、後遺症で肺活量が健常者より少ないのですが、ギリギリ正常の範囲ということで、障碍者として扱ってもらえません。
でも、事故が原因で肺活量が少ないのは真実なのです。
何を言いたいかというと、そもそも「障碍者は……」などと一括りにして全称命題で語れるような話ではない、ということです。
次に、まとめでも「ガセ」と書かれているように、「優遇」とされている内容は真実ではありません。
さきほど、「公共施設の入場料等の割引」とご紹介しましたが、これ別に「優遇」ではないんですよ。
障碍者は介助者を必要とし、その人も同じだけの交通費や入場料がかかるので、半額にしても結局は「1人分」払っているのです。
介助者も、その美術館目当てだったら、まあ「得した」と思う人がいないわけではないでしょう。
しかし、そんなに都合よく趣味とスケジュールの合う人が介助してくれるわけではありません。
実際には、介護会社のヘルパーが業務として介助することが多いのです。
あと、ひとつひとつ答えておきます。
障害者は映画半額?
障害者は映画半額、と決まっているわけではありません。
たとえば神奈川県川崎のチネチッタ。
一般1800円が障害者手帳の本人と同伴者1名がそれぞれ1000円。
3D作品は一般2100円が1300円。
T・ジョイPRINCE品川(旧称・品川プリンスシネマ)は、本人と同伴者1名が1800円が1000円。
3D作品は追加料金がかかるが、これは一律400円(3Dメガネ持参の場合300円)。
公共交通機関利用料半額?
結論から書くと、公共交通機関利用料半額というのも、ほんの一部だけの話です。
障碍者が公共交通機関で移動する場合、各社は身体障害者・知的障害者割引の制度を設けています。
たとえば、私鉄バスですが、本人、付添者とも5割引サービスはあるものの、条件があります。
- 身体障害者手帳の交付を受けている方
- 療育手帳(愛の手帳)の交付を受けている方
- 児童養護施設や知的障がい児施設などを利用されている方
- 上記の方に同伴する介護・付添の方で、当社係員が介護または付添の必要性を認めた場合
- 東京都発行の精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方で、東京都内の路線バスをご利用の場合(高速
- バス、空港バス、定期旅客運賃を除きます。)
(京浜急行バス公式サイトより)
では、電車はどうか。
都営交通については、介助者が半額にはなりませんが、手帳で申請することで本人無料。
問題は私鉄です。
身体障害者
身体障害者手帳の交付を受けている第一種・第二種身体障害者の方
知的障害者
療育手帳の交付を受けている第一種・第二種知的障害者の方
その介護の方
上記の身体障害者・知的障害者の方、お一人さまにつき、割引対象の介護の方はお一人さまです。当社係員が、介護能力があると認められ、乗車券等の種類・区間が同一で同時に購入・乗車する場合に限ります。
障碍者に第一種と第二種があり、第一種のみ割引があります。
つまり、中等、もしくは重度でないと割引はありませんが、そういう方はそもそも移動も大変だし、介護ヘルパーがつかまらないと外出は難しいのです。
タクシー初乗り無料?
身体障害者手帳、愛の手帳、精神障害者保険福祉手帳所持者は、手帳による本人確認で運賃の1割が割引。
ディズニー横入りし放題?
これは論外。
というか、たんなるガセというより悪意を感じますね。
1級障碍者は医療費をすべて無料で受けられる?
自治体によって違うので、「すべて」とした点でガセですね。
たとえば東京都大田区の場合、心身障害者の医療費助成自体はあります。
65歳未満で、身体障害者手帳1・2級(内部障害にあっては3級、また内部障害が4級であっても障害の重複により手帳3級と認定された人も含む)または愛の手帳1・2度の人。さらに国民健康保険および社会保険の加入者は医療費の助成を受けられる(ただし世帯所得額などにより助成の制限あり)
保険証を使って診療を受けた費用が助成されるが、住民税が課税されている人は1割負担および入院時の食事代を自己負担。非課税の人は入院時の食事代のみ自己負担。
このほか、特定の疾病を対象にした難病医療費の助成、精神障害の人が精神科等に通院している場合や、身体障害者の職業能力を増進させたり日常生活の便宜をはかるための医療など自立支援医療にかかる負担の助成などがある。
いずれにしても、すべての1級障碍者(そもそも何の障害1級なのかが明らかにされていないが)の医療費自己負担がゼロであるということではありません。
ADHDは不注意、多動性、衝動性などを特徴とする発達障害
『僕の妻は発達障害』というタイトルですが、発達障害というのは障碍の総称です。
具体的には、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。
さらに、自閉症スペクトラム障害(ASD)とADHD(注意欠如・多動性障害)には、知的障害や高次脳機能障害を伴う場合があります。
本書の知花はADHDと一部アスペルガーの特徴を設定しています。
ADHDについては、以前もご紹介しました。
注意欠陥障害(Attentin Deficit Disorder with and without Hyperactivity=ADHD)は、不注意、多動性、衝動性などを特徴とする発達障害です。
注意力や集中力などが続かずに、極端にそわそわして落ち着きがない特徴があります。
落ち着きがなかったり、行動が度を越していたり、場の空気を読めなかったり、約束を忘れたりするために、人間関係を築けないことが少なくありません。
本書のような障碍者漫画を読まれたら、そうした特徴を知ることで、障碍者への理解が深まるのではないかと思います。
本書は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
以上、僕の妻は発達障害(ナナトエリ/亀山聡、新潮社)は、発達障害(ADHD)の妻と暮らす漫画家アシスタントの夫の毎日を漫画で描く、でした。
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