「一人で生きる」が当たり前になる社会(荒川和久/中野信子、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は“ソロ”の生き方を深掘りしています。2040年には人口の5割が独身、64歳までの既婚者は3割と、ソロ社会化していくというのです。
『「一人で生きる」が当たり前になる社会』は、独身研究家の荒川和久さんと、脳科学者の中野信子さんが、対談形式で「一人で生きる」ことについて掘り下げた書籍で、ディスカヴァー・トゥエンティワンから上梓しています。
Amazon販売ページによると、2040年には、人口の半分が独身者に……『「一人で生きる」が当たり前になる社会』をどう生きるか、というキャッチコピーがついています。
日本は、2040年には人口の5割が独身の国になり、64歳までの既婚者は3割になる、これからの日本は、どんどんソロ社会化していく、というのです。
そこで、これまでは「職場」や「家族」などに「所属するコミュニティ」から、これからは個人個人が結婚とかソロとかの状態にかからわず、個人として接続せざるを得ない「接続するコミュニティ」へ進むという提言を行っています。
そして、ソロの幸せ、既婚者の幸せ、恋愛強者と恋愛弱者の生存戦略などが書かれています。
本書は、Kindle版に基づいてご紹介しています。
2022年9月4日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
独身であることや孤独であることが「悪」ではない
あなたは、気に食わない人に対して、こんな罵倒をしたことはありませんか。
「あんな奴、どうせ友達なんかいないんだ」
友達がいない=悪、という前提で、あんな奴は「悪」だと言っているわけです。
非礼・非常識な行為の是非は事と次第によりますが、いずれにしても、「友達がいない」からどうしたというのでしょうか。
中崎タツヤさんという漫画家は、そういう人を「友情コジキ」と、漫画の中で書いてましたね。
表現としては、差し障りがあるかもしれませんが、言い得て妙です。
友達が「多い」と称する人が立派な人なのでしょうか。
「友達」なんて、そもそも基準が客観的ではないのですがね。
たとえば、「あいつはいいやつだ」と言われている人がいたとして、そんなもの、しょせん「どうでもいいやつだ」という意味か、「自分にとって都合のいいやつだ」というどちらかでしょう。
自分の自分に対する評価、自分と他者の相互評価なんて、そんなもんです。
そんなものをキにして、くだらないと思いませんか。
私が思うに、日本の社会の「人の付き合い方」には、鬱陶しい文化があるということだと思います。
- 明文化されていない「空気を読む」礼儀
- 先輩後輩、目上目下という縦の人間関係
- 同世代ではくだらない根拠によるマウント取り合戦
つまり、いつも誰かに気を使い、相手との関係性を前提に話をシていかなければならない。
疲れますよね。
『Y氏の隣人』という漫画がウケたのも、主人公が級友や同僚とうまくやっていけない、という前提のストーリーだったからだと思います。
現代人は、それほど対人関係に疲弊しているのです。
本書『「一人で生きる」が当たり前になる社会』の荒川和久さんは、東洋経済オンラインで、こう寄稿しています。
コロナ禍での失業などにより、社会的孤立に追いやられ、誰とも接せず、誰にも頼ることができなくなってしまった人たちに救いの手を差し伸べることは大事ですが、こういう話題になるたびに「孤独は健康に悪影響」「孤独は死に至る病」などと、いたずらにその恐怖をあおる「孤独は悪」論が声量を増すことは逆に由々しき問題だと考えます。
「孤独というものを善悪でわけること自体的外れです」というのが、独身研究家・荒川和久さんの持論です。
独身研究家という肩書が素晴らしいですね。
こちらがOGPです。
詳細はクリックしてお読みください。
コラムの肝の部分を引用します。
むしろ、「自分の外側に誰かがいさえすれば孤独ではない」という考え方の人こそ、孤独に苦しむと指摘しています。
結婚生活にしても同様で、結婚すること=善、独身であること=悪、という単純な判断を批判しています。
ソロ化社会とソロ人間をどう見るか
本書はまず、前掲のように「ソロ社会」化すると述べています。
何しろ、日本は高齢者よりも独身者が多い、独身国家になるというのです。
そして、男性は何度も結婚する人と1度も結婚できない人の格差がはっきりして、時間差一夫多妻制になっているといいます。
そして、300万人の男性は、どう頑張っても結婚できない「あぶれ」になっているといいます。
しかも、日本は離婚率が高く、かつ、「一人でいたい」と考えるソロ度の高い人は、全体の40%にものぼるそうです。
独身だと、「孤独死する」と言われることがありますが、実際に孤独死しているのは「元既婚者」が多いといういます。
つまり、「結婚しないと孤独死する」のではなく、独身・既婚に関係なく孤独死のリスクは有るといいます。
そりゃそうです。
何をもって「孤独死」というかにもよりますが、単身赴任もあるし、家庭内別居で、2階で亡くなっていたのに、階下にいたからずっと気づかなかった、なんてことだってあるんですよ。
いずれにしても、孤独死を恐れて結婚する、ということは第一義的に考えなくていいということです。
また、本書では、ソロ男とソロ女には共通項があるといいます。
彼らは、既婚男女に比べると、一人でいることが好きであるといいます。
しかも、ソロ男よりもソロ女のほうが、一人好き率が高いそうです。
そして、ソロ女は既婚女よりも、お金に対する価値が高いそうです。
ま、それはそうでしょうね。
ソロには、なるべくしてなっているわけです。
男性と女性では異性を見るとき活性される脳の部位が違う
男性が女性を選ぶときの脳は、視覚関連領域を使って、率直に言えば、顔、胸、尻などを見ます。
一方、女性が男性を選ぶときに活性化する脳は、前帯状皮質という部位だそうです。
そこは、矛盾を検出する前頭葉なのです。
言動の中身を精査したり、子育てをしてくれるかといった生活態度の値踏みをしたりしているそうです。
いきおい、男性にとって「愛は見た目」、女性にとって「愛はお金」ということになるのかもしれません。
ソロ男、ソロ女は、エモ(ーショナル)消費に幸せを感じるそうです。
エモ消費というのは、お金だけでなく、時間も使って自らの幸せを手に入れることと本書では定義しています。
家庭を持たない「ソロ」は、家族がいないために社会帰属欲求が満たされていません。
そこで、ゲームやアイドルに走って、社会帰属意識を満たそうとしているといいます。
アイドルは疑似子育て、ゲームは疑似出世として、自分は社会の役に立っているのだ、という達成感を手に入れようとしているそうです。
恋愛は資本主義である
本書は、恋愛強者3割の法則と名付け、恋愛が得意な人は全体の3割であるとしています。
恋愛している未婚男女は全体の3割。
それが、1人で何人もの女性と付き合っているから、あぶれる男性が出てくるわけです。
これは、他の識者や書物でもよくいわれていることですよね。
さすれば、自分もその「3割」になってみたいと思うのではないでしょうか。
私は思いますよ(笑)
ただし、その条件は高収入ということです。
あとは、能動的な人が勝つ、受け身ではだめとのことですが、これもなんとなくわかりますね。
人生、ヤルかヤラないかです。
やったからと言って100%得られるとは限りませんが、ヤらなければ何も変わりません。
ソロであってもなくてもどう生きるかのコミュニティを考える
といいつつも、本書は、結婚しろとかするなとか、子供を生み育てる人がいなくなるとか、そう言っているわけではありません。
どういう生き方にせよ、他人とどう関わるのかのコミュニティを考えよ、と本書は提唱。
従来のような、家族、職場、地域という大勢の人が所属するコミュニテイで協力しあうことだけでなく、個人が互いに接続し合うことで、結果としてコミュニティの役割を果たす「接続するコミュニティ」の時代であると説いています。
ですから、書かずもがなかもしれませんが、結婚については、いくら独身研究家の荒川和久さんの著書だからといって、「お一人様の時代」を是と強調しているわけではありません。
余談ですが、生涯未婚率、という言葉をご存知ですか。
50歳まで未婚だと、「生涯未婚」とカウントされてしまうのです。
でももしかしたら、60歳で結婚して、85歳で銀婚式するかもしれません。
51歳で結婚して、100歳で金婚式だってあるかもしれませんよ。
そういう結婚があっても、いいのではないでしょうか。
浅野ゆう子さんは57歳で結婚しました。
現在「トレンド」の香川照之さんに結婚を邪魔され、20年の「永すぎた春」にさせられた龍虎勢朋さんは、結局浜木綿子さんを諦めましたが、51歳で結婚してお子さん2人に恵まれました。
ですから、生涯未婚率などという、人生は50年で終わりのような、人を侮辱する調査を、国勢調査をもとに厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が算出することがおかしい。
どうしても数字を出したければ、「50歳時点での未婚率」と、「まんま」の調査名にしたらいいじゃないですか。
なんで「生涯」なんでしょう。
人の価値観、人生観ですから、オール・オア・ナッシングで、「さあ、どっち?」と答えを無理無理に出すものではなく、本人の人生設計や縁で、どちらもありの世の中であるべきだと思います。
結婚は、してもしなくてもいいのです。
したければ、チャンスンがあれば、大いにしたらいいと思います。
いくら強がっても、独身では得られないものもあります。
独身であれ、もしくはその逆を啓蒙する書ではないので、それはお間違えのなきように。
以上、「一人で生きる」が当たり前になる社会(荒川和久/中野信子、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は“ソロ”の生き方を深掘りする、でした。
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