ダウン症児の弟を、当時大学生の兄が絞殺した事件(2000年、札幌)を『ダウン症児愛殺事件』(かわしま梨花、ユサブル)が漫画化

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ダウン症児の弟を、当時大学生の兄が絞殺した事件(2000年、札幌)を『ダウン症児愛殺事件』(かわしま梨花、ユサブル)が漫画化

ダウン症児の弟を、当時大学生の兄が絞殺した事件(2000年、札幌)を『ダウン症児愛殺事件』(かわしま梨花、ユサブル)が漫画化しました。うつ病からの犯行とされましたが、「子供は天使」などという綺麗事で自分を追い詰めた結果かもしれません。

『ダウン症児愛殺事件』は、かわしま梨花さんが漫画化してユサブルから出版されました。

ダウン症児の三男を、当時大学3年の長男が絞殺した札幌の事件です。(2000年)

ダウン症児を家族に持つ人の傷害・殺害事件は、しばしばメディアを賑わせます。

では、ダウン症だから虐待されていたのかというとそうではなく、むしろ熱心に面倒を見ていた身内が、「親なき後」を儚んだり、介護の疲労で精神的に追い詰められたりするケースが多いようです。

本書がとりあげている事件も、家族の中でももっともかわいがっていた長兄が、ダウン症の三男に手をかけました。

動機には明らかでない面もありますが、それにしても「愛殺」という表現は行為を美化しているような気がします。

それについては、ネットでも話題になったので、後ほどご紹介します。

本記事は、Kindle版をご紹介します。

本作は、単独で掲載されている単冊版のほか、ザ・女の事件【合冊版】Vol.3-3 (スキャンダラス・レディース・シリーズ) Kindle版(ユサブル)にも収録されています。

テーマが『悲しみの身内殺人』です。

かわしま梨花さん、小牧成さん、なせもえみさん、桐野さおりさんらが描いた「身内の事件」を収載しています。

「合冊版」というのは、それぞれ単冊で書籍化されている5作品をまとめているのです。

  • 愛する苦悩の果てに難病の息子を手にかけた母……かわしま梨花
  • ダウン症児愛殺事件……かわしま梨花
  • 2児マンション投げ落とし母子無理心中事件……小牧成
  • 姉妹間愛増メッタ刺し惨殺事件……なせもえみ
  • バブル崩壊夫婦暗殺未遂事件……桐野さおり

『本書収録の作品は、すべて実際にあった事件を元に構成したフィクションです』と断り書きがあります。

表紙には、『母が子を、姉が妹を、夫が妻を、ああ骨肉の愛憎!!』と書かれています。

「骨肉」という表現を使うと、たとえば身内の遺産争いなどを連想しますが、そのような話ではありません。

母が子を、姉が妹を、兄が弟を、夫が妻を……血を分け、ともに暮らし、運命を共有する…身内間の刑事事件です。

例によって、ひとつひとつの作品の単冊版は追加料金、つまり書籍の代金がかかりますが、合冊版はAmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

AmazonUnlimited加入者なら、他の作品も読めて、追加料金もない合冊版で読まれることをおすすめします。

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なんで障害児で良かったとまで言う必要があるのか

本作では、長男は上野篤史、ダウン症の弟は翼という名の設定です。

三男の出産は、予定よりも2ヶ月早い早産。

長男がNICUで対面した弟は、障害を持って生まれたと説明を受けました。

取り乱した母親は、用意したベビーベッドを壊そうとします。

「捨てるのよ。たぶん、もう、使わないから」

しかし、弟は生き延びます。

ただ、やはり成長はゆっくりで、たとえば「ママ」と言えないことに母親が苛立つことも。

「世の中じゃ、みんな私を笑ってるわ。『不幸でお気の毒でかわいそう』。『だから我が子を虐待するのね』。母親が障害児を殺しても情状酌量の余地があるんですって!!障害児は手がかかるから邪魔だから仕方ないんですって!!うんざりなのよ、もう。なんであんたはまだ生きてるのよ」

そんなときに、かばうのは長男です。

「翼に障碍があるのは誰のせいでもないよ。染色体の異常は偶然の確率で、誰にでも起こることなんだよ

「わかってるわよ。だけど、どうして、なぜ、それが私の子供なのよ」

不運・不幸・意に沿わない出来事などがあると、必ず誰もが思うことですね。

「なぜ自分なんだ」と。

仏教の世界では、「因(必然)」と「縁(偶然)」によって結果が生じる。

「因」は、過去世(前世)を含めた自分の生き様の中で種を巻いたんだそうです。

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つまり、自業自得、自分に原因があるんだと。

では、いつどんな種をまいたから自分にそんな事が起こるのか、……までは仏教は教えてくれません。

ますます悩みは深くなるばかりです。

話は戻ると、お父さんは東京本社に栄転で、単身赴任となります。

ネット掲示板でも書かれていましたが、障害のあるお子さんのいる家庭で、単身赴任をさせるというのはいかがなものでしょうか。

いずれにしても、残った家族に負担は増しますが、長男は「僕は逃げない」と、決意を新たにします。

障害児の施設で、長男は外国の人が書いた詩をもらいます。

「あなたたち家族が弟さんの障碍を受け入れるのに、少しは役に立つのかと思って」

長男は内心、「くだらない」としか思えなかったようです。

会議が開かれました。
地球からはるか遠くで “また次の赤ちゃん誕生の時間ですよ”
天においでになる神様に向かって 天使たちは言いました。
“この子は特別な赤ちゃんで たくさんの愛情が必要でしょう。
この子の成長は とてもゆっくりに見えるかもしれません。
もしかして 一人前になれないかもしれません。
だから この子は下界で出会う人々に とくに気をつけてもらわなければならないのです。
もしかして この子の思うことは なかなか分かってもらえないかもしれません。
何をやっても うまくいかないかもしれません。
ですから私たちは この子がどこに生まれるか 注意深く選ばなければならないのです。
この子の生涯が しあわせなものとなるように
どうぞ神様 この子のためにすばらしい両親をさがしてあげてください。
神様のために特別な任務をひきうけてくれるような両親を。
その二人は すぐには気がつかないかもしれません。
彼ら二人が自分たちに求められている特別な役割を。
けれども 天から授けられたこの子によって
ますます強い信仰心と豊かな愛をいだくようになることでしょう。
やがて二人は 自分たちに与えられた特別の
神の思召しをさとるようになるでしょう。
神からおくられたこの子を育てることによって。
柔和でおだやかなこのとうとい授かりものこそ
天から授かった特別な子どもなのです。
※「天国の特別な子供(作◆エドナ・マシミラ/訳◆大江裕子)」より

母親は、この詩の「神様のために特別な任務をひきうけてくれるような両親」というところに感じるところがあったようです。

一家は、三男の訓練施設や特別支援学校がある町に転居しました。

長男ほど三男に思い入れのない次男は、「なんで僕がサッカーやめなきゃなんないの。やっとレギュラーになれたのに」と不満を口にします。

それをなだめるのも長男の役割です。

母親も、障害児の親のサークルに参加するようになりました。

「最近は私……、翼が障がい児でよかったと思うくらいです」と、他の母親に話しています。

うーん、このへんはどうかなと思いますね。

私自身は、子供が中途障害なのでまた事情が違いますが、「よかった」とは思えませんよ。

このことに限らず、よくいうじゃないですか。

「がんになってよかった」とかね。

そんなことはないだろうと思います。

「がんになってわかったこともあるから」という理由ですが、いや、それはアナタ、健康なままだったら経験できたことを失って、それと引き換えですからね。

「健康で良かった」ことの方が何倍もあるだろうと。

障碍についても同じではないでしょうか。

「いや、障害があるのは、ない人に比べたら大変なことは事実ですよ。でもまあ、これも人生ですから」ということでいいんじゃないでしょうか。

私はそう思っています。

なんで障害児で良かったとまで言う必要があるのか。

なんか悲しくなりませんか。

長男は、高校の選択も、自宅に近いというだけで、自分の学力や希望などを度返しして選びます。

次男にも、「男の子のトイレ介助は、大人になったら母親にはできない。少しは翼の介助を覚えようと思わないのか」と問いますが、次男は「その頃には、僕はとっくに家を出ているよ」と答えます。

「出ていくか。それができるやつはいいよな」

内心では、長男も「犠牲」を自覚しているのです。

私はそれで普通だと思います。

自分がどうしてと思うよ、でもやっぱり弟は大事だから、面倒見るよ、ということでいいのだと思います。

それを、天使だの、障害があって良かっただのって、そんなわけないだろうと思います。

そうやって、自分の心を無理に「いい人」にするから、いつか破綻するのです。

これは、事件の遠因となるやりとりになりました。

長男は弟を絞殺しますが、事件については、一部で長男の罪を軽くしようという署名運動をめぐって、別の障碍者の親からは「障害児だったら殺されても仕方ないというのか」と反発がありました。

これも当然ですね。

結局長男は、重度のうつ病だったと診断され、刑事責任は問われませんでした。

私の結論は、繰り返しますが、家族は、神様が自分を選んだだの、子供は天使だのと、綺麗事で自分を追い詰めないことです。

障害のある家族がいると色々大変だ、神にも先祖にもふざけんなと思う、でもまあ、これが現実だからね。向き合って生きて行くしかないさ。

というぐらいの気持ちでいいのではないでしょうか。

命を絶ってしまうという行為は許されるものではありません

この事件は、ウェブ掲示板で話題になりました。

https://saki.5ch.net/test/read.cgi/news/965462106/

コメントを一部ご紹介します。

39 :名無しさん@1周年:2000/08/05(土) 18:53
障害児の子供がいるのに
単身赴任をさせるような人事をしたぱぱの会社はどこですか?

44 :ネロ:2000/08/05(土) 19:05
弟の面倒を見るのも負担に感じてたのかもね。このお兄さん。

64 :名無しさん@1周年:2000/08/05(土) 20:25
何の障害も無いのに疑いだけで腹の中の子供を堕ろしちゃったのと
障害の疑いがあるのに産んで数十年障害児を育て続けるのと
どちらを選ぶか、どちらが悲しいか

65 :名無しさん@1周年:2000/08/05(土) 20:27
高瀬舟だね
でも殺人は殺人として裁かれるべき
殺人以外の代案を思い付かなかった自分の乏しい頭脳と行為を
監獄で何度も何度も省みなくてはいけない

71 :名無しさん@1周年:2000/08/05(土) 20:52
母親が病気がちで弟の世話を兄が見ていた・・・で、ひとりで悩んじゃって、殺してしまった。
気持ちはわかる気がするけど・・・あまりに悲しい事件だ。

75 :名無しさん@1周年:2000/08/05(土) 21:02
障害児を持つ親なら、一度は、「この子を殺して自分も死のう・・・」と思ったことがあるはずです。
福祉制度が以前よりはだいぶ進んできているとはいえ、まだまだ十分ではありません。
親や兄弟が障害児の将来を悲観するのも無理のないことではないでしょうか。
とはいえ、命を絶ってしまうという行為は許されるものではありませんが。

79 :名無しさん@1周年:2000/08/05(土) 21:08
この兄の大学生ってうさんくさいな。
本当はカッとなって殺したんじゃないの?
マスコミに美談として報道されようと意図して供述しているとしか思えん!

みなさんは、いかが思われましたか。

以前、『ダウン症の赤ちゃんだから外聞悪くて嫌と、育児放棄した親に代わって特別養子縁組に迎えるご家庭を特集したニュースが話題』という記事を書きました。

ダウン症の赤ちゃんだから外聞悪くて嫌と、育児放棄した親に代わって特別養子縁組に迎えるご家庭を特集したニュースが話題
ダウン症の赤ちゃんが生まれたからと、育児放棄した親に代わって特別養子縁組に迎えるご家庭を特集したニュースが話題です。産みの親の自己愛は人として許せないし、勿体ないことをしたなあという思いもあります。生みの親に同情するコメントもおかしいですよ

ダウン症の子供が生まれたからと捨ててしまい、特別養子縁組という、実親の追跡を困難にする手続きによって、別の人が育てるというニュースを取り上げたのです。

自分が親という証拠を消して捨てることもそうですが、それを「辛い決断でさぞかし悩んだのでしょう」と同情するコメントも「おかしいだろう」と批判しました。

すると、なぜか炎上しました。

ダウン症児を捨てることを責めてはいけないという意見のようです。

ちょっと、おかしいよね。

私は、コメントに対してはこう回答しました。

>辛い決断
「辛い」ことも含めての出産という覚悟もないのに気やすく子供を作るものではありません。
自分勝手な決断を美化したり正当化したりするのは、歪んだ自己愛です。
子供より自分が大事、という人に子供はきちんと育てられません。

言いがかりのないように改めて論旨を整理しますが、ダウン症児に限らず、子供を養子にすること自体を全否定しているわけではありません。

育てきれずに、追い詰められて親子の無理心中をしてしまう方が、もっと悪いことですから。

この記事で言いたいのは、
特別養子縁組制度を使ってまで子供を捨てているのに、それを美化するな
そして、それを「温かく」論評するアタシって素敵という自己愛はおかしい、と述べているのです。

ダウン症というのは、誰でも産む確率はゼロではないのです。

高齢出産だから、ということではありません。

また、ダウン症でなくても、子育てにはいろいろな不運・不幸がつきものです。

そういうリスクがある、ということを考えずに出産するのは安易だということです。

みなさんも、考えてみてください。

以上、ダウン症児の弟を、当時大学生の兄が絞殺した事件(2000年、札幌)を『ダウン症児愛殺事件』(かわしま梨花、ユサブル)が漫画化、でした。

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