知っておきたい日本の仏教(ムック編集部、ヘリテージ)は、文化庁に登録されている仏教13宗について、開祖からご本尊まで徹底解説しています。葬式や法要、初詣、仏前結婚などで、信仰の有無にかかわらずお世話になっている日本の仏教を本書で知りましょう。
『知っておきたい日本の仏教』は、ムック編集部が、エイ出版社の実用ムックシリーズとして上梓しています。
文化庁に登録されている仏教13宗派、すなわち、新興宗教やカルト教団ではない、伝統ある宗教の開祖、教え、本山、ご本尊の仏像など徹底解説しています。
伝統ある宗教、と書きましたが、文化庁に登録されている仏教13宗派というのは、もともと文化庁がそう類別したわけではなく、江戸時代からそう決められていたものです。
江戸時代は、江戸幕府が寺請制度によってお寺を利用していました。
寺請制度というのは、すべての人々がいずれかのお寺の檀家となることを強制させられ、お寺からは、『寺請証文』という身分証を受け取らなければならない制度があったのです。
それによって、お寺は安定したお布施収入が入る一方で、『宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)』や『檀家台帳』によって、檀家住民の管理を行う義務や責任が生じました。
それらは、住民基本台帳や戸籍原本のようなものだったんでしょうね。
まるでお寺は、今で言う市役所や区役所の出張所のようなものでした。
そして、ご法度であったキリスト教への帰依を監視する役割も果たしていたわけです。
ですから、たんなる信仰の対象ではなく、為政者との関係が明確だったのです。
憲法や民法は変わっても、宗教は江戸時代からそのままなんですね。
ということで、今回は、その日本の仏教について詳しく解説されている『知っておきたい日本の仏教』をご紹介します。
本書は2022年12月1日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
日本の仏教は13宗56派
本書の表紙には、5人の開祖者が描かれています。
曹洞宗・道元、浄土真宗・親鸞、真言宗・空海、天台宗・最澄、浄土宗・法然。
そして、『真言宗と浄土宗で何が違うの?』と記載されています。
さて、その違い、わかりますか。
それは、本書を読むとわかるようになっています。
リードで、文化庁に登録されている仏教13宗派について、開祖からご本尊まで徹底解説、と書きました。
では、その13宗派についてこれから枚挙します。
現在、大きな宗派として存在しているのは、法相宗、華厳宗、律宗、天台宗、真言宗、融通念仏宗、浄土宗、浄土真宗、時宗、臨済宗、曹洞宗、黄檗宗、日蓮宗です。
さて、みなさんのご実家の菩提寺は何宗ですか。
みなさんご自身は、いずれかの檀家、もしくは門徒ですか。
私は、両親とも実家は浄土真宗本願寺派です。
そうです。
同じ宗門でも、いくつかの宗派に分かれているのです。
目次は、『日本仏教、宗派入門、15のキホン』という見出しから始まります。
いの一番は、『なぜ仏教にはたくさんの宗派があるの?』。
お釈迦様は『一切経』といって、たくさんの教えを残したわけですが、お釈迦様が亡くなった後、それが時代を経て様々な解釈や価値によって読み説かれたわけです。
それが、原始仏教⇒大乗仏教の流れです。
お釈迦様は、出家して悟りを開きました。
出家しない者は、出家者への托鉢スポンサーでしかなく、在家では悟りは開けないことになっていました。
しかし、地球上の全員が出家していたら、誰も田畑を耕さなくなりますし、ものも作れなくなります。
つまり、仏教は、「出家者が修行して悟りをひらく」ものから、「在家者でも徳を積むことで救われる」ものに変容したのです。
それが、大乗仏教といわれるものです。
先程枚挙した日本で信仰されている仏教諸派は、大乗仏教です。
「徳を積む」といってもいろいろありますが、たとえば「親孝行をしろ」なんて、日本の家制度に合わせてこじつけた「徳」なんですよ。
だって、お釈迦様は悟りをひらくために修行したわけで、親孝行は「悟り」に関係ないですから。
そもそも、北インドの国の王子様として、王様に大事に育てられたのに、跡取りにならずに出家して王様を泣かせたお釈迦様が、「親孝行」を唱えるというのは、ちょっと苦しいでしょう。
それはともかくとして、先程日本の仏教は13宗と書きましたが、〇〇派ごとに分けると、56宗あります。
- 天台宗(最澄/天台系)……天台宗、天台寺門宗、天台眞盛宗など3派
- 真言宗(空海/真言系)……高野山真言宗、真言宗豊山派など8派
- 律宗(鑑真/奈良仏教系)……律宗1派
- 浄土宗(法然/浄土系)……浄土宗、浄土宗西山禅林寺派、西山浄土宗など4派
- 臨済宗(栄西/禅系)……臨済宗天竜寺派、臨済宗相国寺派、臨済宗建仁寺派など14派
- 曹洞宗(道元/禅系)……曹洞宗1派
- 黄檗宗(隠元/禅系)……黄檗宗1派
- 浄土真宗(親鸞/浄土系)……浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、真宗高田派など10派
- 日蓮宗(日蓮/日連系)……日蓮宗、日蓮正宗、顕本法華宗、本門法華宗など9派
- 時宗(一遍/浄土系)……時宗1派
- 融通念仏宗(良忍/浄土系)……融通念仏宗1派
- 法相宗(道昭/奈良仏教系)……法相宗1派
- 華厳宗(良弁/奈良仏教系)……華厳宗1派
そして、日本の仏教は「祖師仏教」といわれ、開祖とその系統に分けられます。
- 奈良系……奈良の古寺に伝わる宗派
- 天台系……最澄(平安時代)に始まる宗派
- 真言系……空海(平安時代)に始まる宗派
- 浄土系……法然・親鸞(鎌倉時代)に始まる宗派
- 禅系……栄西・道元(鎌倉時代)に始まる宗派
- 日連系……日蓮(鎌倉時代)に始まる宗派
本書では、それぞれの宗派について、本山、ご本尊、教えなど詳細解説されています。
ちなみに、13宗56派は伝統宗教、それらに含まれないものは新宗教といわれます。
新宗教は、幕末・明治維新による近代化以後から近年(明治以降)にかけて創始された比較的新しい宗教団体ですが、中には江戸時代に起源を持つとされるところもあります。
新宗教でも、宗教法人の認可を取ったり、既存の経典(法華経とか)をもとにした団体であったりすることはめずらしくありません。
先日ご紹介した、浄土真宗親鸞会は「新宗教」扱いですが、団体側では浄土真宗を標榜しています。
YouTubeでは、その伝導方法がとかく問題になっていていますが、教義上本願寺派や大谷派と何が違うのかはよくわかりません。
批判者はまず、そのへんをきちんと説明したほうが良いと思うんですけどね。
立正佼成会は、法華経をもとの経典としています。
ただ、立正佼成会が標榜する「親孝行」は、先に書いたように、お釈迦様の仏教には出できません。
戦前の家制度・絶対天皇制という国策を、教義にこじつけたものだろうと思います。
本書の説明に戻ると、巻末には、『仏教で使う言葉辞典』として、『お寺でよく使う言葉』『葬式や法事でよく使う言葉』『年中行事の言葉』などを集めて説明しています。
葬式や法要、新年の参拝、人によっては仏前結婚など、お寺には日常的にお世話になっています。
仏教への理解を助けてもらうために、ぜひ1冊お手元に置かれることをお勧めします。
仏教の書籍も数々あります
これまで、このブログでは仏教概論についての書籍をご紹介してきました。
たとえば、ブッダが教える愉快な生き方(藤田一照著、NHK出版)は、人生を豊かにしてくれる「仏教の学び方」について解説しています。
著者は、曹洞宗で得度しているので、どちらかというと禅の修行から仏教を述べています。
気にしない技術 ~まんがで読み解く般若心経入門~(あさ出版)は、大乗仏教の真髄と言われる般若心経の意味を漫画で解説しています。
般若心経は、写経でもおなじみのお経です。
別冊NHK100分de名著集中講義大乗仏教こうしてブッダの教えは変容した(佐々木閑著、NHK出版)は、原始仏教と大乗仏教の違いを解説しています。
本来、仏陀の仏教とは、出家して修行したものの「悟り」のハズでしたが、それかいつしか在家者も「救う」宗教になってしまいました。
それが、大乗仏教です。
日本の宗教諸派は、大乗仏教です。
その意味で、とくに今回ご紹介した『知っておきたい日本の仏教』と併せてお読みいただきたいと思います。
以上、知っておきたい日本の仏教(ムック編集部、ヘリテージ)は、文化庁に登録されている仏教13宗派について、開祖からご本尊まで徹底解説、でした。
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