貧困脱出マニュアル(タカ大丸著、飛鳥新社)は、貧乏脱出のためにはお金を稼ぐしかない。ではどう稼ぐかという職業紹介です。「貧困は罪悪であり、病である。すべての悪の根源である。人類はかつて天然痘やペストを克服した。今度は貧困の番だ」と述べています。
『貧困脱出マニュアル』は、タカ大丸さんが飛鳥新社から上梓しています。
このブログでは、Kindle版をご紹介します。
著者のタカ大丸さんは、英語同時通訳・スペイン語翻訳者のポリグロット(多言語話者)。
父親の暴力に悩まされ、両親の離婚後は中学時代から4年間新聞配達を続け、高校時代から米国留学を志し独学で英語の勉強を始めたそうです。
経済的、学問的な準備を行い、米国ニューヨーク州立大学ポツダム校に入学。
イスラエルのテル・アヴィヴ大学でも交換留学で学び、現在は翻訳者として自ら発掘した海外書籍を刊行してベストセラーにしているそうです。
本書では、著者が自身の体験や人生観を交えて、どん底からお金をため、そこから自己実現する方法について、様々な職業を従事者への取材を交えて紹介しています。
本書は2022年12月21日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
若くて元気なら力士がおすすめ
本書はまず、貧乏脱出のためには、お金を稼ぐしかない。
お金を稼ぐには、働くしかない。
小金が貯まれば、株でも不動産でもなんでも投資すればよい、と述べています。
1を100にするよりも、0から1にすることの方が難しい、といいます。
投資をするにも必要な種金を稼げ、といいます。
金を稼ぐには、王道はないのです。
著者は、ハングリー精神を否定します。
ま、東大生の親の平均年収が1000万とか、ずいぶん前から言われてましたしね。
ただ、日本という国は、お金に縁がなかったり、お金を嫌ったりする美談がウケるのです。
まるで、お金を稼ぐことが悪いことのような風潮が未だにあります。
これはまあ、おかみや独占資本の企業に、たてつかないようにするイデオロギーの一つだと私は思っています。
つまり、お金お金と言わない「上品」な国民は、為政者や財界のマインドコントロールを受けているというわけです。
困ったものですね。
著者がここまでいい切るのは、著者も貧困で苦しんだ時期があったからです。
それは、毒親(父親)のせいであり、母子家庭のせいでもあります。
さて、著書はまず7つの「基本スキル」を枚挙しています。
人がやりたがらない仕事をする
まかないがつくバイトをする。どうしても追い詰められたら、ゴミを漁れ
徹底的に誰かの思考を取り入れてみる
貧乏人は部活にかまける暇はない
まずはメルカリで1000円稼いでみよう
海外との価格差に目をつける
清潔にして外見を磨く
と、あります。
詳細は本書をご覧いただくとして、ここでは、最後の「清潔にして外見を磨く」を簡単にご紹介すると、たとえば爪は切れ、小金が溜まったら歯に投資しろ、といいます。
売れている「水戸のヘンな美容師」に話を聞き、刮目したというのです。
著者は言います。
男女の話に限らず、仕事で見かけは大切だ。こいつは信頼できる、お金を払ってもいい、と思ってもらえる外見を整えることである。
金を稼げる具体的な仕事をいくつか紹介していますが、実際にその仕事に従事している人に取材をしています。
そのひとつ、というより、推奨のトップクラスは、何だと思いますか。
髷を結って、まわしをつける、アレです。
どんなスポーツでも、未経験でプロになれるものはありません。
しかも、子供の頃からはじめないと間に合いません。
しかし、相撲だけは、未経験可です。
しかも、力士は随時募集中です。
友綱部屋の公式サイトの文言を引用しています。
「一流企業でもリストラを繰り返しており自主再建できなくなった企業もたくさんある中、日本相撲協会は借入金のない優良法人です。力士は社員採用ではありませんが、ゼロからでもプロスポーツ選手になれるのは力士だけです」「実力の世界だ、有志よ来たれ」なんて勇ましいコピーではないんですね。まさに従業員募集のノリです。
何しろ、十両に上がれば100万以上の給料が出ます。
「私の知る限り、何の取り柄もない中卒が月収100万円を目指せる可能性がある職業など、たぶん相撲取りしかない」と、半ば呆れ気味に著者も書いています。
部屋住みなら衣食住は一切タダ。幕下以下でも食いっぱぐれることはありませんからね。
しかも、プロ野球選手のような選手枠はないので、戦力外通告による自由契約もありません。
力士の数だけ部屋には手当が入るので、むしろ親方にとって所属力士は飯の種だから、やめさせるわけがないのです。
もし、体力の限界を自分で悟り、やめたとしても、部屋の後援会が就職先を世話してくれます。
後援会との付き合いは、引退後に何をするにも役に立つ大切な人脈です。
中卒で入ったら、通信教育で高卒の資格を取れるようにするそうです。
あの体格を維持するために、無理に食べて糖尿病になったらどうしよう、なんて心配かもしれませんが、本書が取材した時津風部屋では、無理に食べさせることはしていないそうです。
「就職先」として、いいことばかりですね。
ただ、年齢や体格の制限はありますから、誰でも入門というわけにはいかないんですけどね。
職選びの他には、語学力をアップさせることを推奨しています。
具体的な語学力の高め方も書かれています。
著者は、本職である翻訳でベストセラーを出していますが、その秘訣も解説しています。
要点は2つ。
未来予測ができること。
その分野の一流を知ること。目利きができるようになるといいます。
そして、歴史を知ることです。
いずれにしても、その分野の関連書籍をしっかり読み込むことだといいます。
著者は、情報収集にGoogleアラートを挙げています。
グーグルアラートは使っていますか。
毒親は許さなくてもいい
本書が、単なる「稼ぎ方」による「貧乏脱出」本ではないのは、たんに、ハードルは低けれじ儲かる職業・事業の紹介だけではなく、著者自身が人としてどうやって立ち直り生き抜きのし上がってきたか、ということが併せて書かれていることです。
端的に述べると、著者は毒親(父親)育ちだということです。
子供の頃から、新聞配達した金をくすねられ、全く道理のない言いがかりをつけられ暴力を振るわれる。
経済的なことだけでなく、人格形成上、めちゃめちゃにされてしまうのです。
そこから、いかにしてのし上がったかということが書かれているのです。
しかし、我が国ではなかなか「毒親」という概念が広がらず、親孝行などというエセ道徳が幅を利かせています。
親には無条件で感謝しろとか。
親は、好き好んで子供を作っていますが、子は好き好んでその親から生まれたわけではないのですから、「生んでくれてありがとう」よりも、まずは「生まれてくれてありがとう」でしょう。
そして、子が親をどう評価するかというのは、子の「内心の自由」によるものとすべきです。
本書は、(親孝行道徳は)儒教の影響と書かれています。
それもあるかもしれませんが、私が考えるのは、家制度というイデオロギーを忖度した新宗教が、「徳の積み方」として、「親孝行がある、親孝行しましょう」と後付けしたのではないかと思います。
たとえば、立正佼成会などは、親孝行を求めますね。
しかし、釈尊(お釈迦様)が直接関与しているといわれる原始仏教では、親孝行しろなんて話は一切出てきません。
そりゃそーでしょう。
何しろ、ゴータマ・シッダッタ(お釈迦様の本名)さんは、北インド(今のネパール)の王子様で、王様からは「こいつ、いつか家出するんじゃないか」と怯えさせて、何不自由ない暮らしをさせてもらい、妻までめとって息子まで作ったのに、29歳で家をおん出て出家してしまったんですよ。
少なくとも、とんだ親不孝であり、家庭人としても失格者じゃないですか。
そもそもお釈迦様の仏教というのは、人を救うためのものではなく、自分が悟るためのものです。
つまり、誰のためでもなく、自分のために妻子も国も捨てたのです。
それどころか、『ダンマパダ』(法句経)というお経には、執著(支配欲)は無明(むみょう=智慧がない愚か者)という悟りがあります。
つまり、子供に対して親孝行などしろという「支配欲」も、子が親離れできない「執著」や「愛慕」も、「智慧がない」と辛辣に切り捨てているのです。
著者は、スーザン・フォワード著の『毒になる親』から引用しています。
さらに被害者の観察を続けた結果、私はそのような「罪の免除」は「事実の否定」の一形態に過ぎないと確信した。親を「許した」と言っている多くの人たちは、本当の感情を心の奥に押し込んでいるに過ぎず、そのために心の健康の回復が妨げられていたのである。(文庫版199頁)毒親は、許す必要はない、ということです。
今すぐ、「親には感謝しなければならない」なんていう呪縛からは、自らを解放したほうがいいですよ。
ただ、さきほどのお釈迦様の話に戻ると、毒親への怨みについては、「この世では、恨みが恨みによって鎮まるということは絶対にあり得ない。恨みは、恨みを捨てることによって鎮まる。これは永遠の真理である。」(法句経)ともあり、毒親だからといって怨み続けることは肯定されていません。
が、これとて「毒親でも許せ」と言っているわけではありません。
毒親は「無明」の存在なのだとの評価を恐れずに行えばそれで良い。
心のなかで怨み続けていたら、自分の心が疲弊して損するだけだということを言っているのだと思います。
いずれにしても、本書のリアルな成功体験。読み応えがありました。
以上、貧困脱出マニュアル(タカ大丸著、飛鳥新社)は、貧乏脱出のためにはお金を稼ぐしかない。ではどう稼ぐかという職業紹介です。でした。
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