刑務所いたけど何か質問ある?マンガ『刑務所なう。&わず。』完全版【文春e-Books】は、堀江貴文さんの獄中暮らしを漫画化したものです。証券取引法違反容疑により逮捕。懲役2年6か月の実刑判決で、2011年4月26日~2013年3月27日まで塀の中で過ごしました。
刑務所いたけど何か質問ある?マンガ『刑務所なう。&わず。』完全版【文春e-Books】は、文藝春秋社が電子書籍化した、ホリエモンこと堀江貴文さんの獄中暮らしを、西アズナブルさんが漫画化したものです。
2011年6月20日に出頭し、刑期の74%にあたる2013年3月27日に、長野刑務所から仮釈放された1年9ヶ月間の暮らしを綴っています(11月10日刑期満了)。
堀江貴文さんといえば、ライブドア時代に、楽天よりも先に球団創設に手を挙げたり、
ニッポン放送株の過半数を確保したりして話題を呼びましたね。
では、そのホリエモンはどうして捕まったのか。
Wikiには、容疑の内容はこう書かれています。
頑張っても頑張っても、欠損が出てしまう超零細企業の経営しか軽化身していない私には、「50億3400万円の経常黒字」なんて想像もつかない数字ですが、懲役2年6か月の実刑判決でした。
収監後も、Twitterやメールマガジン等での社会的活動を継続していたので、完全に社会から切れたイメージはなかったのですが、もちろん刑務所生活は、普段の生活とは違います。
一口に言えば、あのホリエモンが、郷に入れば郷に従えで刑務所生活に染まっていく様子が描かれていて、実に興味深い内容です。
本書は2023年1月3日現在、kindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
面白困った人たちと上下関係をきっちりした生活
堀江貴文さんは、まずモヒカン頭で東京高等検察庁に出頭。
東京拘置所に収監されるところから始まります。
そして、毎晩誰かが暴れて、懲罰房に入れられる騒ぎで眠れないホリエモンが描かれています。
長野県須坂市の長野刑務所・衛生係に配属されます。
トップの親切さんは、「まあいろんな人いますよね。かくいう僕もピンク(性犯罪)なわけですが。はは」
作業中歌いだしちゃう人や、毎朝大声でお経を唱える人……。いろいろな人が描かれています。
ホリエモンも所属する腕立て部の部長が言います。
「同室に人工肛門の奴がいて、やっぱりちょっと便が漏れたりするわけ。いや、そのことは仕方ねえし問題じゃないんだけど、それを共同室の雑巾で拭きやがるんだよ。どう思うよ社長(ホリエモンのこと)」
「いやー、どう思うって言われても……」
メディアでは、傲岸不遜なホリエモンもタジタジです。
ホリエモンのいた15工場は、老人や体の不自由な人が集められる工場で、多少問題のある人物もいたといいます。
工場でゴルフティーを作っていたときのこと。
「なんか黄土色のものがついているんだけど。しかも臭い。さては……」
マタギをしていたというマタギさんは、自然派な男で、風呂にもあまり入らない。
「ちょっと、手を見せてください」とホリエモン。
そして、なぜかトイレで紙を使わない。
「手にウンコついてんじゃん。理解不能だよ。無駄に自然派すぎるだろう」
材料を運ぶホリエモンに、「こんな材料いらないよ」と答えるのは、ミスター不機嫌。
彼は所構わず不機嫌オーラを振りまくので、周囲から嫌われていたとか。
そんな彼と同じぐらいウザがられていたのが、身内がオウム真理教に入信してしまったというミスター面倒。
「(ホリエモンに)田原総一朗さん紹介してくださいよ。手記を出したいので。いいでしょ」
「いいわけねーだろう!!」と、心のなかでホリエモン。
KYなミスター面倒は、誰彼構わず絡んでいたが、ミスター不機嫌とミスター面倒の2人は、さながらスクールカーストの最下位という趣だったそうです。
「やっぱ、色々溜め込むのはよくないねえ。その点、俺なんか、アルコールがあれば気分爽快」
といって、消毒用アルコールをスーハースーハーと吸っている飲酒運転犯の受刑者。
「俺はやっぱ注射・器がほしいね。社長。ニプロの株ってどうですかね」と、薬物犯の受刑者。
「だめだ。この人達、全くこりていない」
そして、ホリエモン曰く、最も反省していなかったのが魚河岸くん。
「俺はやっぱ、女っすかねえー。暗い田舎道で自転車に乗ってる女子高生を、自転車ごと田んぼに落っことしてレ・イ~プするんですよ」
「よ、よく勃つね。てか、なんでそんな事するの」
「暇だからっすかねー。ゲームやったり、車上荒らしとかやったり」
「ゲームと並んでいる単語、おかしいでしょ」
しかし、魚河岸くんはコミュ力が高く仕事もでき、工場一の問題児、通称「かまってちゃん」ともただひとりうまくやっていたとか。
ホリエモンは、そのかまってちゃんに殴られて前歯を折ったそうです。
かまってちゃんは、小児麻痺で、ホリエモンたちが身の回りのお世話をしていたのですが、親兄弟に見捨てられ養護施設育ちで放火で刑務所入り。
何度も懲罰を受けているため、福祉施設への入所も難しいそうです。
前述の親切さんは言います。
「まあ大変ですよね。だから私は、この経験を生かして、介護職につこうと思っているんですよ」
「親切さん。いい人すぎるだろ」
つーか、親切さんはそれよりも、お世話しながら悪い癖を出さないよう気をつけないと……。
そんな親切さんが、他刑務所に移送された後は、融通のきかないガチマジ先輩がトップに。
刑務官が、ホリエモンに質問します。
「材料の在庫って、いくらぐらいあるんだっけ?」
「あと、3~4箱ぐらいです」とホリエモン。
すると、ガチマジ先輩がへそを曲げます。
「堀江さん。なんで俺を通さないんだよ」
刑務官に即答しないで、ガチマジ先輩に形式的にでも「どうでしたっけ」と確認すべきだ、というわけです。
工場内で、ただ一人「堀江さん」と呼んでいたのもガチマジ先輩。
こういうとき、メディアで名前が知れていると損ですね。
ほかの受刑者は本名ではなく、あだ名とか通称で呼んでいるわけですよね。
「いや、でも……(会話の流れでしょうがねえだろ)」とホリエモン。
「でもじゃねーんだよ。おれには俺のやり方があんだよ」
「こら。口論するな。先輩の言うことに黙って従うのが当たり前だろ」と、刑務官に怒られるのはホリエモンの方です。
おもしろ困った人たちだけでなく、こういう不条理にも耐えなければなりません。
もっとも、ホリエモンはガチマジ先輩を恨んでいるわけではありません。
刑務所は、とにかく上下関係が大切なところ。
立場が逆だったら、ガチマジ先輩は忠実な部下だったろうといいます。
あの傲岸不遜なホリエモンも、郷に入れば郷に従え、というわけです。
刑務官にはフレンドリーな人もいて、「なんの株がおすすめ?」なんて聞いてくる人もいたそうです。
ことほどさように、『塀の中の懲りない面々』と、『天才バカボン』をあわせたような世界が、2年9ヶ月間描かれるわけです。
決して他人事ではない話
ホリエモンは言います。
「何かのきっかけで犯罪者になってしまった人たちだけど、何も特別じゃない普通の人たちだよ。だって必ず社会にもどってくるんだもん(死刑囚は拘置所で待つので刑務所での懲役はない)。偏見を少なくして再犯を防ぐような受け入れが大切じゃないかな」
例えどこにいたとしても、人間関係が大切、と結んています。
まあ、漫画としては笑ってみていられますが、実際に入ると、いろいろ辛いことや苦しいこともあったのでしょう。
「何かのきっかけで犯罪者になってしまった人たちだけど、何も特別じゃない普通の人たち」というところが印象深いですね。
犯罪者とか、同列に並べるものではないですが文脈上ご理解いただきたいんですけど障害者とか、「自分たちとは別の世界の人」という意識って、大衆にはあると思うんです。
でも、そうじゃないんです。
たとえば、自分は肉体的にも精神的にも無問題というあなた。
いつ、直腸がんになって人工肛門になるかわからないんですよ。
いつ、脳卒中で手足が麻痺したり、脳障害で会話も困難になったりするかもしれないんですよ。
中途障害なんて、誰でもなる可能性があるのです。
犯罪だってそう。
人間ですから、魔が差すこともあります。
普段、犯罪とは一番遠いところにあるような真面目な生活をしている人ほど、そのストレスや、うまくいかなかったときの対処がわからなくなり、間違った行為に走ってしまうことだってあります。
人間というのは間違いうる生き物なのです。
まあそれはともかくとして、受刑者たちの面白困った日常や、ホリエモンの戸惑いなどがたっぷり書かれている本書は、読み応えのある一冊です。
以上、刑務所いたけど何か質問ある?マンガ『刑務所なう。&わず。』完全版【文春e-Books】は、堀江貴文さんの獄中暮らしを漫画化、でした。
刑務所いたけど何か質問ある? マンガ『刑務所なう。&わず。』完全版【文春e-Books】 – 原作 堀江貴文, 漫画 西アズナブル
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