カラー版イチから知りたい!仏教の本(大田由紀江著、西東社)は、仏教の歴史、教え、宗派、名僧、古寺など仏教の百科事典です。仏教のそもそも論について解説している書籍は多々ありますが、本書はもっともわかりやすく詳しい網羅的一冊です。
『カラー版イチから知りたい!仏教の本』は、大田由紀江さんが西東社から上梓したものです。
この記事では、Kindle版をもとにご紹介しています。
簡単に内容を述べると、仏教の百科事典、リファレンスマニュアルです。
文章による説明の後に、必ず図解が入ります。
Amazon販売ページには、目次が公開されています。
【目次】
1章 仏教ってなに?
2章 仏教の誕生と伝播
3章 仏教の教えとは
4章 日本仏教の歴史
5章 宗派の種類と教え
6章 日本のおもな名僧
7章 仏教に縁の深い古寺
8章 お寺の基礎知識
9章 禅の教え
10章 仏像の見方
本書1冊あれば、仏教のことでわからないことがあって困る、ということはないと思います。
「イチから知りたい」と書かれているように、神社とお寺の違いのわからない人でも、入っていける内容です。
今まで、様々な仏教関連の書籍をご紹介してきましたが、
「名僧」は名鑑といってもいいですし、「古寺」はガイドブックにもなります。
「仏像」の見方はご存知ですか。
これも知っておいたほうがよいことです。
本書は2023年1月18日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
仏教は少しずつ変わりながら日本人の心に根付いている
仏教の歴史については、長い時間をかけて、少しずつ変わりながら、日本人の心に根付いているのだなあ、ということが改めて分かる内容です。
この「少しずつかわりながら」というのが大事なんですね。
何をもって「少しずつ」であるかないかの評価をするかは意見が分かれるかと思いますが、「お釈迦様の仏教」とは違うものが、「大乗仏教」として日本にやってきて、ともすればお釈迦様が言っちゃいないことを、さもお釈迦様の教えであるかのように一般国民が勘違いしている部分もあるのが、今の日本の仏教諸宗派です。
まあ、お釈迦様が言っていないことを言ったとするならば虚偽ですが、お釈迦様純正でなかったとしても、その宗門宗派自体がインチキかといえば、そんなことはありません。
もし「お釈迦様の仏教」のままだったら、仏教は世界三大宗教(キリスト教、イスラム教、仏教)のひとつに食い込めることはなかっただろうといわれています。
げんに、「お釈迦様の仏教」の流れをくんでいる上座部仏教というのは、今やごく少数派です。
おなじ「仏教」を名乗っていても、「お釈迦様の仏教」と「大乗仏教」は違うものです。
お釈迦様の仏教と、大乗仏教が違うことは、もう何度もご紹介しました。
共通点といえば
- 絶対創造主(神様)の差配を前提とした自然観や社会観の立場はとらない
- 万物は諸法無我である
- 人生は一切皆苦である
- 死んで地獄に落ちないようにしよう
といったことぐらいはそのまま継承されています。
しかし、大乗仏教ではその教えを取り巻く根拠やメカニズムは幾通りにもわかれ、そのいずれも、もはや「お釈迦様の仏教」の原型を留めないほど変わってしまいました。
しかし、大乗仏教諸宗門が、そのように多様でオリジナルになったのは、時代背景や人々の願いの中で「お釈迦様の仏教」に上書きされてきたことなので、大衆が救われるために必要なことだったのです。
そこで、「お釈迦様の仏教とは違っているから偽物だ」と頑張ったとして、その「真実性」の追求は学問的意味はあっても、信仰としてはあまり意味は無いでしょう。
大事なことは、それで人が救われるのかどうか、ということですから。
「お釈迦様の仏教」は、出家僧のみが救われる、限られた人のための宗教です。
しかも、その戒律はそもそも変えずに続けられるものでもありません。
たとえば、托鉢で暮らすのが修行僧ですが、その対象は食べ物であり、金銭であってはないとされました。
それは、この日本の現代社会では不可能でしょう。
そもそも、当時ですら、お釈迦様はそんな物乞いをやってるから、食あたりで死んでしまったのです。
何だからわからない残飯で暮らしなさいってことですから、あぶなっかしくてできません。
余談になりますが、私はこの仏教のたくましい歴史を見るたびに、どことは書きませんが、ある政党のことを思い出します。
そこは、自分こそ正しいと頑張っていますが、一番歴史が長い政党なのに、1度も国政で政権に入ったことがありません。
ま、結党した以上、自分たちが正しいと思うのは当然でしょうし、それは自由ですが、しかし、それでよしという党員と支持者は、有権者100人中たった3人ぐらいというのが現実です。←毎月やっている支持政党の調査の数字より。
もし、議会で多数派になりたいのなら、お釈迦様の仏教⇒大乗仏教、というような変容は必要でしょうね。
党名を変更しろとか、おせっかいを言うつもりはありません。
ただ、「お釈迦様の仏教」のままだと、上座部仏教ぐらいのシェアしか得られない、ということです。
それはともかくとして、本書を読みながら、赤字で表示された仏教用語を書き抜きました。
主なものを枚挙しますが、あなたはいくつわかりますか?
四諦、八正道、四法印、諸行無常、諸法無我、一切皆苦、涅槃寂静、五蘊、六波羅蜜、三世諸仏、三経義疏、南都六宗、般若心経、法華経、寺院諸法度、悉有仏性、忘己利他、易行道、専修念仏、歎異抄、悪人正機説、無量寿経、観無量寿経、阿弥陀経、大日如来……
私はきちんと述べられるのは半分ぐらいかな。
まだまだ勉強が足りません(汗)
世間の確固たるお墨付きを得た「専門家」でなくても……
本書の著者は、大田由紀江さん。
最初、本書の詳しさに感服した私は、これだけ詳しい著書は、よほどの深い専門家でないと書けないと思いました。
彼女のプロフィールを見ると、フリーエディター・ライター。
仏教学者、仏教ジャーナリスト、仏教評論家といった、「専門家」らしい肩書は名乗っていません。
実際には、仏門に入っているとか、仏教に関して造詣が深いのは確かだと思いますが、少なくとも対外的にお墨付きを得られる肩書で上梓していません。
もっとも、それらの「専門家」なら、仏教百科事典が書けるわけではありませんが。
我々は勘違いしがちですが、学者というのは、自分が論文を書く(書いた)テーマにおいてのみ専門家であるに過ぎません。
たとえば、物理学者と言っても、物理の研究分野は多岐にわたり、学者のすべてがそれらに通暁しているわけではありません。
ましてや、物理以外では我々と変わらない素人です。たとえ博士号を取得していようが、ノーベル賞をとろうが……。
ジャーナリストについてもそう。
自分が取材したことにおいてのみ専門家に過ぎません。
評論家だって、批評や分析をするだけであり、百科事典的知識が約束されているわけではありません。
なぜこんなことを書いているかというと、私もこのブログでたくさんの仏教関連の書籍をご紹介しながら、仏教については多少なりともわかったこと、感じたことなどがあり、自分でも仏教についてなにか書けないものだろうか、という書き屋根性が多少なりとも刺激されました。
しかし、私は過去に仏教関連の執筆の取材も行った経験はなく、仏教系の学校で学んだこともありません。
もちろん、得度もしておりません。
つまり、仏教とも仏門とも何の接点もお墨付きもない者です。
そんな人間が、エラソーに仏教について何か書き物をするなんておこがましいのではないか、という気持ちもあったわけです。
しかし、大田由紀江さんのように「フリーエディター・ライター」という肩書だけで、これだけの立派な書籍を上梓する人が世の中にはいるのだ、ということがわかり、きちんとした書籍を著せるかどうかは、肩書ではなく自分次第である、という当たり前のことを改めて気付かされた次第です。
私も、頑張ってみようと思いました。
大田由紀江さん、ありがとうございます。
本書は、仏教について、とにかく、わかりやすく網羅的に書かれています。
これ一冊あれば、誰かに仏教のことを聞かれても、たいていのことは答えられるのではないでしょうか。
神社と寺の違いすら思いつかないそこのあなた(←意外と多いハズ)、ぜひお手元に一冊ご用意ください。
神社といえば、西東社は、神社・神道関連の書籍もリリースしており、このブログでもご紹介しました。
『カラー図解イチから知りたい!日本の神々と神社』(三橋健著、西東社)は、神々の種類と成り立ち、神社の種類・仕組みなどを解説しています。
本書の日本神道編ですね。
カラー版一番よくわかる神社と神々(かみゆ歴史編集部/平藤喜久子監修、西東社)は、参拝マナーや神様のエピソードなどを解説しています。
神様のそもそも論、神道の疑問、おすすめの神社など、1冊に神社と神々のことが網羅的に解説されています。
こちらも、お読みいただければ幸甚です。
以上、カラー版イチから知りたい!仏教の本(大田由紀江著、西東社)は、仏教の歴史、教え、宗派、名僧、古寺など仏教の百科事典です、でした。
カラー版イチから知りたい!仏教の本 カラー版 イチから知りたい! – 大田由紀江
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