「これ」を食べればサプリはいらない(田村忠司著、東洋経済新報社)は、サプリメントに頼るより「食べる」栄養が最強と説く書籍

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「これ」を食べればサプリはいらない(田村忠司著、東洋経済新報社)は、サプリメントに頼るより、「食べる」栄養が最強と説く書籍

「これ」を食べればサプリはいらない(田村忠司著、東洋経済新報社)は、サプリメントに頼るより、「食べる」栄養が最強と説く書籍です。サプリメントは健康補助食品ですが、サプリメントメーカー社長として、それをはみ出す利用の仕方に警鐘を鳴らしているのです。

『「これ」を食べればサプリはいらない』は、サプリメントの製造子会社の代表取締役社長として活動する田村忠司さんが、東洋経済新報社から上梓した書籍です。

それにしても、サプリメント製造にかかわる方が、「サプリはいらない」とは、だいたんなタイトルです。

Amazon販売ページには、そのねらいについて、こう書かれています。

私は仕事柄、よく「どんなサプリを買えば良いでしょう?」と聞かれます。
そうした折の私のお返事は「サプリにお金をかけるよりも、八百屋さんや魚屋さんで旬の食材をお買いになるほうがずっといいですよ」ということがほとんどです。
「いつも元気でいるために、どの食材をどのようにして食べればいいか?」、今回はそれに重点をおいてまとめてみました。(まえがきより)

もちろん、サプリメントメーカーの社長ですから、サプリメントを根本的に否定しているわけではありません。

サプリメントなのに、食材を超える栄養補給や、薬品を超える治療薬のごとき宣伝や使われ方がされていることがあるので、サプリメント製造にかかわるものだからこそ、その点に警鐘を鳴らす、という意図なのです。

医薬品とサプリメントは法的に異なるカテゴリーとして扱われます。

一般的に、医薬品は病気や症状を治療するための薬剤であり、厚生労働省や他の医療機関によって承認された医薬品であることが必要です。

医薬品は、効果や安全性が科学的に証明されており、厳格な製造基準に基づいて製造されています。

一方、サプリメントは、栄養補助食品としての役割を果たすために使用される製品であり、医薬品とは異なり、病気や症状を治療するために使用されるものではありません。

サプリメントは、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、または他の栄養素など、人間の健康を維持するために必要な栄養素を含むことが多いです。

サプリメントは、一般的に医療機関によって承認されていませんが、食品として扱われるため、消費者に販売するには、安全性が確認され、表示される成分に関する規制に従う必要があります。

したがって、法的には、医薬品とサプリメントは異なるカテゴリーとして扱われます。

医薬品は、承認を受けた薬剤であり、病気や症状を治療するために使用されます。

一方、サプリメントは、栄養補助食品としての役割を果たし、健康を維持するために使用されます。

と言ったことを踏まえた上で、お読みいただけると幸甚です。

本書は2023年4月21日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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医薬品と食品(食材・サプリメント含む)は法律上も全く別物

最近は、いっそうの規制緩和によって、一部サプリメント・健康食品に効能らしきものが書かれるようになりましたが、本来、医薬品と食品(食材・サプリメント含む)は、目的も法律上も全く別物です。

医薬品とは、病気の診断、治療や予防のために使うもので薬事法で定められます。

その有効性や安全性などについて一定の審査もあり、医薬品の製造・販売には厚生大臣 又は都道府県知事の許可が必要となります。

私達が口に入れるものは、医薬品以外のものは食品になります。

たとえば、健康食品、いわゆるサプリメントはそのひとつです。

特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品など、一見体に良さそうなものもありますが、ルールを守って健康維持に役立つことが表示されているだけの「食品」です。

著者は、サプリメントといってもしょせんは食品。

同じ「食品」なら、何も高いお金を出して、かつ安全性や信ぴょう性に疑問符がつくサプリメントを買わなくても、食卓に使われる食材をバランスよく摂取したほうが健康のためにはいい、と主張します。

私たち消費者は、食べ物を普通に食べていても、生活習慣病になったのだから、特別な処方がないと治りません。

たとえ「食品」であっても、普通の食材よりはサプリメントの方が病気を治してくれそうな気がしてしまいます。

なんとなく薬っぽいから。

しかし、著者はそこに誤認や見落としている点があると指摘するのです。

たとえば、第1章では、次の10点を挙げて、サプリメントを勧めていません。

サプリメントをすすめない10の理由

本書によると、勧めない理由はこうなっています。

  1. サプリメントは本体の成分より添加物の方が多いほどである
  2. 名のあるメーカーでも「不当表示」など不誠実な会社が多い
  3. 合成の際に混入する不要な物質が残ったり、安全管理に不安のある中国生産が多かったりなど、材料が信用出来ない
  4. 医師の処方のように量が決められているわけではないので、複数サプリメントの重ね飲みによる過剰摂取が心配
  5. 何が必要か、また必要でないかの判断もはっきりしないまま、栄養素の含有量など情報の不足するサプリメントを宣伝だけで選んでしまう
  6. 生活習慣の改善という本質的な問題が後回しにされがち
  7. アレルギーの原因になるかもしれない
  8. 三大栄養素などサプリメントで摂取するには不適当な栄養素がある
  9. 良い食材を購入し、農業、食品メーカー、外食産業などを育てたい
  10. 本当に体に必要とされるビタミン、ミネラルなどの栄養素がないがしろにされ、摂らなくても命に別状ない成分の宣伝にメーカーは力を入れている

考えてみれば、普段、食材を選ぶときは、産地や食品添加物を神経質なほど気にしている人でも、サプリメントは、何が入っていてもあっさり服用してしまうことはないでしょうか。

サプリメントを摂取することは「健康に良いこと」だから、それに比べれば、添加物がどのくらい悪かろうが、多少は悪いものを入れても構わない、と、添加物には「必要経費」程度の思いしかないように思われます。

しかし、著者は、その「健康に良いこと」自体に懐疑的な立場をとっているのです。

最後は、いわゆる「抗がん健康食品」を指しているものと思われます。

たとえば、キノコ系健康食品のβグルカンは、腸管免疫を刺激するので免疫力がアップすると宣伝されていますが、別に摂らなくても困るわけではありません。

……と、述べると、いや、栄養補給ではなく抗がんのための健康食品摂取なのだから、「免疫力がアップする」だけで十分、と反論があるかな。

しかし、そもそもその「免疫力」について、誰も留保のつけようのないエビデンスが示された「抗がん健康食品」はこれまで皆無なのです。

そもそも免疫力は無限ではありません。

それだけで、進行がんや、抗がん剤の副作用を抑えることは難しいのではないでしょうか。

第2章は、「これを知ったらもう飲めない! サプリメントの衝撃ウラ事情10連発」という見出しで、第1章と重複する部分もありますが、サプリメントの価格と安全性と信ぴょう性という、サプリメントの本質となる3点にわたって懐疑的な内容を書いています。

たとえば、

  • サプリメントの原価はおどろくほど低い
  • サプリメント広告の「使用前」「使用後」の写真の信ぴょう性は誰にも確かめられない
  • ネットワークビジネスに巻き込まれている
  • 飲んでもほとんど意味のない成分が売り物になっている

……など。

サプリメントメーカーの社長が著者というと、ここまで書いたら自己矛盾にならないか、という気もしますが、要するに、抗がんとか、ダイエットとか、サプリメントに対して魔法のような画期的な効果を期待するな、期待させる宣伝はおかしい、ということをいいたいようです。

食材をどう摂取すればいいか

第3章と第4章は、食材についての話です。

第3章は、「生活習慣」と食材の「食べ方」について書かれています。

たとえば、胃腸が悪い時は、何を食べるという以前に、胃腸を治すことが先決であるといいます。

高血圧を気にして降圧すると、せっかく食べても栄養素が回らないという指摘も行っています。

血液をスムーズに流すためには、「早足で歩くこと」「のんびりジョギング」に加えて、青魚やナッツ(オメガ3系脂肪酸)、きゅうり・スイカ(マグネシウム)、果物・野菜・お茶・コービー(カリウム)を摂取すると良いと指摘しています。

近年流行の糖質制限にも言及。

糖は体に必要なものであるから、むやみに抜くべきではない。

抜くことで、倦怠感、無気力、思考力の低下など弊害もある。

朝食はきちんと摂るべきであると唱えています。

糖質制限によるダイエットの危険さや、微量栄養素不足、副腎・肝臓・腎臓・胃腸の不調がある人は、安易に糖質制限してはいけないとも述べています。

このブログでは、低カロリーや糖質制限を推奨する書籍も、批判する書籍もご紹介してきました。

ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~(宗田哲男著、光文社新書)は産婦人科医が実証済みの糖質制限の勧め
ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~(宗田哲男著、光文社新書)は産婦人科医が実証済みの糖質制限の勧めです。カロリー、脂質、コレステロールなどに関する誤解を解き、ケトン体が糖尿病、認知症、がんなどに有効であるとします。
「80歳の壁」を超える食事術(吉村芳弘著、幻冬舎新書)は、70代以降は太っていることが健康維持につながるから食べようと唱える
「80歳の壁」を超える食事術(吉村芳弘著、幻冬舎新書)は、70代以降は太っていることが健康維持につながるので、しっかり食べようと唱える書籍です。「2000万円問題」も言われますが、老後は貯金よりも健康を優先することが大切だとアドバイスします。
低カロリーについて話題になっている。高カロリーだとどんな病気になるのか、問題はカロリーではないのではないかという議論
低カロリーについて話題になっている。高カロリーだとどんな病気になるのか、問題はカロリーではないのではないかという議論だ。飽食の時代だから以前なら考えられなかった病気になった、というのはありがちな推理だが、本当にただしいのだろうか。

なぜ正反対の見解が出るかといえば、最終的には、その人の価値観と身体的事情に尽きることだと思います。

ですから、このへんはご自身がしっかりと該当書籍を読まれた上で答えを出してください。

第4章は、「お悩み・症状別おすすめの栄養素」として、病気の諸症状対策や食育として、具体的な栄養素と食材とレシピを紹介しています。

対象は、アレルギー、頭痛、肥満・ダイエット、月経前症候群・月経困難症、更年期障害、精力減退、循環器の健康、血圧コントロール、認知症予防、糖尿病予防、アンチエイジング、貧血、がん予防、感染症予防、放射線対策、疲労対策、受験勉強、子供の栄養などです。

たとえば、認知症予防には「カレー」だそうです。

カレーの材料であるウコンのクルクミンは、血液中のマクロファージに働きかけ、アミノイドベータという、アルツハイマー病を引き起こす危険物質を取り除くといいます。

しかし、カレーは油を大量に使います。

そして、カレーに限りませんが、加工食品、外食産業で使う油は、オリーブオイルやココナッツオイルといった「健康によい」といわれている油を使っているとは限りません。

さすれば、クルクミンを摂取するメリットともに、脂質を摂取するデメリットも考えなければならないでしょう。

食べ物の「効果」を紹介するときには、食材や食品には、メリット、デメリットがあることをきちんと断っておくべきです。

サプリメントを補助食品として有効に使うための解説も

そして最終章の第5章は、「それでもサプリメントを飲みたい人に」と、補助食品として有効に使うための解説を行っています。

これはすなわち、第1章と第2章の裏返しになります。

たとえば、パッケージ(原材料や添加物)をしっかり見る、価格も大切(安すぎるのも高過ぎるのも問題)、安全基準を満たしとイルカ、専門家に相談できるかなどを説いている。

人の生活はいろいろな形態があります。

サプリメントと呼ばれるものを全否定する人もいますが、必ずしも100%否定できるのか。

ビタミンCは抗酸化作用があって健康にいいといわれている。さすれば、サプリメントを健康のために飲み続けてもいいですか?
ビタミンCは抗酸化作用があって健康にいいといわれている。野菜、果物、サプリメントなどがその効用を説くときにビタミンCの含有を必ずといっていいほど標榜。そしてビタミンCは、みんな尿になって出てしまうので、いくら飲んでも大丈夫だといわれている。

病院の処方箋でも「ビタミンC」が出ることはあります。

ただ、目的や安全性、信ぴょう性も明確でないまま、何となく「いいのだろう」とする漠然とした期待感で、サプリメントを使うのは無益どころか危険なこともある、ということを本書は教えてくれています。

もとより、述べられているように、「食べる」ことなら、まず日頃の生活や食材を見直すことこそが本質です。

『「これ」を食べればサプリはいらない』。興味は尽きませんよ。

以上、「これ」を食べればサプリはいらない(田村忠司著、東洋経済新報社)は、サプリメントに頼るより、「食べる」栄養が最強と説く書籍、でした。

「これ」を食べればサプリはいらない - 田村 忠司
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