効く健康法 効かない健康法(岡田正彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、やってはならない健康法までを加えた解説を行っています。健康情報は正反対のものもありますから、実践には慎重な検討が必要です。本書はそのヒントになるでしょう。
『効く健康法効かない健康法』は、岡田正彦さんがディスカヴァー・トゥエンティワンから上梓しています。
巷間の健康情報を、著者の考えで改めて○×のチェックを行った著書です。
著者は新潟大学名誉教授です。
世の中には、正反対の健康情報がある場合を本書はとりあげています。
たとえば、糖質制限にも賛否がありますよね。
対立する健康情報が存在する場合、以下のようなアプローチで解釈することができます。
ソースの信頼性を確認する: 情報源が信頼性のある医療専門家、公的機関、信頼性のある研究機関から提供されているかどうかを確認します。信頼性のある情報源からの情報は、より信頼性が高く、科学的根拠に基づいている可能性が高いです。
コンテクストを考慮する: 情報が提供された文脈や背景を考慮します。情報が特定の人口グループや特定の条件に関連している場合、その文脈を理解することが重要です。また、情報が一般的なアドバイスであるのか、特定の個別の状況に関連しているのかも注意深く確認しましょう。
総合的な証拠を評価する: 対立する情報を検討する際には、異なる情報源や研究結果を総合的に評価することが重要です。一つの情報源だけに依存せず、複数の信頼性のある情報源から得られた証拠を考慮することで、より客観的な見解を得ることができます。
専門家の意見を参考にする: 疑問や混乱がある場合は、医療専門家や健康に関する専門家の意見を求めることも重要です。医師や栄養士、公衆衛生の専門家など、適切な専門家に相談して、より専門的なガイダンスを得ることができます。
要点をまとめると、対立する健康情報を解釈する際には信頼性、コンテクスト、総合的な証拠、専門家の意見を考慮することが重要です。これによって、より正確な情報に基づいた判断を行うことができます。
といったことを踏まえた上で、以下をお読みいただけると幸甚です。
健康情報は命と健康にかかわる
世の中に広まっている健康情報は、2通りあります。
ひとつは、それ自体が新機軸の健康情報。
たとえば、1日2リットル水を飲んだほうが良い、というようなもの。
もうひとつは、対立するもののある健康情報。
一方では、少食・絶食の健康法があり、一方ではきちんと食べましょうという、南雲吉則医師と高須克弥医師の対立などがその代表です。
対立するもののない健康情報は、それを実践すべきかどうかで迷ってしまいます。
対立するもののある健康情報は、すでに日常生活の営みに組み込まれているもので、どちらにシフトしていいかわかりません。
まあいずれにしても、健康情報というのは、命と健康にかかわるものだから、忽せにはできません。
そこで、今回注目されているのが本書、『効く健康法 効かない健康法』(岡田正彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)です。
もっとも、この手の書籍は過去にも上梓されたことはあります。
それでもまた出てくるのは、それだけ、次々新しい健康情報が喧伝されるからでしょう。
いきなり結論めいたことを書きますが、私の場合、「これをやったら健康になる」というのは基本的に考慮しない。もっとはっきり書くと信用しない。スケプティクス(懐疑的)な立場で見てしまいます。
ただし、「これをやったら健康上問題があるからやらないほうがいい」というものは気をつけたいと思います。
したがって、タイトルにある「効く健康法」というのは考慮しないが、「効かない健康法」が何であるかは興味があります。
これだけある「効かない健康法」
『効く健康法 効かない健康法』については、著者の岡田正彦さんが、『東京スポーツ』(2015年9月25日付)にその内容の一部をまとめています。
それを読んだだけでも、同書の重要な指摘がある程度理解できる。
ということで、それをご紹介しましょう。
休肝日は「効かない健康法」
まず、岡田正彦さんは、「休肝日は意味がない」と断じています。
休肝日という言葉は、私の大学の先輩教授が考案したものです。これをNHKの朝の番組で話したところ、あっという間に全国に広がりました。実はこの人はかなりの酒好きで、自分への戒めという意味も含めてこんなことを言ったのでしょう。
しかし、これには全く医学的根拠はありません。そもそも、人間の内臓が休むということはあり得ません。日本人にはアルコールに含まれるアセトアルデヒドという毒素を分解する酵素を持っていない人が多いのは事実ですが、肝臓は常に様々な毒素を分解しています。適量なら毎日飲んでも問題はなく、休肝日を作って、あとは大量飲酒というのが最悪のパターンです。
要するに、「休肝日」は「効かない健康法」なのです。
次に、「水を飲んでも血液はサラサラにはならない」と述べています。
水を飲んでも血液はサラサラにはならない
水を1日2?飲むと健康に良い、血液がサラサラになると言われています。しかし、実際には血液が一瞬薄まるだけで、サラ…サラになることはありません。むしろ飲み過ぎると、塩分濃度が下がり、さらにけいれんなどを起こす危険性があります。水は喉が渇いた時に飲む。これが正解です。
以前、やはり『東京スポーツ』で、大槻義彦さんが、1日6リットル水を飲み、ゴルフ場を歩きまわる「科学的」な健康法を実践しているので、自分は無問題であると語っていたことがありました。
大槻義彦さんは、「科学的」と称して、ずいぶんトンデモなことを喧伝してきましたが、命と健康に関することは取り返しがつかないので、軽々しく語るのは本当にやめてもらいたいと思っていました。
これはもう、「効かない健康法」というより、やってはならない「健康法」と言うべきです。
ダイエットには食べる順番は関係ない
あとは、「ダイエットには食べる順番は関係ない」とも述べています。
野菜を先に食べると糖質の吸収を抑えダイエットできる、ということはない、というわけです。
ただ、この方法で食事をすると食後の血糖値はあまり上がらないし、先に野菜をたくさん食べておなかいっぱいになり、炭水化物を抑えれば、体重を減らすことは可能であるといいます。
そして、「体温が高くても免疫力は上がらない」と指摘もしています。
免疫力というのは非常に複雑で、「免疫力を数値化する方法」はないからです。
冷えが体に良くないのは確かですが、では体温を上げれば免疫力がアップするという医学的根拠はありません。ましてや、がんになりにくいというのは言い過ぎでしょう。
欧米人は日本人より1度ほど平均体温が高いものの、平均寿命は日本人より短いことも挙げています。
もうひとつ、興味深いものとして、「ストレスが原因で短命になることはない」というのがあります。
これは新機軸ですね。
ストレスは万病のもと……世間的にこれは通説になっています。
しかし、ストレスが原因でがんになるという説も今では否定されていることや、ストレスのない人は認知症になるリスクが高まることも示しています。
もちろん、解決できるストレスは解決した方がいいし、ストレスが原因で心筋梗塞や脳卒中になるリスクは高まるともいわれています。
要するに、「人間にはほどほどのストレスは必要だということ」だそうです。
なるほどなあと思わせますね。
「効く健康法」は大丈夫なのか?
同書は、既存の健康法に「○」、すなわち、「効く健康法」もあるとしています。
ここは少し、気になるところです。
たとえば、「卵は1日1個にとどめておくべき……○」と書かれている。
女優の森光子さんは、鶏卵を1日7~8個食べていたそうですが、それでも90過ぎまで活躍されました。
『卵を食べれば全部よくなる』(佐藤智春著、マガジンハウス)はすでにご紹介したことがありますが、20代の頃、体を壊して体重が39キロまで減ったものの、鶏卵を1日10個食べる生活を1年続けたら元に戻ったという体験談を披露。
読者に対しても、1日3個の鶏卵摂取健康法を推奨しています。
糖質制限派の渡辺信幸医師は、肉200g、卵3個、チーズ120gを、1日のうち、どんな形でも構わないので食べるMEC食という「健康法」も提唱しています。
もちろん、それらが正しいといえるかどうかはわかりませんが、雌雄を決するには、それぞれ信用できる前向き調査でもやってもらわなければならないでしょう。
「ワインのポリフェノールはがん予防になる……○」というのも、はたして言い切って良いのか、というスケプティクスな感想を抱かざるをえません。
たとえば、赤ワインに多く含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールによってサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化されるという説は否定されているはずです。
何より、ワインはアルコールであり、飲酒による弊害もあります。
私は、ポリフェノールの効果がどうであれ、飲酒を「効く健康法」として枚挙すべきではないと思います。
そう考えると、本書にも、まだ今後、否定すべき事柄が含まれている可能性があります。
健康法というのは、それだけデリケートなもーのーなのですー。
健康情報となる5つのステップ
医学的に信頼の置ける健康情報となるには、5つのステップがあると、医学者の坪野吉孝さんは述べています。
「○○は健康に良い」という体験談だけの健康情報は、ステップ1の段階で「それ以上考慮しない」話でしかありません。
根拠となる研究があっても、試験管や動物実験のものだけでは「話半分」にとどめておいたほうが良いでしょう。
学会発表されれば、少しはまとまった報告と言えますが、学会というのは、任意団体として結成できるので、「学会」と名乗れば直ちに信用できるわけではありません。
つまり、「学会発表」だけでは、まだ「研究価値の価値は未確定」なのです。
対照実験でなければ「重視しない」。
それが信用されるようになるには、学術雑誌に発表され、多くの研究者の意見や追試によって複数の研究で支持されていることが条件です。
巷間、出回っているダイエットや健康情報のほとんどは、ステップ1かステップ2、せいぜいお手盛りの学会で発表されたステップ3止まりである。
本書に書かれている「効かない健康法」については十分考慮するが、「効く健康法」とするものにしては、今後、さらなる研究でそれがひっくり返る場合もある、ということは認識しておいたほうが良いでしょう。
以上、効く健康法 効かない健康法(岡田正彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、やってはならない健康法までを加えた解説、でした。
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