幸福ノ學習社完全版(吉田ひろゆき、電書バト)は「世の人々を幸福に導く」幸福ノ學習社が、不遇の人生を送る人々を助ける話

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幸福ノ學習社完全版(吉田ひろゆき、電書バト)は、「世の人々を幸福に導く」幸福ノ學習社が、不遇の人生を送る人々を助ける話

幸福ノ學習社完全版(吉田ひろゆき、電書バト)は、「世の人々を幸福に導く」幸福ノ學習社が、不遇の人生を送る人々を助ける話です。助けるためのツール(教材)を提供する販売員として、やはり不遇の人生を送っていた青年・円山治がスカウトされます。

『幸福ノ學習社完全版』は、『Y氏の隣人』でおなじみの吉田ひろゆきさん。

小心で不運で人生諦めの心境に陥っている青少年が、不思議な道具を与えられる1話完結の短編オムニバス作品。主人公が幸福になったり不幸になったりすることで、世の中の不条理や、生きることの難しさなどを描いています。

本作『幸福ノ學習社』は、モチーフや登場人物のキャラクターなど、基本的に『Y氏の隣人』と同じといっていいと思います。

Y氏の隣人完全版(吉田ひろゆき著、電書バト)は、いじめられっ子が不思議な道具を与えられる1話完結の短編オムニバス作品。
Y氏の隣人完全版(吉田ひろゆき著、電書バト)は、いじめられっ子が不思議な道具を与えられる1話完結の短編オムニバス作品。主人公が幸福になったり不幸になったりすることで、世の中の不条理や、人間のエゴを描いています。
イヴの末裔-Y氏の隣人特別編(吉田ひろゆき著)は世の中の不条理や、生きることの難しさなどを描く1話完結の短編オムニバス作品
イヴの末裔: Y氏の隣人特別編(吉田ひろゆき著)は、世の中の不条理や、生きることの難しさなどを描く1話完結の短編オムニバス作品。1988年~2002年まで『週刊ヤングジャンプ』(集英社)に連載されましたが、本書はその21世紀版。全8編うち1本は新作書き下ろしだそうです。

小心だったり、恵まれないほしのもとだっりして不遇をかこつ人に、人生が好転するツールを与え、その結果から人生について考える物語です。

今回は、そのツール、作中では教材と言われていますが、販売(一応100円と値付けされています)を行う会社が、タイトル通り幸福ノ學習社です。


やっぱり、かの団体を連想してしまいますか。

といっても、別に、その「かの団体」の代表だった人の息子が先日逮捕されたから、今回ご紹介するわけではないですよ。

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仏教の教えに反した教材は捨てられた!?

本作と『Y氏の隣人』が異なるのは、円山治という不遇の人生を送っていた失業中の青年が、最初は教材を提供される「客」なのですが、利他と慈悲の心をもっているために、同社からそのバイヤーとしてスカウトされます。

つまり、バイヤーから見た人間模様、と少し視点が変わるわけです。

したがって、今回は完全なオムニバスではなく、全8話収録中、2話と3話で前後編になっていたり、円山治の指導役という設定で、鬼頭保係長が複数回登場したりします。

円山治をスカウトしたのは、営業部のキャシー黒岩。

ヒゲが濃いオカマ言葉を話す人です。

いわゆるオネエキャラで連想するのは、美川憲一さんとか、マツコ・デラックスさんとか、IKKOさんとか、みんな小綺麗にしてますけどね。

赤塚不二夫マンガもそうですが、オカマ=ヒゲが濃い、という描き方はわかりやすくてくすっと笑ってしまいます。

全8話を通じて、やはり慈悲と利他という、仏教の精神が貫かれているように思いました。

たとえば、第5話ですと、ベビーGという巻ですが、Gというのはゴッドです。

いじめられっ子の中学生が「客」の話です。

その中学生だけに見え、いろいろアドバイスする神様のベビーです。

嘘をつくとそれを諌めたり、道端に犬の糞があると片付ける善行を促したりするのですが、そのベビー神様があらわれて以来、いじめっ子がケガをしたり、失業中の父親が就職したりと、いいことともあります。

ただ、「感謝されるということはすばらしい」といって、ベビー神様は、宿題を見せろというクラスメートに宿題を見せることを勧めます。

結局、この神様は、「飼い主に善行を強要し続ける」ために、誰もが音を上げて最後は捨てられてしまうというのですが、これはおそらく、「間違った善行」を勧めるから捨てられるということではないかと思います。

具体的には、自分ですべき宿題を、クラスメートのものからまるうつしすることは、釈迦仏教では

不偸盗戒(他人のものを盗まない)
不妄語戒(嘘をつかない)

という戒を破ることになります。

大乗仏教ですと、六波羅蜜という修行の「精進」(努力すること)に反するものです。

そして、仏教では中道といって、行動することを求めながらも、あまりストイックに思い詰めず、均衡と調和のとれた生き方をするという教えです。

要するに、「教材」である神様が仏教の教えに反しているので、捨てられてしまうわけです。

吉田ひろゆきさんは、仏教の教えをモチーフとしているんだなあと思いました。

人生とは一切皆苦

アマゾンのレビューでは、最終話として収録されているラブバードの話も好評のようですね。

あらすじは伏せますが、孤児でいじめられ、世間に対して心を閉ざしていた青年が、亡くなった両親の声を聞くことで涙を流したシーンがあり、たしかに胸熱でした。

それ以外にも、ハツラツと生きていたのに植物人間になってしまった息子の父親が、不遇な青年に息子の記憶を焼き付けて、息子に成り代わって生きてもらうことを求める話。

善行を重ねた父親から、その功徳を「回向(振替)」してもらった息子が、本当の父親ではないことを父親が末期がんになったときに知るなど、泣けてくる話ばかり掲載されています。

ある話には、人生に失望して望みを持たない青年が、「今のオレの願いはただひとつ…この世に何の痕跡も残さず、独りで静かにシんでゆくことさ」とケツをまくるシーンがあるのですが、なんとなく気持ちはわかったりして。

社会に爪痕を残したいと前向きに頑張ろうとする気持ちの一方で、あまりに不運が重なると、そんならもうどうでもいいやと、なんて思うことってありませんか。

私のところに、教材もってきてくれないかな(笑)

いずれにしても、人生というのは一切皆苦だなあ、と、本作にはつくづく仏教の教えを感じるわけです。

kindle unlimitedの読み放題リストに含まれています。

お勧めの一冊です。

以上、幸福ノ學習社完全版(吉田ひろゆき、電書バト)は、「世の人々を幸福に導く」幸福ノ學習社が、不遇の人生を送る人々を助ける話、でした。

幸福ノ學習社 完全版 - 吉田 ひろゆき
幸福ノ學習社 完全版 – 吉田 ひろゆき

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