『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』(大村大次郎著、宝島社)は、元国税調査官が領収書から税金と経理のウラを語ります。「お布施」は経理上も不透明で税金もかかりません。「住職の80%程度は脱税をしている」と本書では指摘しています。
税務署と坊さんとのたたかい
学生時代、税法の講義だったと思いますが、税金はとられるものではなく国民が主体的に納めるものだ、という話を聞いたことがあります。
たしかに、確定申告は、収入は○円で経費は○円だから税金を○円納めます、と納税者が自分で計算して申告しています。
ただ、それですと、納税者が税金を払いたくなくて、正確な収入を隠してしまうことがあります。
その問題で最近話題に上っている書籍が、税務調査時に8割以上が税金を誤魔化しているといわれる「超不良業種」の「坊さん」をターゲットにした『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』(大村大次郎著、宝島社)です。
著者は元国税調査官で、2007年に『そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか?』という本を上梓しており、今回は改訂版です。
つまり、本書のタイトルは「お坊さん」ですが、坊さん以外にもあてはまる領収書と経理の話、というわけです。
そして、目次でおわかりかと思いますが、同書は「坊さん」はマクラで、主役は税務署といっていいかもしれません。
1章 領収書は脱税のパスポート(1~12)
2章 知らないと損する領収書の秘密(1~13)
3章 税務署は領収書がお好き(1~11)
4章 領収書にも時代の波(1~9)
5章 その領収書、大丈夫?(1~11)
6章 領収書は語る(1~6)
タイトルの『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』という問いの答えは簡単で、お布施や寺の固定資産などは、憲法20条や法人税法第4条によって非課税になっているからです。
住職はお布施をもらっても領収書を発行しませんから、住職はいくら懐に入ったかを隠せます。
駐車場や幼稚園など宗教活動以外の事業についても、収入の20%が課税対象外の上に、税率も22%(通常の法人が30%)と優遇されています。
税務署はそれに対して、檀家帳や葬儀・法事の予定メモなどからその寺の規模をチェック。おおよそのお布施収入を見積もれるそうです。
1章~6章では、領収書にまつわるエピソードで会計や税金のしくみを解説しています。
自営業者はぜひ知っておきたいことも書かれています。
たとえば、領収書は「上様」やレシートではダメだといわれますが、実際には「上様」でも使えるし、レシートどころかメモでも構わないそうです。
こういう話が巷間にきちんと伝わっていないのは、経費を少なくしたい税務署の意向があるのかな、などと勘ぐりながら読みました。
ただ、大村大次郎さんは元国税調査官だけに、この方面では詳しいのですが、逆にこの方面しか書けず、他の著書も同じようなことしか書かれていない、と指摘するレビューもあります。
ですから、すでに大村大次郎さんの著書を読まれたことのある方には、重複する部分が多いと感じられるかもしれません。
余談ですが、私がたまに使う無人のコインランドリーには、白紙の領収書がおいてあります。
使いたい人は、好きなだけ持っていけ、といわんばかりに。
慌てものの私は逆に、もらいそこねることがありますが、極端に言えば、利用しなくてもその領収書だけもらっていくこともできます。
さすれば、不正は必然的に起こってしまいます。
すべての支払と受領が紐付いていない限り、そうした矛盾はつきものなので、結局は納税者の良識・良心に依拠するものかもしれません。
墓建立は必要経費にならなかった
我が家の話ですが、15年前に墓地を確保し墓を立てましたが、「費用は経費にならないのか」と一応尋ねたところ、墓業者に「供養なのですから、そういうことは考えないほうがいい」とたしなめられました。
仏のことで金の話は罰当たりらしい。
でも、住宅控除はあるのに、墓の控除がなかったら、墓文化は廃れますね。
そうしたら、電車の中にお骨を意図的に忘れるとか、投棄が増えるかもしれませんよ。
いずれにしても、坊さんのお布施は額も不明で、支払う側は経費・控除としても認められない、というのはやはり釈然としない気がしませんか。
サラリーマンの収入は源泉徴収でしっかり取られるのに、寺院や宗教団体の金銭は不透明。
その解消には、宗教法人に課税することだ、といわれます。
本書にもそれは書かれています。
私も、宗教を保護することは否定しませんが、社会における営みである以上、個人や企業や団体がそうであるように、社会を維持する応分のコスト負担はあってもいいのではないかなとは思います。
なぜ、宗教だけが特別扱いなのでしょうか。
人の心や暮らしを守る分野は神社仏閣だけではないと思います。
以上、『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』(大村大次郎著、宝島社)は、元国税調査官が領収書から税金と経理のウラを語ります、でした。
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