『卵を食べれば全部よくなる』(佐藤智春著、マガジンハウス)は、たんぱく質、ビタミン、ミネラル豊富な完全栄養食の効用を説いています。たとえば、うつ、メタボ、動脈硬化、認知症の予防に効果があり、食べすぎてもコレステロールの心配はないといいます。
スーパーなどで売っている市販の卵1個(Mサイズ・正味50g)に含まれるタンパク質は、約6.1gといわれています。
一方、同じ体積でみると木綿豆腐一丁は3.5gにとどまっています。
卵(鶏卵)は、安くて高タンパクの完全栄養食なのです。
卵はコレステロールを上げる説は取り下げられた!
『卵を食べれば全部よくなる』の著者は、血液栄養診断士を標榜する佐藤智春さんです。
分子整合栄養医学協会が認定している資格といいます。
分子栄養学とは、栄養素をバランス良く摂ることで健康状態を維持・改善するという立場です。
ですから、『卵を食べれば全部よくなる』では、毎日卵を食べてカラダに起こる健康効果を解説しています。
佐藤智春さんによると、人間が健康でいられるには、老若男女を問わず、たんぱく質をどれだけ摂っているかにかかっているとか。
人間の細胞は、たんぱく質でてきていますからね。
そのためにもっとも適した食材が、安くていろいろな食べ方ができて、栄養のバランスが抜群の完全食である鶏卵と述べているのです。
ただ、卵については、栄養豊富な食材であることを否定する人はいないでしょうが、これまでは1日1~3個程度にとどめたほうがいいといわれてきました。
それを超えると、コレステロールが上がるとか、心疾患のリスクがあるといった話もありました。
しかし、そのような科学的根拠はなく、2015年には鶏卵は高コレステロール警告食品のリストから外れています。
というか、厚生労働省は2015年、日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値自体を撤廃しています。
『卵を食べれば全部よくなる』が上梓されたのはその前年ですが、1章(19ページ)分費やして、その“誤解”を解こうとしています。
鶏卵はコレステロール値を上げるどころか、逆に生活習慣病を予防すると書いているのです。
曰く、本来コレステロールは体に必要なものであり、数字の評価はそのバランスから見るものである。食べ物で作られるコレステロールは3分の1であり、それ以外は肝臓で造成されるので、コレステロールが異常に高いのは食べ物ではなく肝臓など別な問題がある。
これは、現在の医学では常識となりました。
本書は医学の常識より一足早く、そのことを教えてくれたわけです。
高齢者こそ鶏卵を摂取すべき
佐藤智春さんは、20代の頃、体を壊して体重が39キロまで減ったものの、鶏卵を1日10個食べる生活を1年続けたら元に戻ったといいます。
黒柳徹子さんや、亡くなった森光子さんらは、鶏卵を摂取することを公然とさせていましたが、たしか森光子さんの場合、1日7個とか8個といった数でした。
佐藤智春さんの10個は、それをも上回っているわけです。
そういう体験があるからこそ、食べ過ぎを心配することなく鶏卵を勧められるのでしょう。
佐藤智春さんが推奨しているのは、1日3日の鶏卵の摂取です。
卵1個で7グラムのタンパク質がとれるので、3個がお勧めなのだそうです。
ボディビルダーやスポーツ選手など、体を作るために鶏卵をたくさん摂取する人がいますが、黄身を抜いて、白身だけたくさん食べるケースをよく聞きます。
しかし、佐藤智春さなんは、その食べ方は勧めていません。
あくまでもまるごと、むしろ鶏卵の栄養素は卵黄の栄養(レシチン)を重視しています。
卵で栄養を摂る生活をすれば、うつ、メタボ、動脈硬化、認知症などの予防になり、肌の艶や薄毛の対策になるとも述べています。
ただ、高齢者というと食が細くなっていくイメージがあり、卵をどんどん摂取して食べすぎにならないのでしょうか。
いえ、佐藤智春さんは、高齢者でも、もとい高齢者こそ卵をどんどん食べなさい、と説いています。
むしろ高齢者で量質ともに食べ物を受け付けなくなった時だからこそ、バランスよく栄養を摂れる卵が必要なのだそうです。
本書はさらに、年代別に、必要なたんぱく質の量となぜ必要なのかの理由も解説されています。
たとえば、1~3歳は、レシチンとコレステロールで脳が発達するから、また21~37歳は、ストレスや不妊にいいのだそうです。
ては、どうやって鶏卵を食べればいいのか。
料理のメニューや食べ方なども紹介しています。
1日に卵を3個食べてもダイジョーブ!?
本書には記載されていませんが、本書の標榜を裏付けるものとして、卵は食べすぎると体に良くない説を反証する報告もご紹介しましょう。
『日刊ゲンダイ』(2018年6月18日付)の連載、『役に立つオモシロ医学論文』で、著者の青島周一さんは、英国循環器学会誌の電子版2018年5月21日付掲載の「卵の摂取量と健康への影響を検討した研究論文」を紹介しています。
それによると、中国に在住している心臓病や糖尿病を有していない46万1213人(平均50.7歳)について、過去1年間における卵の摂取量をについて調査。
「毎日摂取」「週4~6日摂取」「週1~3日摂取」「月1~3日摂取」「ほとんど摂取しない」の5つの集団にグループ分けし、結果に影響を与え得る社会人口学的特徴や生活習慣などの因子で統計的に補正を行い、心臓病、脳出血、脳梗塞などの発症リスクを比較したところ、次のような結果になったそうです。
要するに、「卵を食べる」行為にあたる人々が、心臓病の、脳出血、脳梗塞の数字を減らしている、という結果が出たわけです。
もちろん、後ろ向き調査の限界はあり、交絡因子なども明らかではありません。
ただ、少なくとも卵を3個食べたからと言って悪くはならなかったということです。
今後引き続き有望な報告が期待できる研究につながるものであることは間違いありません。
スーパーで売っている鶏卵は孵化するか?
余談ですが、スーパーで売っている卵は、孵化すると思いますか。
結論から述べると、孵化する可能性がある場合としない場合があります。
する可能性があるのは、鶉卵(うずらの卵)です。
20個に1個程度、有精卵が混ざることがあり得るのです。
一方、今回話題にしている鶏卵は、有精卵は混ざりません。
鶏は、うずらに比べて雄雌の違いがわかりやすいため、採卵場でメスの中にオスが混入することは通常考えられないからです。
ま、今回話題にしている卵の栄養価とは、直接関係ない話ですけどね。
以上、『卵を食べれば全部よくなる』(佐藤智春著、マガジンハウス)は、たんぱく質、ビタミン、ミネラル豊富な完全栄養食の効用を説く、でした。
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