『LaTeX2ε美文書作成入門』(奥村晴彦,黒木裕介著、技術評論社)が、いよいよ[改訂第8版]として14日発売になります。TeX、LaTeXの概論、使用アプリのインストール、コマンドの解説など、LaTeX2eに関する入門書&リファレンスマニュアルです。
LaTeXとはなんだ
LaTeXをご存知ですか。
Windowsになって、Wordなどアプリケーションソフトは、ディスプレイに現れる入力した文字と印刷結果が一致するWYSIWYGといわれる技術によって、ユーザーにとっては大変便利になりました。
しかし、そのような便利な時代でも、その前から使われていた、学術論文をはじめとした文章の組版のマークアップ言語が根強い人気です。
マークアップ言語というのは、視覚表現や文章構造などを指定するためのプログラム言語の一種で、たとえばサイトを構成するためのHTML言語も、マークアップ言語の一つです。
つまり、サイトを作るHTML言語のように、テキストデータに独自のタグ(コマンド)をつけることで、論文の体裁を整えたり、活版印刷(商業書籍や雑誌)のようなきれいなレイアウトにしてくれたりします。
その文章組版用のマークアップ言語がTex(テフ)といいます。
そして、LaTeXというのはTeX(テフ)のマクロパッケージです。
「2ε」とついているのは、LaTeXが発展したものです。
マークアップというと、htmlのように、もとになるデータにコマンドを入れてコンパイルする広義のプログラム言語のため、Wordのように直接仕上がりを見ながら作っていくのに比べると、難しく感じるかもしれません。
「面倒そうだから、Wordでいいよ」
と、尻込みしてしまいますか。
もちろんWordに限らず、既存のアプリで間に合っているなら何よりだと思います。
ただ、ワープロやエディタソフトなどは、文字送り、改行、見出しサイズなど、レイアウトの核となる約束事が不適切で、あまりパッとしない仕上がりにがっかりしたことはありませんか。
かといって、自分が見出しの大きさを設定したり、適切な空白を開けたりしてもうまくできるとは限りませんし、何よりそこまで行うのは面倒です。
箇条書きに挿入や削除を行うときなど、もし途中の一箇条を消したり、逆に追加したりしたら、番号を変更しなければなりません。
「このことは何ページの何行目で書きました」という説明を行うときも、加筆修正で行数が変わってしまうと、また手動で数え直さなければいけませんね。
LaTeXでレイアウトを指定すると、それらは自動的に調整・変更してくれるのです。
大変便利だと思いませんか。
本書『LaTeX2ε美文書作成入門』には、そのマーアップ言語が紹介・説明されています。
どんなOSでも無料で使える
TeXとLaTeX、およびその関係について、もう少し触れておきます。
TeXは 1978年にDonald Ervin Knuth(数学者)によって開発された、フリーの組版システム(ソフト+マークアップ言語)です。
つまり、誰でも無償で自由に使ってよい、ということです。
さらに、OSも問いません。
TeXができたときは、Windowsは開発されていませんでしたが、その前のMs-dosはWYSIWYGではなかったので、大変有用でした。
また、OSを問わないということで、TeXは、Mac、WindowsなどどんなOSのどんなマシンでもデータを作成でき、またどんなOSのどんなマシンでも同じ表示がなされます。
たとえば、Ms-dos搭載マシンで作成したデータを、Macで読むということもできました。
そのTeXを、より高度に使うためにに、いくつかの命令を組み合わせたマクロ体系がいくつか作られましたが、そのもっとも有名なものが、1985年にLeslie Lamport(数学者)が発表したLaTeX(ラテフ)といいます。
繰り返しになりますが、現在は、LaTeX2eという、バージョンアップされたマクロが使われています。
LaTeXによって、誰でも(デザイナーや印刷業者でなくても)、見出し部分に統一感をもたせたり、文字列と飾り枠にきれいなデザインをもたせたりなどを実現してくれます。
たとえば、微分・積分の数式などはWordでも作成できますが、数字の大きさや配置などは必ずしもベストとは言えません。
しかし、TeXを使えば、教科書に出てくるような整った数式を表示できます。
章・節・図・表・数式などの番号は自動的に付けてくれ、文章の加筆修正でその構成が動いても、作成者が手動で直す必要なく、LaTeXが自動的に番号を振り直してくれます。
目次・索引・引用文献のレイアウトも自動的に行なってくれます。
理系の学会や出版社は、LaTeXで組版したもので印刷されていることが多いのです。
私は以前、ある学術系団体の雑誌編集を行っていたのですが、その会の機関誌は、通常はDTPソフトでレイアウトすることになっていました。
DTPソフトですと、数式が入るとなにかおさまりが悪いような気がして、投稿論文の中には数式の入ったものがある場合、数式部分はLaTeXで作ってEPSデータとして画像化して書き出し、DTPソフトに貼り付けていました。
それは、その団体が文系も理系も混在する学際系だったからそうしたので、TeXデータを受け付けてくれる印刷業者なら、そのような面倒なことをしなくても、データを全面的にTeXデータでお願いできます。
字間や字送りがきれい
ユーザーの多くは、とくに理系のリポートや論文を書く学者や学生です。
ただ、組版は何も学術系だけでなく、一般の書籍や雑誌、パンフレット、チラシに至るまですべてに関わってくることです。
げんに、TeXで作られた商業書籍や教科書もあります。
ということは、LaTeXによって、これまでWordで作っていた、企画書やサークルの会報のデータを、業者にお金を払わずとも自分自身でより精緻なデザインに仕上げることができるわけです。
これは、これは「jarticle」という、学術誌の紀要のデザインを使っています。
文字のサイズはデフォルトですが、大きくも小さくもできます。
EastTeXというフリーソフトのTeXエディタでデータを作成します。
見出しの番号は自動的に振られています。
脚注も自動で欄外に番号付きで配置されます。
Wordの場合、数字やアルファベットと日本語の間隔が妙に広くなることがありますが、LaTeXはきれいに収まっています。
得意とするのはテキスト主体の文書ですが、アドレス帳や時刻表、挨拶状、サークルのお知らせなど、ペラモノのデザインレイアウトも可能です。
Wordのテンプレートで作るのとはひと味もふた味も違う、本格的なデザインです。
無料で商業出版並みのクォリティを出力できるので、文書の作成と印刷の機会が多い方なら、ぜひおすすめしたいシステムです。
LaTeXのリファレンスマニュアル
『[改訂第8版]LaTeX2ε美文書作成入門』(奥村晴彦/黒木裕介著、技術評論社)は、TeXとは、そしてLaTeXとは何かといった概論、使用するソフトウェアのインストール、コマンドの解説など、LaTeX2eに関する入門書として、またリファレンスマニュアルとして利用できる書籍です。
ネットでもある程度情報はありますが、何もわからないうちはどこのサイトをどう利用するのかわからないものです。
初心者が効率よく、LaTeXを使うことを助けてくれる本書をご覧になって進めれば、うまく使いこなせるようになるでしょう。
以上、『LaTeX2ε美文書作成入門』(奥村晴彦,黒木裕介著、技術評論社)入門書&リファレンスマニュアルいよいよ改訂第8版発売、でした。