マイケル・サンデル教授先生の『実力も運のうち』で、オバマ氏の「努力は必ず報われる」が社会の分断招いたという指摘が話題です。中村佑子さんが書評で解説していますが、努力による「功績」偏重社会の奥底に眠る人間の奢りをあぶりだしています。
多様な社会的階層に大学の門戸を開くことや多様性教育が大切
もとの記事は、VOGUE。
『オバマ元大統領の罪深さを突く。マイケル・サンデル著『実力も運のうち 能力主義は正義か?』【VOGUE BOOK CLUB|中村佑子】』というタイトルです。
今回で3回目になります。
今回の標的は、オバマ大統領です。
メリトクラシー=能力主義への批判、つまり努力して学歴や功績を勝ち取った者こそが社会の中枢に居座り、人々のトップに立って当たり前である、ということへの批判をぶつけ、学歴偏重社会の奥底に眠る人間の奢りをあぶりだす。
記事では、社会学者の本田由紀さんが、メリトクラシーの訳語は「能力主義」ではなく「功績主義」の方が、適切ではなかったかと指摘していることを紹介。
能力主義は生まれ持った才能を称揚しているのだと混同されやすいですが、サンデル先生が本書で批判しているのは、むしろ「功績」、つまり何らかの才能や努力によって獲得された「功績」を、当然と思う心持ちを問題視しているからです。
オバマ元大統領の罪深さを突く。マイケル・サンデル著『実力も運のうち 能力主義は正義か?』【VOGUE BOOK CLUB|中村佑子】
オバマ元大統領の罪深さを突く。マイケル・サンデル著『実力も運のうち 能力主義は正義か?』【VOGUE BOOK CLUB|中村佑子】https://t.co/tNY42WFIW0— 石川良直 (@I_yoshinao) June 10, 2021
オバマ元大統領の、“You can make it if you try.(挑戦し努力すれば、夢は叶う)”という演説について、サンデル先生は批判の矛先を向けます。
オバマは、妻のミシェルが労働階級の生まれから、努力して高等教育を勝ちとった功績の人だと称え、高い学力を得た人間がしかるべき地位につくよう、政策を整えた。この一見、良い話として疑問を持ちにくい話を、サンデルは、オバマの考え方の背後には才能主義があり、努力によって勝ち得た功績を、本人が独占的に享受して当たり前だとする考え方、つまり学歴差別につながるような、そこに至らなかった人々を排除する構造が潜んでいると指摘する。その舌鋒の鋭さにドキリとする。
この辺は、前回ご紹介したように、「エリート」を焦らせる指摘でありますが、それだけでなく、どちらかとうと学歴とは無縁の人にも理解してもらいにくい話だったようです。
つまり、「努力するのはすばらしい」「その人の成功は努力である」というイデオロギーが刷り込まれているんでしょうね。
でも、エリートはともかく、そうでない人はそうでない自分を顧みればわかると思うんですけどね。
ちょっと引用が長くなりますが、大事なところなので、やはりそのまま書きます。
本来学歴や、努力の末の「功績」を得られなかった人々は、努力が足りないのではなく、生得家庭の社会経済的な状況により、努力できる環境が整っていないという場合も多い。やる気や意思というものが生活の質に左右されるものならば、努力できる環境をそもそも奪われている。学歴を高めたくても、経済的に困窮し、物理的に勉強する時間が取れなかったり、どうやったら学歴を獲得できるのか、周りに功績を得た人がおらずその道筋がわからない人もいるだろう。そうした人々とっては、「努力すれば報われる」「努力が足りない」というワードは、どこか絵空事に聞こえ、自分が住んでいる世界の言葉ではないように感じることだろう。
サンデル先生は、能力や努力それ自体を否定しているのではなく、「ほしのもと」の不公平の影響を述べているのです。
「人種だけでなく多様な社会的階層に大学の門戸を開くことや、生涯学習の重要性、またエリート校での多様性教育などに未来の解決策を見る」としています。
さらに記事では、「サンデルは、オバマに見るようなエリート主義が、社会的功績をどうしても得られない人々からの反感と悲壮感を買い、結局そのエネルギーがトランプを生み、イギリスのブレグジットを生んだと分析する。」と書かれています。
トランプ支持層が、「低学歴」「低所得」層のルサンチマン、という寄稿もあります。
「私は低学歴の人たちが好きだ」このひと言がトランプを大統領に導いた 「暴言ともいえる本音」が心をつかむ #POL https://t.co/sYgsvZTPHF
— 石川良直 (@I_yoshinao) June 10, 2021
翻って日本。
東大出で、養子縁組を繰り返して「名門」を守る岸・佐藤一族の血を引きながら、学習院でも早慶でもMARCHでもない私大エスカレーターの安倍晋三さんの人気につながるところがあるのかもしれないと思いました。
もっとも、一般の受験生からすると、成蹊大学も合格するのは容易ではないんですけどね。
安倍晋三さんが東大でなくてもそこに入ったということ自体「ほしのもと」ということでしょう。
新自由主義が国内を蹂躙して戦後最悪の格差社会に成り果てた
Web掲示板のスレッドです。
【マイケル・サンデル教授】「努力は必ず報われる」と訴えるオバマ氏のようなリベラル系エリートが社会の分断を招いた。 [ボラえもん★]
https://t.co/NIr7LfyKSp pic.twitter.com/Lk0Fv3ZAZ9— 石川良直 (@I_yoshinao) June 10, 2021
主なコメントを引用します。
5ニューノーマルの名無しさん2021/05/30(日) 20:49:25.15ID:+ii0yAsQ0
リベラルって
努力しなくてもいい
みんな違ってみんないい
って言ってるイメージなんだけど35ニューノーマルの名無しさん2021/05/30(日) 21:00:22.88ID:dJoE+VZN0
終身雇用、年金だけで老後安泰、世界一手厚い社会保障制度
かつての日本は皮肉も込めて「世界で唯一成功した社会主義国」と言われたものだが
現在の日本は新自由主義が国内を蹂躙した結果、戦後最悪の格差社会に成り果てたな55ニューノーマルの名無しさん2021/05/30(日) 21:09:28.25ID:FIP5NBOI0>>86
>>1
思想的には完全にヨーロッパの民主社会主義に当たる考え方だな
簡単に説明しておくと、資本主義と市場の原理によって発生する格差の問題を
平等主義や博愛主義の観点から批判し、より理想に近づけようとする思想を社会主義といい
マルクスが登場するまでは、社会の改良を通じて理想の実現を図る現実主義的な手法を用いていた
これがマルクスが出てきた事で社会主義と共産主義が合体したわけだが
冷戦期に西側の社会民主主義政党が脱マルクス主義を図って改良主義に回帰して
それが欧州社民とか、アメリカで民主社会主義と呼ばれるものになってる
マルクス主義や共産主義とは思想的な系譜の面で全くの別物なので、その点は注意が必要88ニューノーマルの名無しさん2021/05/30(日) 21:22:16.15ID:T/2fd7On0>>98>>102
努力が報われることなんてあるの?
努力なんて皆んなしてるよ
朝から晩まで働いて会社倒産しましたなんて良くある話
報われなくてもするしかない90ニューノーマルの名無しさん2021/05/30(日) 21:22:23.45ID:RpIbAis60>>99>>107>>593>>596>>952
東大卒だが、「勉強すれば皆入れますよ」って言うけど、本音では限られたスペック(遺伝)×一定以上の学習環境がないと無理と思ってるよ。
そう言ったら嫌われるから言わないだけで。
東大の数学の問題見てみな。
バカが30年勉強しても部分点も取れないから。そこを理系だったら2問/4問完答するとこから競争だからね。99ニューノーマルの名無しさん2021/05/30(日) 21:29:06.55ID:jxYh+1nv0
>>90
それが理解できないほど何も分からない人が多いからね
東大卒でも自分が教えられた以外のことを理解することって難しいし
バカアホとかではなくて、洗脳とか刷り込みとか人間の脳の欠点なんだよね
ということで、いいろ意見はあります。
あなたは、「実力も運のうち」という言い方には反発しますか。
以上、マイケル・サンデル教授先生の『実力も運のうち』で、オバマ氏の「努力は必ず報われる」が社会の分断招いたという指摘が話題、でした。
実力も運のうち 能力主義は正義か? – マイケル サンデル, 鬼澤 忍
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