「学歴は努力の結果だと思っていた…」サンデル先生の『実力も運のうち能力主義は正義か?』が心中穏やかでないエリートが続出という記事が話題です。お勉強社会が公平さを欠いているという指摘に、自分の努力を否定されたような気がしているらしいのです。
「実力主義はフェアである」という信仰
もとの記事は、現代ビジネスオンライン。
『サンデル先生の新刊に「心中穏やかでないエリート」が続出している理由』というタイトルです。
『お勉強がもたらす「分断」の深淵』というサブタイトルで、御田寺圭さんの署名記事です。
内容は、「実力も運のうち」という“親ガチャ”サンデル先生の指摘が我慢ならない人がいる、という話です。
先日、マイケル・サンデル氏の新著『実力も運のうち 能力主義は正義か?』をご紹介しました。
内容は、
- 子はどんな親から生まれるかを選べない
- 子はいかなる人生を歩むにしろ、親の経済力、人脈、価値観、文化水準といった「ほしのもと」を前提とする生き方から逃れられない
という、ごくごく当たり前の話です。
が、人間というのは自己愛あふれる弱いもので、その当たり前のことが受け入れられないようです。
マイケル・サンデル氏の新著『実力も運のうち 能力主義は正義か?』が日本でも大ヒットし、瞬く間に数万部を超えるベストセラーとなった。「公平」を建前とする能力主義の欺瞞的な本性を白日のもとに晒す同著の内容と、そのセンセーショナルなタイトルに対する反応を観測するかぎり、心中穏やかではない人も少なくないようである。
記事はそのような書き出しです。
サンデル先生の新刊に「心中穏やかでないエリート」が続出している理由 @gendai_biz https://t.co/8SeLUqlQzO #現代ビジネス
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) May 29, 2021
「日本においても、高い学歴をもつエリートの多くは、この「能力主義」=「学歴主義」のイデオロギーを何の違和感もなく受け入れている」が、「実力も運のうち」というサンデル先生の指摘によって、まるで自分が頑張ってきた「努力」や「価値観」が否定されるような思いをするようです。
「学力・学歴による序列化構造は公平な競争であり、劣位におかれた人は上位になれる努力を怠った人びとである」から、「彼らが自分の現状に対して不満を言ったりするのは不当である」という結論までは「わずかな距離しかない」と著者。
いや、そうじゃなくて、そもそも学力競争は「フェア」なのか?
そう著者は問うています。
親が高年収で、塾に行かせることができたり、また親自身が高年収を裏付ける社会的地位だったりする家庭だからこそ、受験戦争に参加し、そこを勝ち抜ける前提を与えられている、というのは、過去に複数の統計があるのですが、「エリート」たちはそれでも認めようとしないのです。
経済格差が拡大しても、「エリート」たちは、「どうして努力を怠って劣位に転落したやつを救ってやらなければならないんだ」と、本気で考えているのです。
そういう奴は、とっとと病気や怪我で障害者手帳をいただくことになれば身にしみてわかるのだと思いきや、世の中は天網恢恢祖にして漏らしまくりなので、わからず屋だから天罰で痛い目にあう、などと童話のような都合の良い顛末にはなかなかならない、というか、なっても気が付かないんですね。
記事では、いくら学力・学歴社会がほんとうの意味で公平でなかったとしても、その「お勉強」によって味わってきた主観的な《つらさ》は、紛れもない本物だから、それを否定されてしまうような指摘は受け入れられないのだろう、と見ています。
私は、そりゃ、やっぱり否定するほうが正しいだろうと思いますね。
だって、サンデル先生は個々の人たちの《つらさ》という努力の事実を否定しているわけではなくて、「実力社会」という構造に公平さを欠いている前提がある、と述べているだけでしょう。
それがわからないのは、読解力がなさすぎです。
努力する為の基盤が親頼みだろ
Wwb掲示板のスレッドです。
【社会】「学歴は努力の結果だと思っていたのに…」 サンデル教授新刊ベストセラーで「心中穏やかでないエリート」が続出 [ボラえもん★]
https://t.co/c30y20cVHk pic.twitter.com/ejmAd9JbvM— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) May 29, 2021
主なコメントを引用します。
6ニューノーマルの名無しさん2021/05/29(土) 15:45:15.46ID:8/H+71MY0
サンデル頑張れ8ニューノーマルの名無しさん2021/05/29(土) 15:46:06.69ID:xXjXuJaG0>>15
学歴は地頭と環境で9割は決まるわな地頭悪いとどうしようもないし
普通の頭してたら義務教育の勉強なんかでつまづかないからな11ニューノーマルの名無しさん2021/05/29(土) 15:46:58.67ID:c56nz2u90
自分が1番偉いと思ってるならそれは病気17ニューノーマルの名無しさん2021/05/29(土) 15:48:18.53ID:LXq9+rTm0
その私立校に行けたのは親のおかげということを理解してないバカ20ニューノーマルの名無しさん2021/05/29(土) 15:48:38.92ID:uE3ZnBhI0
お前が努力できたのはお前の努力とは関係ないところで恵まれていたからだって話だろ26ニューノーマルの名無しさん2021/05/29(土) 15:50:17.13ID:u5NMNvUi0>>33>>50
サンデルさんはその代わりどうすべきだって提言してるのかな?28ニューノーマルの名無しさん2021/05/29(土) 15:51:06.31ID:AIIcuVaZ0
努力する為の基盤が親頼みだろ
親ガチャに負けると基盤なしで勝負するから大変だし33ニューノーマルの名無しさん2021/05/29(土) 15:53:07.07ID:8/H+71MY0>>52
>>26
民主党左派の理論的支えとされるサンデル先生
具体的には大学教育の無償奨学金の拡大、教育ローンの負担軽減
社会人教育の拡充というサンダース政策が答えだろうね
ということですが、ここで注目したいのは「33」です。
私は、アメリカの政治には疎いので、サンデル先生の政治的意図はわかりません。
ただ言えることは、「実力社会も運がある」というのは、「学歴を実力とする社会」の構造を分析した、イデオロギーではなく学説です。
ステファニー・ケルトン教授のMMT(現代貨幣理論)と同じで、従来の価値観をひっくり返す学説ということです。
MMTは「地動説」、理解できないで古典派経済学を信じ込むことは「天動説」などと、しばしばたとえられます。
それと同じで、「実力(社会)も運のうち」という考えに立つ人は「地動説」、「実力社会は公平な本人の努力」と考える人は「天動説」というふうにたとえられるように思いますが、いかがでしょうか。
実力も運のうち 能力主義は正義か? – マイケル サンデル, 鬼澤 忍
実力も運のうち 能力主義は正義か? [ マイケル・サンデル ] – 楽天ブックス