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安倍晋三元総理が、「日銀は政府の子会社」と発言したことが問題になりましたが、私は巷間とは少し違う意味で疑問に思いました

安倍晋三元総理が、「日銀は政府の子会社」と発言したことが問題になりましたが、私は巷間とは少し違う意味で疑問に思いました

安倍晋三元総理が、「日銀は政府の子会社」と発言したことが問題になりましたが、私は巷間とは少し違う意味で疑問に思いました。日銀は子会社だから借金しても返さなくていいと積極財政を唱えるなら、なぜ安倍サンは総理在任中に消費税を2度も増税したのでしょうか。

政府が支払う利息は政府に返納される仕組み

2022年5月9日、大分市で開かれた会合で安倍晋三元総理は、1000兆円の政府債務のうち、半分は国債の形で日銀が購入しているとしたうえで、「日銀は政府の子会社なので満期が来たら、返さないで何回借り換えてもかまわない。心配する必要はない」と話したことが話題になりました。

話題、というより問題、と書いたほうがいいでしょう。

まず、「統合政府」という見地からは、「子会社」はものの例えではないか、としか私には思えません。

親会社の借金を傘に来て、子会社が親会社を潰すということはありえないですからね。

だから積極財政はできるし、「孫子の代につけを残す」というのも違うだろう、という話です。

たとえば、公債を発行すると、利息が生じます。

しかし、政府が日本銀行に支払う性質のものです。

日本銀行の余剰の利益は、国庫に返納されます。

つまり政府が支払う利息は、そのまま政府に返納される仕組みです。

それをもって「子会社」といったんでしょう?

以前、『『現代貨幣理論(MMT)って何?【素人の素人による素人のための経済入門】』という針原崇志さんの動画はわかりやすくて好評です』という記事を書きました。

『現代貨幣理論(MMT)って何?【素人の素人による素人のための経済入門】』という針原崇志さんの動画はわかりやすくて好評です
『現代貨幣理論(MMT)って何?【素人の素人による素人のための経済入門】』という針原崇志さんの動画はわかりやすくて好評です。全10回、まとめ1回によって、現在流布している経済の話の間違い、お金の意味や価値、社会のお金の出回り方などが解説されています。

この動画を見ると、お金を通した、政府、日本銀行、一般の銀行、企業や人、などの関係がわかると思います。

まあ公人が「子会社」と表現したことの是非は別として、ものの例えとしてはあり得る発言なんだろうと思います。

先日、私の地域の女性区議会議員が、ブログでこういうことを書いていました。

>国の累積債務は1000兆円を超えて
>私たちは、債務の利息の負担に悩まされているわけです。


えー、私たちは、いつ「負担に悩まされている」のでしょうか。

そんな請求が来たことはありません。

そこで私は、当該ブログの一部を引用し、西田昌司議員のYouTubeチャンネル『週刊西田』に質問してみました。

私たちは「利息の負担」をどこでしているのでしょうか。
もし本当なら、政府の発行する公債の利息を、どうして国民が負担しなければならないのか疑問です。

すると、西田昌司議員は2022年5月5日、「国債は借款債で変換されるので大丈夫」という動画の配信でご回答くださいました。


当該ブログ自体が、ちょっと意味不明の書き方のため、それを引用した私までトンチンカン扱いされてしまいましたが、要するに「政府の発行する公債の利息は国民は負担しない」という回答です。

繰り返しますが、「国民は負担しない」ことと、それをもって公人が「子会社」と呼ぶことが妥当かということは、また議論していただくとして、第一義的に突っ込むべき箇所はそこではないと私は思うのです。

積極財政派だったらどうして消費税を2度も増税したのか

「子会社発言」はもののたとえだろうと書いた私ですが、では安倍晋三元総理の発言は全く問題ないかというと、そうともいえません。

ひとつは、公債の発行額を増やしても大丈夫、というロジックでその発言を行っているわけです。

つまり、積極財政の立場ということです。

そして、その使い道は、今回のロシアとウクライナの一件に乗じた軍拡です。

それ自体が議論をすべき問題であることとともに、だったら、なぜあんなにムダに長い総理在任期間でそれを行わなかったの、という話です。

無役の気楽な立場では積極財政を言いながら、責任ある立場になるととたんにそれを引っ込める。

それは、安倍晋三元総理だけでなく、麻生太郎元副総理の得意技でもあります。

自由民主党が下野していた時は、「お金なんて刷ればいいんだよ。高橋是清は増税しないで国をたて直した」と言っていました。

麻生太郎財務大臣の変節が改めて問われています。れいわ新選組若者勝手連が野党時代の麻生太郎氏の財政出動を評価する発言投稿
麻生太郎財務大臣の変節が改めて問われています。れいわ新選組若者勝手連が野党時代の麻生太郎氏の財政出動を評価する発言を振り返っています。今から90年前、時の大蔵大臣だった高橋是清が、財政出動して世界的不況からいち早く脱出したことを語っています。

ところが、財務大臣になったら、「MMTの実験場にはしない」などと180度違うことを言い出し、財務省のプライマリーバランス論に屈服しました。

安倍晋三元総理は、MMTをふぐ料理に例えたと言い伝わっています。

岸田文雄総理は、26日の政府答弁で「MMTは採用しない」と述べたことが話題なっています。では、その答弁は実態に即しているか
岸田文雄総理は、26日の政府答弁で「MMTは採用しない」と述べたことが話題なっています。しかし、その答弁自体正しいのか。MMTは現代貨幣理「理論」であり、「政策」や「イデオロギー」は、それをいかなる価値に使うかという話で全く別ものだからです。

そんな人たちが、いまさら積極財政を言ったところで、どれだけの道理と説得力があるというのでしょうか。

しかも、安倍晋三総理は、積極財政と正反対のところにある「消費税増税」を2度も行った総理大臣です。

使えるときに「子会社」として使わなかったくせに、今更何を抜かすか、という話です。

政治家として恥ずかしいですよ、こういう言動は。

ま、それでも熱心な信者は今も多いらしいですから、そういうことはぜーんぶ免罪されてしまうんでしょうけどね。

でも、そんなことやってたら、もう日本はめちゃくちゃになっちゃいますよ。

ダメなものはダメ、矛盾していることは矛盾していると、たとえ支持政党であろうがご贔屓の政治家であろうが、是々非々できっぱり物を申すべきではないでしょうか。

オール・オア・ナッシングのポジショントークからは、何も建設的なことは生み出されません。

以上、安倍晋三元総理が、「日銀は政府の子会社」と発言したことが問題になりましたが、私は巷間とは少し違う意味で疑問に思いました、でした。


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MMT現代貨幣理論入門 – L・ランダル・レイ, 島倉 原, 鈴木正徳, 中野 剛志, 松尾 匡


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