自己破産という文字がこころなしか目につきます。コロナ禍で会社経営や家計が破綻するということでしょうか。その一方で、菅義偉首相の実弟が自己破産後、JR企業の役員に就任していたという報道 (文春オンライン)もあります。自己破産について考えてみました。
必ずしも“貧しいから自己破産”ではない
実弟の菅秀介氏は、東京駅構内のキヨスクを借りて、自前の菓子販売「ヒデ製菓」を開業していたものの、2002年10月に、ヒデ製菓と秀介氏個人は東京地裁から破産を宣告。
51歳の自己破産でしたが、その直後にJR東日本の子会社に幹部役員として入社。
自己破産者が異例の転身ですが、入社を遂げた背景には菅首相と同社の蜜月関係があったことが、ノンフィクション作家・森功氏の取材で分かった、という記事です。
菅義偉首相の実弟が自己破産後、JR企業の役員に就任していた – 「文藝春秋」編集部 (文春オンライン) https://t.co/ggaPrEnM5X
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これがまとめ記事です。
【文藝春秋】菅義偉首相の実弟が自己破産後、JR企業の役員に就任していた [クロ★]
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まあ人の人生として、自己破産しても大きな会社の役員になったことは何よりですが、公人中の公人としての実兄の立場を考えると、懐疑的な記事が出てくるのもやむなしだと思います。
それはともかくとして、自己破産は、慢性的な生活苦の庶民と言うよりも、意外な人が経験していることがあります。
今年の8月に亡くなった岸部四郎さん。
1998年4月6日には、13年半つとめた日本テレビ朝のワイドショー『ルックルックこんにちは』の司会者を番組終了後に突然降板。
自己破産しています。
でも、素人目には意外でした。
『笑っていいとも!』を32年つとめたタモリほどではないにしても、推定年間1億2000万円といわれていたギャラで、13年もの長きにわたって帯番組の司会をしていれば相当な収入であり、蓄財だって可能なはずです。
しかも、岸部四郎さんは業界でも有名な吝嗇家であり、また本人もそれを隠さず、テレビ番組でしばしばその“締まった経済観念”を開陳していました。
それだけに、「ではいったいそのお金はどこにいったのだ」と、当時のマスコミにはいろいろ書かれたものです。前夫人への慰謝料・養育費や、バブル破たんによる事業の行き詰りなどが積み重なったと言われています。
他人の財布を詮索するつもりはありませんが、庶民からすれば、どうしてという思いはあります。
自己破産でリセットする
岸部四郎さんが、『ルックルックこんにちは』と掛け持ちで、テレビ朝日のテレビドラマ『ママ、大変だァ!』(1986年)に出演した時、私もその他大勢の、救急隊なのか白衣を着てタンカで人を運ぶ役で、そのドラマに出た記憶があります。
出番になって控室から出てきた岸部四郎さんは、思ったより体格もよく、ワイシャツをズボンに入れなおしてスタジオに歩いて行ったのを見たのが、実物をお目にかかった唯一の機会でした。
当時の報道では、4月3日に岸部四郎が「手形の具合が悪くなった。月曜日に決済だから、様子を見たい」と担当プロデューサーに申し入れ。
その3日後である6日の番組終了後に「やっぱり金策がつかず、不渡りが出ることになった。
番組に迷惑がかかるので辞めたい」と申し出。局は協議の末、「情報番組の司会としては不適切」と急遽降板を決めた、となっています。
突然の降板だったし、またそうせざるを得ない重大事であると局も判断したようです。
何しろ負債は、3億6000万~5億8000万円まで諸説飛び交い、利息だけで毎月1200万円(1998年4月21日付「夕刊フジ」)といわれていました。
つまり、『ルックルックこんにちは』の1年分のギャラがそのまま利息になってしまう計算です。それではどうにもならなかったのでしょう。
翌年3月に債務の免責が決定しました。
で、問題はここからですが、岸部四郎さんはその後、2002年に個人向け無担保ローン「ビンゴローン」のナレーションで、なし崩しに芸能界にカムバックしました。
もちろん、自己破産したから社会的に葬られるべき、とは思いません。
ただ、お金も返さないまま、同じ仕事にカムバックするのは正直債権者からすれば面白く無いんじゃないかと思います。
岸部四郎さんは破産して“リセット”した後、間もなくして横浜の高台にある60坪の一戸建てに住むようになったといわれますが、債権者の中には、そのトバッチリで、逆にマイホームを諦めなければならなくなった人もいたかもしれません。
それは、少なくとも法人(会社)では許されていません。
法人の債務は、その法人が清算結了(登記上消えること)されたら消え去ます。
そのルールを利用して、たとえば法人事業者の中には、債権者から逃れるためにその会社をいったん倒産させて、別会社を作って同じ仕事をすることがあります。
しかし、債権者は「法人格否認の法理」という根拠で、本来なら免責されてしまう前会社の債権を新会社に求める戦い方があります。
岸部四郎さんが同じ仕事にカムバックしたということは、まさにいったん「倒産」して借金をチャラにしてから、また同じ仕事をしていることになります。
誰かが逃げれば誰かが泣く
昨今、自己破産は「借金を合法的にゼロにする方法」として奨励する声も聞きます。
しかし、1人の「逃げるが勝ち」の自己破産によって、連鎖的に別の人を巻き込むかもしれないこの“リセット”は、無原則に推奨できることなのかどうか、むずかしいところがあります。
つまり、まじめにやっていてバカを見る人が出る不条理な面は否定できないからです。
あなたは自己破産、賛成ですか、反対ですか。
以上、コロナ禍で自己破産という文字がこころなしか目につくが総理の実弟が自己破産後企業の役員に就任していたという報道もある、でした。