「女性差別なんて生っちょろい」とツイートしたNHK番組『ハートネットTV』と、もともとの発言者である大胡田誠弁護士が炎上中です。「これがハートネットTVから出てきてしまうことが、かなりショック」「編集の段階でストップかからなかったのか」と厳しい意見が飛んだというのですか、それらの意見に対して「女性差別許さん」だけでなく、「障害者差別も悪い」という議論へのアプローチにならないことへ不満の声も少なくありません。
大胡田誠弁護士とは誰だ
大胡田誠弁護士とは、全盲の弁護士です。
支援学校で一緒だった、全盲の亜矢子さんと結婚し、2人のお子さんと暮らしています。
「障碍あるとかないとか関係なく、好きな人の子どもを産みたいという思いっていうのは誰しも同じじゃないかと思います」(大胡田亜矢子さん)
「目が見えなくても、いろんな仲間を作って、いきいきと仕事してるんだぞ、という姿は(子どもたちに)見せたいな、と思います」(大胡田誠さん)
大胡田家は全盲のお母さん、全盲で弁護士のお父さんとその両親を手伝う、目が見える2人の子どもの4人家族。全盲の夫婦がみつけた、家族のかたちとは。…2020年1月に放送開始50年を迎える「NNNドキュメント」の名作を約3分で配信中。 https://t.co/dm9we230uP pic.twitter.com/fq17gm2v4k
— ??田中勝樹 TANAKA Katsuki (@waiwai_aqua) December 25, 2019
大胡田誠さんに現在の生活があるのは、上梓された書籍のタイトル通り「決断」があるからだといいます。
- 支援学校(盲学校)出身でも弁護士資格を取得した
- 支援学校(盲学校)のカップルが結婚した
- 視覚障害者夫妻で子どもを産み育てている
人生は決断。
障碍のあるなしに関わらず、考えさせてくれる人生観です。
その大胡田誠弁護士が、テレビ番組の発言で炎上しています。
「女性差別問題を『生っちょろい』とはトンデモない」という批判
NHKの福祉情報番組が〝女性差別〟に関する不適切表現を謝罪 ツイートも撤回 https://t.co/sb0CS4zIx7 ツイート自体は大胡田誠弁護士に責任ないし、どう「生っちょろい」のか、非難ではなく議論する方向に持っていくべき。
— 石川良直 (@I_yoshinao) March 31, 2021
22日のNHK・Eテレの福祉情報番組『ハートネットTV』で、大胡田誠弁護士がこう語ったことが問題視されました。
『女性差別』と世間が騒いでくれてうらやましいなと思います。障害者差別はもっとエゲつないことがたくさんあるのに、全然騒いでくれない視覚障害のある女の子が交通事故に遭ってしまったのですが、『健常者と同じ仕事ができないから損害賠償の額は7割』という判決が出ちゃったりしているんです
女性差別なんて生っちょろいぞ、なんて思うんだけど、世間は(障害者差別については)あんまり騒いでくれないんですよね
番組再度が、この発言のうちの「女性差別なんて生っちょろい」という部分を切り取り、公式ツイッターで「女性差別問題を『生っちょろい』とぶった切る!?」と宣伝ツイート。
それに対して、ネットでは批判が殺到しました。
「女性差別問題を『生っちょろい』とはトンデモない」
「これがハートネットTVから出てきてしまうことが、かなりショック」
「編集の段階でストップかからなかったのか」
NHKの福祉情報番組が〝女性差別〟に関する不適切表現を謝罪 ツイートも撤回(東スポWeb)#Yahooニュース
https://t.co/k1yb8DTiPN何で辛い思いをしてる人に対して貴方のなんて大したことない。私なんて?…みたいになるかなぁ。
みんなそれぞれ大変で辛いのに。— アンコロネット@産休中 (@ankrnt) March 23, 2021
そこで、ツイート自体も、もとの発言をした大胡田誠弁護士にも批判の嵐、という展開で、ツイートは削除されたのです。
比較するものではないが、だからこそ真意を掘り下げるべき
まず、論点はふたつに分けておく必要があります。
- 番組サイドが番宣として、挑発的な文言を切り取ってツイートしたこと。
- 大胡田誠弁護士の発言の中身
「1」については、大胡田誠弁護士に全く責任のあることではなく、番組が悪い。
「2」については、正直、「女性差別」と「障害者差別」を、どっちがひどいかという比較は、あまり有効なアプローチではなかったと思います。
交通事故で亡くなるのと、がんで亡くなるのは、どちらが不幸かという議論と同レベルです。
つまり、どちらも「差別される側」という客観的な現象に対して、どうとらえるかという主観に過ぎないからです。
といっても、全く意味がないということではなく、要するに客観的には比較が難しい、というより無意味だが、それぞれの主張自体には、その側に立っている人ならではの経験や意見があります。
大胡田誠弁護士が障碍者当事者だからこそ、わかること、言えることがあると思いますす。
大胡田誠弁護士はFacebookで、「男女を分けるのは差別だけど障害者と健常者を分けるのは区別?」という問題提起をするために出演することは、すでに放送前から予告済みでした。
私はもっと率直に、大胡田誠弁護士はその通り述べるべきで、「生っちょろい」と言ってしまったことで今回トラブルになっているわけですが、いずれにしても伊達や酔狂で、「女性差別などなまっちょろい」と言っているわけではないはずですから、ではそれはどんなものかを聞き出す、つまり障害者差別を掘り下げて理解を広めるチャンスだったのです。
しかし、「女性差別」を問題視する人は、そこはシカトして、女性差別を軽んじるなと言葉尻で急め立てた。
だった逆に伺うが、その人達は、障害者差別の何を知っているのだと問いたい。
私は全盲の障害の経験はありませんが、思うに、女性差別は、いうなれば男性の風下に立つ不条理。
が、障害者差別は、やまゆり園事件のように、生命そのものの尊厳が否定されているのです。
女性差別は、命までは狙われないでしょう?
番組へのクレーム報道に対するYahoo!でのコメントをいくつか引用します。
>「『女性差別』と世間が騒いでくれてうらやましいなと思います。障害者差別はもっとエゲつないことがたくさんあるのに、全然騒いでくれない」と語った。
結果的にこの発言が正しいことを証明しちゃってんじゃん
この程度のことでも女性差別となると大騒ぎになる、この人がそう思うのも仕方ない女性差別が障害者差別よりも重大な問題とは言えないにもかかわらず、女性差別ばかり問題視される日本の現状が、女性差別が障害者差別よりも重大な問題だと主張しているように見えるという話です。
要は、それぞれ差別される立場になってみないと辛さは解らないという話ですよね。
やみくもに問題発言だと封じ込めるだけでなく、自由に議論できるといいのですが、ある意味不自由な世の中ですね。
個人的には、女性や障害のある方など、社会的に弱い立場と言われる方々は、ハンデもあるけど守られている部分もそれぞれあると思うので、何もかも平等というのは難しいように思います。女性差別!と何でもかんでも必要以上に騒ぎ立てるのはあの田嶋陽子さんと同じで周りが見えてないのだろう。障害者差別も女性差別問題と同等な扱いをされてこそ真の民主国家のはずだが。なまっちょろい発言の真意は分からないが云わんとしていることは痛いほど理解できる。
こうして女性差別をなまっちょろいとは何事だ!と声高に叫ぶ人達がわんさか出たことで、
結果的にこのインタビューの信憑性が高まってしまっている。
障がい者差別も女性差別もどっちもダメだと何故ならない?
みなさんは、いかがお考えですか。
「糾弾」ではなく「議論」のよすがとせよ
誰かを名誉毀損しているからともかく、私は非難よりも、大胡田誠弁護士の発言から真意の掘り下げのほうが建設的だったと思います。
それなのに、「女性差別と比べるなんてけしからん」と、大胡田誠弁護士を居丈高に糾弾したら、そこで議論は終わっちゃうんですよね。
そして、誰も女性差別問題は怖がって真面目に触れなくなってしまう。
タブー視される。
そうなれば気が済むのかな。
でも、それでは「女性差別」問題は何も解決しないですよね。
「生っちょろい」という表現を徹底攻撃して、障害者差別の何がどう問題かという本質にアプローチできなくなったことが、この問題を不毛にしていると思います。
力でねじ伏せるように、言葉尻に抗議を重ねるやり方を私は賛成しません。
以上、「女性差別なんて生っちょろい」とツイートしたNHK番組『ハートネットTV』と、もともとの発言者である大胡田誠弁護士が炎上中、でした。
決断。全盲のふたりが、家族をつくるとき (単行本) – 大胡田 誠:大石 亜矢子
コロナ危機を生き抜くための心のワクチン – 全盲弁護士の智恵と言葉 – [ 大胡田 誠 ] – 楽天ブックス
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