『難しいことはわかりませんが、「がん」にならない方法を教えてください!』(水上治、大橋弘祐、文響社、Kindle版あり)は、これまで1万人以上を診てきた水上治医師と、現在がんについてわかっていることや治療や心がけについて質疑応答形式でまとめています。
現在の医学でできること、わかっていること
『難しいことはわかりませんが、「がん」にならない方法を教えてください!』(水上治、大橋弘祐、文響社、Kindle版あり)は、Kindle版もあります。
Kindle版というのは、Amazon仕様の電子書籍です。
タブレットやパソコンで読むことができるので、書籍の保管コストがかからず、かつ紙や製本のコストも減らせるので紙の書籍よりも安いことが多くなっています。
そのAmazonの『使用品の説明』では、すでに明らかにされている本書の質問の内容が紹介されています。
- そもそもがんって何ですか
- がんになったら絶対死ぬのですか
- コンビニの弁当は食べてもいいんですか
- 食べたらいいものはなんですか
- 健康診断でがんはみつかるんですか
- がんになって何年も生きる人とそうでない人の違いはなんですか
- がんにいい治療法はないのですか
これらについて、質疑応答の会話形式で書かれています。
水上治医師の回答は、簡単に書くと以下のとおりです。
- がんは遺伝しない※
- 60歳でみつかるがんは40歳でできている
- 魚のこげは食べても大丈夫
- がん早くみつければほとんど治る
- 食品添加物は気にしなくていい
- 人間ドックはほとんど間違っている
- 医者のいうことを聞いているだけではだめ
- すい臓がんも治る薬もみつかっている
- 第四の治療法「免疫療法」でがんは治るようになってきた
ということです。
※注釈をつけますと、大腸がんなど一部のがんには遺伝性のものがあります。
本書はとくに著者が新発見したことではなく、今後書き換えられる可能性はありますが、現時点で「現在の医学でできること、わかっていること」をまとめたがんの全体の概論です。
福島のがんと原発事故の関係
【福島がん増加可能性低い 国連】https://t.co/bs9vJvuprN
福島第一原発事故の被曝(ひばく)による健康影響を評価した報告書を原子放射線の影響に関する国連科学委員会が公表した。これまで県民に被曝の影響によるがんの増加は報告されておらず今後も、がんの増加が確認される可能性は低いと評価。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) March 9, 2021
たとえば、福島で、震災の直後から甲状腺がんを徹底的に調べて、「こんなに数字が出ているからこれは全部原発のせいだ」という“啓蒙”があります。
心配しますか。
でも、あれはおかしいでしょう。
なぜなら、がんは急にはできません。
今見つかるがんは、2011年以前と考えるほうが合理的です。
そして、甲状腺がんを発症する子供はそもそも一定の割合で必ず見つかるといわれています。
数字が出たのは、今までしなかった人たちまで徹底的に検査したからであり、少なくともそれが即原発由来ということにはなりません。
ただ、震災後8年たち、政争の具ではなくまじめに因果関係を疑うなら、むしろこれからが大事だと私は思います。
がんにならないためには?
では、がんにならないためにはどうしたらいいか。
結論から書くと、発がん性があるとか、がんになった人はこういうことをしている人に多かったた、ということはわかりますが、これをしなかったら絶対にがんにならない、ということはわかっていません。
本書は、がんに「ならないこと」だけを考えるのではなく、がんは誰でもなり得るから早期発見で退治できるようにしたほうがいい、というスタンスです。
「ならないこと」ばかり考えると、エビデンスもない、できそうにもない健康情報に囚われてしまうおそれがあるからです。
もっとも、ストレスとがんの関係については「わからない」そうです。
ストレスが溜まることはよくありませんが、ストレスが溜まる環境だからといって、「ああ、私はがんになってしまう」と心配しても、また新たなストレスが溜まるだけだといいます。
「アメリカが、国家予算をかけて調べたがん予防にもっとも効く食べ物」「侵襲性が比較的少ない万能の検査」「BMIとがん死亡の関係」「どれぐらいが免疫力を活性化させる適切な運動量か」などについても言及しています。
医師はプライドが高いので、平ったく言えば「ヨイショ」して良好な人間関係を築くことも大切だといいます。
そして医師も人間ですから相性もありますし、納得行かなければチェンジすべきといいます。
「がんもどき理論」についても述べているので、信者の方は読まれるといいと思いますが、まあ信者だから何を読んでも無意味かな(笑)
人生は必然と偶然が糾える縄のごとし
新刊読書寸評『がんの練習帳』中川恵一著。判っていたこととは思いながらも、改めて事実を読めばやはりショック。これは癌を宣告される前に心構えとして読んでおく本だ。二人に一人はそのうち癌になる。長生きしたらまず絶対になるといっていい。癌なんか、いまや国民病なので、歎くことはない。
— 喜多村拓 (@kitano_tabibito) November 9, 2011
『がんの練習帳』を書いた中川恵一医師(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は、がんになるか、ならないか、原因の3分の1は運、という説を述べています。
最近も『サイエンス』に掲載された研究が、ガンになるかどうかは結局偶然の結果だと述べています。
これは、「どうせ運だから酒もタバコも無原則にいい」という話ではありません。
あらゆることに原因と結果がありますが、人間は無謬でも万能でもありませんから、すべての原因にもれなく対応はとれません。
人生の多くの場合は、その原因を放っておいてもたまたま悪い結果にならなかったという「幸運」をともなっています。
「不運」というのは、その逆の見方を述べた主観的表現です。
つまり、原因がわからないこと、もしくは原因に対応できなかったことが、たまたま悪い結果として出てしまったということです。
ですから、「運」という言葉について、非合理な言い方であると否定する向きもあるのですが、もともと主観的な表現ですからいいも悪いもありませんし、「運」という言葉がよくないのなら、「偶然」といってもいいでしょう。
要するに、人生は万事、偶然と必然で糾われているものだというのが私の考えです。
そして、「必然」については本書を読んで生活に反映させ、「偶然」に巻き込まれてがんになったら速やかに(早期発見で)対応する、というのが本書の結論です。
ご自身やご家族の健康管理について、ご関心のある方はおすすめします。
以上、『難しいことはわかりませんが、「がん」にならない方法を教えてください!』(水上治、大橋弘祐、文響社、Kindle版あり)、でした。
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