いつかの人質(芦沢央、角川文庫)は誘拐事件を扱ったミステリー小説。女の子が誘拐され失明して帰ってくるショッキングな始まり

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いつかの人質(芦沢央、角川文庫)は誘拐事件を扱ったミステリー小説。女の子が誘拐され失明して帰ってくるショッキングな始まり

いつかの人質(芦沢央、角川文庫)は誘拐事件を扱ったミステリー小説。女の子が誘拐され失明して帰ってくるショッキングな始まりです。そして、12年後にまた何者かに連れ去られてしまいます。同時期には誘拐事件の加害者の娘の失踪しますが……

『いつかの人質』は、芦沢央さんが角川から上梓したミステリー小説です。

主人公の宮下愛子が幼い頃に誘拐され、いきなり失明してしまうところからストーリーが始まります。

そして12年後、愛子はまたもや誘拐されます。

ただ、そのときは愛子だけでなく、誘拐事件の加害者の娘も失踪します。

盲目の少女は、なぜ2度も誘拐されたのか。

加害者の娘は、事件にどう関与しているのか。もしくは、していないのか。

物語は、それぞれ視点となる人物を変え全5章で構成されています。

愛子、両親の宮下夫妻、失明の原因となった事件の加害者・尾崎典子、その娘である優奈、夫の江間礼遠、礼遠の母親などが、それぞれ登場人物として描かれています。

被害者と加害者の事件が再び起きたことから始まり、急展開する圧巻のラストを迎えます。

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12年前に起きた「誘拐」が再び……

宮下愛子は、3歳の時、ショッピングモールで母親の麻紀美が胃潰瘍でトイレに駆け込んだ、僅かなすきにいなくなります。

それは意図された「誘拐」ではなく、たまたまショッピングモールの催し・ビンゴ大会で一緒だった尾崎典子の車に、成り行き上愛子が乗り込んだもので、事故も故意のものではありませんでしたが、結果的にその連れ去られた先の事故が元で、愛子は失明します。

ビンゴに当たったものの、当たった人の人数が多くて景品がもらえなかった愛子をなだめられなかったことが遠因としてあるので、宮下の家では親としての後ろめたさがどこかにあるようです。

その12年後、彼女は友達の美弥とライブに行くと言います。

父の陽介と麻紀美は、白い杖を叩いて歩く愛子が、沢山の人で入場するライブなどトンでもないと思いましたが、結局止められませんでした。

そして、行ったライブ会場で愛子は、再び何者かによって誘拐されます。

一方、人気漫画家の江間礼遠は、その半年前から突然失踪した妻、優奈の行方を必死に探していました。

複数の探偵に頼むも見つからず、途方に暮れていました。

優奈は、12年前に起きた愛子誘拐事件の「加害者」典子の娘でした。

夫妻は、優奈が原作、礼遠が作画を担当して人気作品を世に送り出していました。

優奈の失踪前に、江間夫妻は宮下家に手土産を持って訪ねています。

最初は、「お詫びを」というものでしたが、その後、当時の経験をもとに連載を描きたいと打ち明け、「我々がそんなもの許すはずがないだろう」と、宮下夫妻を激怒させました。

結果的に、優奈はその後失踪し、連載はありませんでした。

果たして、このことも含めて、優奈は事件とどんな関係があるのか。

長い歳月を経て再び起きた、「被害者」と「加害者」に動きがあった事件。

偶然か、それとも2度目の誘拐に優奈は関わっているのか。

誰が犯人で、その目的は何か?

読んでいても全く犯人がわかりません。

それぞれの心理描写が巧みで、誰もが被害者や被害者家族、加害者にもなり得るように思えてきます。

結末が気になるストーリーです。

イントロで衝撃を与えて読者を引き込む

余談ですが、愛子の父親がテレビを見ているシーンで、その番組内の芸人のトークが書かれていて、興味深いものがありました。

「誰と仲が良いかで序列が決まる人間関係、誘いを絶対に断らないことがまた声をかけてもらえる必須条件となる暗黙のルール」

今話題の週刊誌の「飲み会」とやらを思い起こさせますね。

要するに、そんなことはもはや自明のこととなのでしょう。

今回の週刊誌の報道で、呑み会そのものは事実上本人も認めざるを得ないのに、「そんな会はなかった」「シロだ」と言い張っていた芸人も、一緒に消えてほしいと私は思っているんですけどね。

それはともかくとして、主人公の愛子は、失明した上に2度も誘拐なんて可哀想すぎますね。

さすがサスペンス小説だけに、文庫と単行本では結末が違うそうです。

ただし、どのへんから違ってくるのかは未確認です。

私が今回ご紹介にあたっては、文庫本を読んでいます。

それだけ、ネタバレに神経を使われていると思いますので、結末は私も自重しておきます。

まあ、そんなに何人も疑わしい人は出てきませんので、誰が犯人か、というだけでなく、なぜ、どういう経緯で、というプロセスも重要だと思います。

芦沢中央さんの過去の作品では、これまで『目撃者はいなかった』と『罪の余白』をご紹介したことがあります。

『目撃者はいなかった』は、業務上の誤りを隠したために、もっと大きな嘘をつかなければならなくなって主人公が追い込まれる話です。

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といっても、主人公は、決して嘘つきでも悪人でもないのです。

つまり、誰にでも有り得る話、というのがミソです。

『罪の余白』は、娘をシに追いやったクラスメイトに復讐の炎を燃やす父親と、そんな主人公を狡猾に翻弄していく邪悪な女子高生の攻防を描くサスペンス・ドラマです。

罪の余白(つみのよはく)は娘を自殺に追いやったクラスメイトと復讐の炎を燃やす父親との攻防が描かれる芦沢央によるサスペンス
罪の余白(つみのよはく)は、娘をシに追いやったクラスメイトと復讐の炎を燃やす父親との攻防が描かれる芦沢央によるサスペンス小説です。第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作。加筆・修正された上で単行本化され、2012年に角川書店から発売されました。

11年前に書籍化されましたが、2015年には映画にもなっています。

イントロで衝撃を与えて読者を引き込むという手法は、『罪の余白』でもありますね。

やはり論より証拠で、実際に読まれると、その面白さが実感できると思います。

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いかがですか、サスペンス小説。

以上、いつかの人質(芦沢央、角川文庫)は誘拐事件を扱ったミステリー小説。女の子が誘拐され失明して帰ってくるショッキングな始まり、でした。

いつかの人質 (角川文庫) - 芦沢 央
いつかの人質 (角川文庫) – 芦沢 央

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