うちの妻ってどうでしょう?(福満しげゆき、双葉社)は、小心な「僕」と美人だけど短気な「妻」の日常を描いたコミックエッセイです。やや猫背の夫と、サリーちゃん脚の妻は、恐妻家ながらも夫婦生活をそれとなく満喫している様子が描かれています。
『うちの妻ってどうでしょう?』は、福満しげゆきさん作画で、双葉社から上梓されました。
全7巻のコミックエッセイです。
2022年6月22日現在、第3巻までがAmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
「サリーちゃん脚」の妻
『うちの妻ってどうでしょう?』というタイトルですが、中身は作者自身が主人公です。
作者目線で、経験したことや感じたことのメモを漫画にしている、といった感じでしょうか。
本書の扉には、こう書かれています。
かけだしの漫画家と、彼を支える健気な妻の
何気ない日常をつらつらと綴った
エッセイ風4コマです。
だいたい実話です。
小市民的なキャラクターで、高校は留年するし、編集者には「この人原稿なくすのではないだろうか」と猜疑心を抱いているしで、なんとなく面白い人です。
「僕は、外に出れば車にはねられると思ってますし
乗った飛行機は墜落すると思っています!」
「僕だって飛行機が落ちる確率が低いことくらい知っています。
だからと言って、それが自分が乗っている飛行機が落ちない理由にはなりません。」
このへん、実によくわかります。共感できます。
……ということは、私も症市民なんでしょうね。
あ、しまった、誤変換してしまいました。
でも「小市民」よりも「症市民」のほうが、なんかイメージ的に合ってます。
1ページはしっかり8コマで区切られ、コマの大きさにメリハリもありません。
上述のように、「エッセイ風4コマ」と書かれ、実際に4コマ漫画のように縦に読むのですが、4コマや8コマできっちり終わるわけではありません。
ページの途中の、3コマ目とか7コマ目あたりで唐突に終わります。
ひとつの話の長さもまちまちです。
1コマで終わるものもあります。
起承転結はありません。
作者の気が済んだら終わりです(笑)
終わりのコマには、たとえば『……と よく思った「妻のクセ」おわり』と書かれているので、「ああ、終わりなんだ」とわかります。
妻は、象の脚、いわゆる「サリーちゃん脚」で描かれています。
魔法使いサリーのように、足首を細く描いていないのです。
まあたしかに、世の中足首の太い女性もいますが、たぶん実際の作者夫人はそこまででなく、デフォルメしているような気がします。
そういう脚を描く人は、そういう脚が好きなんだろうと思います。
妻の脚(足)ばかり見ているので、妻が座っているとき、足の親指だけを他の指と違う方向に曲げて寝ていたり、指を曲げてつま先立ちするような形で座っていたりしていることを発見しています。
ちょっとエッチな人なのかも。
私も、この記事は結構書きたい放題ですね。
別に、飲みながら書いているわけではありませんよ。
このスタイルこそ、本作のスタイルなのです。
つまり、ダラダラと作者のプリミティブな「内心の自由」を漫画で開陳しているのです。
妻は「カレーできてるよ」
たとえば、第1話から見ていきます。
担当編集者との打ち合わせ。
「18ページの読み切りなんですけど」
しかし、自己肯定感の低い作者はマイナス思考です。
(やってできないことはなかったかもしれないけれど…)
「いや…他に1本やってまして…。そんなに1ぺん(ママ)にたくさん描いたことないし…もし描けなかったりしたら申し訳ないし…」
(無理しないでおこうと断ってしまった)
もったいないですね。
その数日後、別のところからイラストの仕事が来ました。
小さなカットを2個描く仕事でした。
「はあ…なるほどわかりました」
(なぜかその人は1時間遅れてきた)
いや、仕事請けたんなら、そういうことはいちいち描かないほうがいい関係築けると思うのですが。
(30歳になったせいか、最近よく年下の編集者さんと会う)
あ、これは私も30歳過ぎてから徐々に経験しました。
駆け出しの頃は、出版社や編集プロダクションの担当者よりも自分のほうが年下だったので、何を言われても「勉強」だったし、向こうも言いやすかったと思うのですが、だんだん自分のほうが歳が上になると、向こうが使いにくいだろうなあと思ったものです。
漫画は、コミュニケーションの小さな齟齬でやり直した経過が描かれ、その出来事を妻に話すと、
「調子にのらんよー。やるって言ったんだから最後までやんな。調子にのらんよー」
九州の方言だそうですが、東京生まれの東京育ちである私にはわかりません。
やはり、東京生まれの東京育ちである作者にもわかりにくかったようです。
(わかったようなことを言われてハラが立った…こんなにハラがたったのは思春期のとき以来…)
うーん、そこまで腹を立てるほどのことかとも思いますが、配偶者の不用意な言葉が感情を逆なでする、ということはわからなくもありません。
作者は、壁に掌を打ち付けると、妻は「あんたそれ、DVよ」と言い返し、布団に逃げても「DVばい!そがん…DVばい!」と言い続けます。
また腹が立った作者は、枕元のラジカセを叩くと、思いの外畳を滑り、あやうくガラスが割れそうになって、作者は「ここまでやったら離婚されてしまう」と心配したものの、直前で止まって事なきを得ます。
そして、次の日目を覚ますと、妻は「カレーできてるよ」
(優しかったのでよかった)
という話です。
だから何?なんて突っ込んではいけません。
エッセイというより、日記に近い漫画ですね。
備忘録に近い日記。
ストーリーよりも、出来事や心理の記録重視(笑)
Amazon kindleができてから、様々な実験作がリリースされていますが、本作もその一つでしょうか。
胸を打つ感動はありませんが、くすっと笑ったり、「あるあるー」と思ったりしながら、次が読みたくなるゆる~いコミックです。
みなさんも、いかがですか。
以上、うちの妻ってどうでしょう?(福満しげゆき、双葉社)は、小心な「僕」と美人だけど短気な「妻」の日常を描いたコミックエッセイ、でした。
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