『なぜ「つい」やってしまうのか衝動と自制の科学』は最新の心理学と神経科学から「衝動=突発的行動」の謎を解き明かします。
なぜ本当は必要のないものを買ってしまうのか。なぜ若い頃は無謀な行動をしがちなのか。なぜダイエット中なのに大食いしてしまうのか。最新の心理学と神経科学から「衝動=突発的行動」の謎を解き明かす。衝動にあらがう「自制心」の鍛え方も収録されています。
本書の内容
『なぜ「つい」やってしまうのか 衝動と自制の科学』(デイビッド・ルイス著、得重達朗翻訳、 CCCメディアハウス)を読みました。
著者はデイビット・ルイス。研究やビジネスに役立てる目的で、脳の活動を分析するという先駆的な研究で「ニューロマーケティングの父」と呼ばれているそうです。
衝動的行動の心理学、神経学、遺伝学研究を専門に行うインパルス・リサーチ・グループの創設メンバーでもあります。
「わかっちゃいるけどやめられない」なんて言いますが、人間は弱いもので、理性で行動のすべてを律することができないように思えることがあります。
たとえば、必要でないものを買ってしまう、ダイエット中なのに大食いしてしまう、周りに流されて悪事を働いてしまう……。
本書は、そうした“衝動的行動”の本質を考え、それを抑える自制心を鍛えるにはどうすればよいかまでを解説しています。
行動を起こす際の思考には2種類のタイプ
どうして暴動(もしくは騒乱、危機混乱状況)が起きると略奪が起きるのかしら? と思って軽くググってみたらデイビッド・ルイス著「なぜ「つい」やってしまうのか 衝動と自制の科学」という本がgoogleプレビュー? に。// 気になりますが他に積んでる本があるから(T_T) pic.twitter.com/MILLygt1pA
— 朝霞 薫 (@Kaoru_Asaka) May 30, 2020
著者によれば、行動を起こす際の思考には2種類のタイプがあるとしています。
ひとつはゆっくりとした思慮深い思考、もうひとつはスピードはあるが誤りも多い思考です。
そして、前者をシステムR思考(reflection=熟考)、後者をシステムI思考(impulsive=衝動的な)と呼んでいます。
衝動をもたらすI思考は自動的に素早く働くものの、そこに思慮や理性はなく、いわばゾンビのように無自覚に働くシステムです。
誰でも自分は理性的であり、物事を熟慮して行動に移していると思っています。
しかし、実は私たちの行動の大部分は衝動で成り立っており、思慮を伴わないことのほうがずっと多いと著者は言います。
それは思慮に欠けるということではなく、実は私たちの行動の大部分は、意識的な気づきより下のレベルで働いている精神機能から生じているのだそうです。
本書では、衝動的に行動してしまう理由について、神経科学と心理学の両面からアプローチを試みています。
たとえば不慮の事故で脳を損傷した人の、事故前との衝動性の違いや、脳の腫瘍が行動にどのような影響をもたらしていたかなどを実例をあげながら解説しています。
さらに、ティーンエージャーがより衝動的で向こう見ずな行動をとってしまう理由について、20歳になるまでの脳の発達からその理由を考察しています。
嗅覚や聴覚、視覚などの五感も衝動と関係があることや、恋愛、過食、衝動買い、模倣衝動などについて、それぞれに章をたてて詳しく解説しています。
最後に、衝動性行動をコントロールする自制心について、その鍛え方についても触れていますが、「人にはただただ自制心を失う瞬間があ」るのも事実だとしています。
あるのも事実……。衝動を意識的に完全にコントロールするのはなかなか難しいのかもしれません。
本書では衝動的行動に個人差があること、その理由や衝動性を調べるテストも紹介されています。
興味のある方は自分が衝動的な人間なのかどうか、そしてそれを自制できるのかどうか試してみてはいかがですか。
以上、『なぜ「つい」やってしまうのか衝動と自制の科学』は最新の心理学と神経科学から「衝動=突発的行動」の謎を解き明かします、でした。
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