まんが世界を血で染めた独裁者残酷伝(アンソロジー著、コアマガジン)は、世界史上独裁者と呼ばれた指導者を漫画でまとめた書籍です。アドルフ・ヒトラー、スターリン、ポル・ポト、毛沢東、サダム・フセイン、チャウシェスク等々が登場します。
『まんが世界を血で染めた独裁者残酷伝』は、アンソロジーがコアマガジンから上梓しています。
コアコミックスというレーベルの漫画によるムックです。
本書は2022年7月30日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
独裁者を知ることで世界史を知ることができる
みなさんは、世界史上、独裁者というと、どんな人を思い浮かべますか。
早速ですが、本書『まんが世界を血で染めた独裁者残酷伝』で登場する独裁者を枚挙します。
あくまで、本書が漫画にしているので目次通りご紹介しているのであり、私がそう思っているからというわけではありませんゆえ、そのところよろしくお願いいします。
習近平
極悪女独裁(呂雉、則天武后、西太后、江青、イメルダ・マルコス、アグリッピナ、ウァレリア・メッサリナ、イザボード・バヴィエール、カトリーヌ・ド・メディシス、エリザベート・バートリ、エレナ・チャウシェスク、ンジンガ女王)
ヒトラー
スターリン
毛沢東
ポル・ポト
サダム・フセイン
ロバート・ムガベ
ムアンマル・アル=カダフィー大佐
ホスニー・ムバラク
ニコラエ・チャウシェスク
フェルディナンド・マルコス
イディ・アミン
ベン=アリー
オマル・アル=バシール
西太后
金三代王朝
などです。
私は高校時代、世界史の履修がなかったのです。
大学受験が共通一次の一期生だったんですが、御存知の通り、社会科は2科目選択する必要がありました。
最初は、世界史をチョロチョロっと勉強したものの、やはり学校の授業という基礎を学んでいないため、一からの勉強は時間もないため諦めて、政経と倫理社会に逃げてしまった経験があります。
それだけに、実は今も一般常識としての世界史の知識が心細いのですが、本書を熟読し、周辺の事情を補足的に調べたりして、ずいぶん勉強になりました。
私にとっては、独裁者がいかに悪い影響を与えたかということも大事ですが、その時代のその国や世界の事情を知ることができた点が、もっとも大きな収穫です。
もとより、独裁者というのは、善し悪しは別として、その国も関連諸国にも、そして世界的にも大きな影響を与えますから、世界史を動かす主役ということもできます。
決して私だけではなく、独裁者を知ることで世界史を知る、という面はあると思います。
さて、本書を読んでわかるのは、独裁者の後、多くはその国は引き続き負の遺産に苦しみます。
たとえば、ジンバブエのロバート・ムガベ大統領が引き起こしたハイパーインフレ。
これは、こんにち積極財政の理論的根拠であるMMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)に対する反論材料で使われているのです。
37年にわたる長期独裁政権を維持するために、財政出動乱発でインフレを抑えられなくなり、失業率97%というもはや一国の経済としては完全に破綻している状態になりました。
しかし、ジンバブエは戦争により国内の供給能力が破壊され、さらに政府が紙幣を無原則に印刷することで戦費を調達しようとしたことから起こったもので、戦争もなければデフレである日本とは事情が違います。
そもそも、日本はインフレ率2%という経済目標が、政府と日銀との政策協定として現政権でも公然としており、
もはや積極財政に踏み切らないと、どうにもならないところまできています。
それこそ、ジンバブエのような戦争はなくても、緊縮財政の中で「供給能力が破壊され」つつありますから、破壊された後では取り返しがつかず、破壊されない財政を必要としているのです。
ですから、ジンバブエと同列にはおけないのですが、否定派はまずお約束のようにそこから入ります。
それが、議論を面倒なものにしています。
これも、「ジンバブエ」の負の遺産といえるでしょう。
毛沢東主義と日本映画『君よ憤怒の河を渉れ』のヒット
本書に出てくる独裁者たちは、現役時代だけでなく、その後に負の遺産を残すという問題があります。
ただし、たとえばドイツのように、連合国側から「敵国」扱いされるところからスタートしても、徹底的にナチス批判を行い、六代の内閣で信用を取り戻す例もあります。
それについては、過日ご紹介した『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治、講談社)に詳しく解説されています。
毛沢東については、日本の女優絡みで興味深いエピソードがあります。
1986年、高倉健さんが、東映を離れてから初めての出演作品である『君よ憤怒の河を渉れ』(大映/松竹配給)が上映されました。
台湾も親日です。
中韓北以外は世界中が親日です。中国の反日は政治です。だから中国には親日の時代がありました。君よ憤怒の河を渡れ、は7~9億人の中国人が観たそうです。石平さんや李相哲さん、金文学さんは、その頃を懐かしみますね。 pic.twitter.com/LMgSTJcfPl— Duke (@Duke2020617) August 21, 2021
私もこの映画(佐藤純彌監督)は見ましたが、率直に述べさせていただくと、際立った名作というほどでもないと思いました。
ところが、中華人民共和国では、同作の観客動員数が8億人に達するヒットになったといいます。
高倉健さん演じる杜丘冬人という刑事が、無実の罪で追われるストーリーだったのですが、同じように理不尽な扱いを受けた文化大革命を批判的に総括していた中国人にとって、自らの姿を重ね合わせたからといわれているのです。
中でも、この作品のヒットが自らのキャリアに大きな影響を与えたのが、中野良子さんです。
国民的ヒット作のヒロインですから、中国で人気女優になりました。
それをきっかけに、当時の中曽根康弘総理訪中のゲストとして、キャスターに起用され、以後も外務省の依頼で世界各国に派遣され、国内外で講演会を多数開催。
国際的文化人になったのです。
文化人に「転向」した中野良子さんは、女優としてのキャリアは20~30代にほぼ限定されているのですが、とにかく“美人女優”としての誉れ高く、ではいつ頃が中野良子のピークだったのか、という議論もファンの間ではあるほどです。
漫画で、こうした世界史の一面を読んでみませんか。
アンソロジーのムックについては、これまでもご紹介してきました。
『まんがアナタの知らない都市伝説DX』は、タイトル通り都市伝説をテーマとした短編漫画満載です。
『まんがホントに怖いテレビ業界事件簿』は、テレビ界の秘密、タブー、闇など漫画で紹介するムックです。
『まんが芸能界最強不良列伝』は、武勇伝やブラックなイメージが話題の芸能人について紹介しています。
こちらも興味深い漫画です。
ぜひご一読をおすすめします。
以上、まんが世界を血で染めた独裁者残酷伝(アンソロジー著、コアマガジン)は、世界史上独裁者と呼ばれた指導者を漫画でまとめた書籍、でした。
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