まんが芸能界最強不良列伝(アンソロジー著、コアマガジン)は、武勇伝やブラックなイメージが話題の芸能人について紹介した漫画です。ただ、先日訃報が話題になった横浜銀蝿などたんなる「不良」のレッテルを超えた深い描き方が興味深い話ばかりです。
『まんが芸能界最強不良列伝』は、コアコミックスというレーベルの漫画によるムックです。
本書は2022年7月25日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
なお、今回は文中は原則敬称略とさせていただきます。
「ほしのもと」が人生を翻弄
芸能界やプロスポーツ界などで、悪そうな人、過去にトラブルを起こした人などについて、その生い立ちや出来事を振り返った漫画です。
以下の人たちが取り上げられています。
- 松田優作
- 長渕剛
- 清原和博
- 新芸能界のドン「芸能プロダクションK」ほか
- 清水宏次朗
- 押尾学
- 横浜銀蝿
- 羽賀研二
- ガッツ石松
- 魔娑斗、KID、小次郎、高谷裕之
- オールスター犯罪芸能人感謝祭
- ダイナマイトトミー伝説
- 長渕剛
- 尾崎豊
- 勝新太郎
- 北島三郎
- 田代まさし
- ジョニー大倉
- 蛭子能収
- 歴史的偉人の死亡カルテ
永遠の孤独と消えない暴力事件
幼少で病弱からの強面人生
球界の番長
芸能界の事件・伝説大ボリューム収録!
リアル BE-BOP-HIGHSCHOOL
ドラッグ、愛人脂肪の呪われた男
仏恥義理の青春 人生路薫
オンナ問題、巨額借金、詐欺に恐喝未遂
リング外での“幻の右”伝説
格闘家たちのワル時代
前科持ちの皆さん全員大集合
危険快男児
魂のミュージシャン
“唯我独尊”孤独王伝説
博打、ヤク中毒…なのに名役者
北海道の漁師でバンカラ学生
成り上がり ラッツ&スター
ジャパニーズロック
芸能界に存在する異界の神
「不良」というタイトルですが、その実態は、黒幕という意味での「悪」だったり、奇行だったり、非常識だったり、本人はクレバーだったけれど不良のカリスマだったり、と、かなり広い意味でくくられています。
内容は、これまで芸能マスコミが報じているとおりでしたが、救いようのない悪いやつ、というスキャンダラス描き方ではなく、その生き様の背景や、その人の功績などもきちんと描かれています。
たとえば羽賀研二の巻などは、「人生はいかにほしのもとが大事か」というのが改めてわかりました。
本誌によると、アメリカ軍人と韓国人の間に生まれた(本誌より)となっている羽賀研二は、極貧の上にいじめられ、しかも家に帰ると母親は見知らぬ米兵と重なっていた……という幼少期を過ごしています。
それが、嘘をつくこともいとわない金への執着と二枚舌、女性を信用しないアイデンティティにつながっているといいます。
では、羽賀研二は母親を怨んでいるのかというとさにあらず、むしろより執着しています。
たとえば、一緒にブレイクした野々村真とは普通に友達付き合いがあったらしく、羽賀研二にしては意外ですが自宅まで招いており、そこには「母ありて我あり」という自筆文字による紙が貼ってありました。
そして、「ボクは母子家庭で苦労したからねえ。真もお母さんを大切にしなよ」とアドバイスしています。
さらに、結婚相手も、母親の介護をしてくれたという理由で選んでいます。(のちに離婚)
本誌は、「その心の奥底の闇には天使と悪魔のどちらが潜んでいるのだろうか?」と結んでいます。
もうひとつ、先日嵐さんの訃報が話題になった、横浜銀蝿についてもご紹介しましょう。
暴走族から自力でメジャーデビューへ
横浜銀蠅といえば、メンバーには嵐と翔という実の兄弟がいます。
2人はグループ名通り、横浜の戸塚出身。
本誌によると、ヤクザや肉体労働者も外国人であふれ、喧嘩やカツアゲがはびこる街だそうです。
あ、本誌がそう書いているので、私の意見ではありませんよ。
そこで、兄弟は喧嘩に負けて返ると、軍隊上がりの厳格な父親は「またケンカに負けたのか。この意気地なしめっ!!」と、さらに殴られたそうです。
そこで兄弟は、まずケンカに強くなることだと悟り、ケンカは先手必勝。
まず、机やあたりのものをひっくり返すことで、相手が戦意喪失することを覚えたそうです。
高校に入ると、暴走族を結成。
チーム力で相手をねじ伏せることも学んだそうです。
継続は力なりで、次第に人数が増え、50人を超える大所帯になったチームは横浜銀蝿と名乗るようになりました。
しかし、1978年。暴走族対策の法律(道交法の「共同危険行為の禁止規定」)が制定され、兄弟は暴走族からバンドに転向することとします。
その時の名前が、THE CRAZY RIDER 横浜銀蝿 ROLLING SPECIAL
見様見真似で初めたバンドながら、暴走族の動員力で、伝説となった「横浜新道800台集会」に。
横浜銀蝿はメジャーデビューしましたが、スタッフや芸能人との小競り合いが日常茶飯だったそうです。
本誌に描かれているのは、ジャニーズタレントと反りが合わなかったこと。
近藤真彦と思しきタレントとは、番組司会者の堺正章が仲裁に入るまで殴り合う寸前だったとか。
弟分の嶋大輔と杉本哲太は、シブがき隊と揉めたことも描かれています。
そして、ラッツ&スターとの不仲説にも言及しています。
もっともそっちは誤解で、本当は良い付き合いをしているそうです。
シャネルズの謹慎中に、横浜銀蝿がデビューしているので、彼らの人気を横取りしたように思われたのではないか、とのことです。
まあ、コント55号とザ・ドリフターズとか、桜田淳子と山口百恵とか、不仲説が誤解だったということはめずらしいことではないですね。
その方が芸能ゴシップ的には面白いでしょうし。
真相は、キャラ的にかぶるからお互い表向きは距離を置くというとだったのでしょう。
いずれにしても、高校時代に暴走族ではあったのでしょうが、生き方としては決して「悪」ではないと思います。
ジャニーズタレントのように、事務所の看板で出できたタレントよりも、自力でノシあがってメジャーデビューした横浜銀蝿の方を応援したくなりますけどね、個人的には。
そして今年、嵐ヨシユキさんが肺炎でなくなったと伝えられました。
嵐さんは、以前も脳梗塞を罹患したことがあり、晩年は病気と付き合いながらの活動だったようです。
生前のご遺徳をお偲び申し上げます。
ということで、本書は「不良」の特集ですが、羽賀研二にしろ、横浜銀蝿にしろ、「不良」のレッテルだけでは語りきれない深い描き方をしていて、いずれも興味深い話ばかりです。
未見の方は、ぜひ読まれることをおすすめします。
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以上、まんが芸能界最強不良列伝(アンソロジー著、コアマガジン)は、武勇伝やブラックなイメージが話題の芸能人について紹介した漫画、でした。
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