めちゃ簡単挫折知らずのLaTeX美図数式(ふぉれぽん著、Kindle版)は、LaTeXの概論と数学の教材作りに有用な情報を簡潔にまとめた一冊です。組版の知識が一切なくても、無料で商業出版並みのクォリティを出力できる誰にでもお勧めしたいシステムです。
『めちゃ簡単挫折知らずのLaTeX:中学・高校数学教材作成用レシピ集 Kindle版』は、LaTeXによる作例(ソースコード)集です。
LaTexを使って数学のプリントを作りたかった学校の先生、塾講師だけでなく、本格的な組版レイアウトで印刷物やPDFを作成したい方には必携の書籍です。
TeXとLaTeX
本書のタイトルは『LaTeX』ですが、その前にTeXからご説明しましょう。
TeX(テックまたはテフ)もLaTeX(ラテックまたはラテフ)も、大文字と小文字を交互に書いていますが、これは決まったロゴがあります。
ブログ記事の本文の場合、テキストで表現しますが、その場合条件があります。
たとえば、TeXは以下のとおりです。
- T を大文字,e を小文字,X を大文字で表記する
- やはりロゴを使う
- ロゴのように少しeを下げて字の間を詰めて書く
それだけ、組版の肝である、字間や字の大きさにこだわっているのですね。
TeXとはなんだ
TeX(テックまたはテフ)は、1978年にDonald Ervin Knuth(数学者)によって開発された、フリーの組版システム(ソフト+マークアップ言語)です。
システムを使うことで、活版印刷のような「文字や図版などの要素を紙面に配置する」という作業をコンピュータで行えます。
え?
今使っている、Microsoft Wordや、グーグルドキュメントでも、十分きれいなレイアウトの文章が作れるって?
たしかに、文字装飾もできますし、レイアウトには多彩なテンプレートもあります。
1枚ものの「お知らせ」や、簡単なリポートならそれでもいいと思います。
でも、書籍や雑誌のレイアウトと比較してください。
字と字の間隔とか、1行あたりの文字数の詰め込み方とか、微妙に違っていませんか。
というのは、入力される文字には、漢字、ひらがな、数字、アルファベット、約物などありますが、幅がそれぞれ違います。
手書きのように、マス目に入れるように入力したとすれば、それぞれの間隔がまちまちになってしまい、きれいなできになりません。
Microsoft Wordでは、禁則処理の関係で、句読点を一番下にぶら下げるか、次行の2番目の文字とするかの調整のため、字間が妙にあいたり、また逆にきつきつだったりしますよね。
TeXは、その字間を緻密に計算して組版してくれるのです。
箇条書きに挿入や削除を行うときなど、もし途中の一箇条を消したり、逆に追加したりしたら、番号を変更しなければなりません。
「このことは何ページの何行目で書きました」という説明を行うときも、加筆修正で行数が変わってしまうと、また手動で数え直さなければいけませんね。
LaTeXでレイアウトを指定すると、それらは自動的に調整・変更してくれるのです。
とくに、複雑な数式を含むレポートや、厳密な様式に沿って完成しなければならない学術論文、目次・索引が必要な書籍など、理系の文書を作成するためには、もう必携と言ってもいいでしょう。
LaTeX
LaTeX(ラテックまたはラテフ)は、1985年にLeslie Lamport(数学者)が発表した、TeXの上に構築されたフリーの文書処理システム(マクロパッケージ)です。
マクロとは、システムの自動操作のこと。
TeXが組版のために開発された言語のため、一般的な文書作成に便利な機能拡張を行ったものです。
本書は、そのLaTeXについての書籍です。
すぐに使えるソースコードを披露
本書は、LaTeXを使った、数学の図や数式の書き方を紹介した作例集です。
次の人々を主なターゲットにしています。
- 高校数学を教える学校の先生や予備校・塾講師
- LaTeXを用いて教材やテキストを作成したいビギナー
- LaTeXに関して、周囲に質問できる人がいなくて困っている人
具体的には、目次第II部を基本的な文法や用語の章とし、第III部で数学IA、第IV部で数学IIB、第V部で数学IIIに用いる図や数式の書き方についてソースコードを披露しています。
数学IA……二次不等式、二次関数のグラフ、連立方程式、論理と集合、逆・裏・対偶、三角形の五心など。
数学IIB……方程式と不等式、二項定理、三角関数、y=sinx,y=cos xのグラフ、y=tan xのグラフ、ベクトル、三角錐、立体の切断面、確率分布と統計的推測など。
数学III……二次曲線、楕円と接線、微分・積分、複雑な増減表、回転体など。
ソースコードですから、そのままコピペすれば自分のデータに使うことができます。
これは、数学の教材にLaTeXを使いたい、でもどうやって使ったらいいか、という「悩み」のある方には大いに役立つと思います。
また、上掲のような図は、たんに数学の設問だけでなく、一般の記事原稿で、ビジュアルで見せたいときに応用できますから、数学の先生でなくても知っておいた方がよいと思います。
ただ、本書はあくまで美図数式の作例書籍であり、LaTeXそのものについての詳細なレクチャーはありません。
ですから、ビギナーが本格的に使うためには、TeX(LaTeX)についての書籍も参考書として必要になると思います。
すでに、このブログでは、『LaTeX2ε美文書作成入門』(奥村晴彦,黒木裕介著、技術評論社)をご紹介しています。
TeX、LaTeXの概論、使用アプリのインストール、コマンドの解説など、LaTeX2eに関する入門書&リファレンスマニュアルです。
インストールしてみよう
TeX(LaTeX)はフリーウエアですから、ネットでプログラムを無償でダウンロードできます。
つまり、誰でも使うことができます。
論より証拠で、まずはインストールしてみましょう。
インストールについては、TeX,LaTeX,PDF,PostScript などに関する情報を提供する,読者参加型ページ『TeX Wiki』というサイトにまとめられています。
Windows、MacOS、Linuxなど、いずれも載っています。
オーソドックスなのは、TeX LiveというTeXのディストリビューションをダウンロードすることです。
ちなみに、タグの処理はインストールせずにWebで利用することもできます。
タイトルにKindle版と銘打たれていますが、本書はAmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
TeX(LaTeX)は0円。本書も会員なら「0円」。
それで、本格的な組版デザインを会得できるのです。
いかがですか。
以上、めちゃ簡単挫折知らずのLaTeX美図数式(ふぉれぽん著、Kindle版)は、LaTeXの概論と数学の教材作りに有用な情報を簡潔にまとめた、でした。
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