『アルファブロガー』(翔泳社)は、2005年に上梓されたネットでの世論形成に大きな影響力を持っている11人の人気ブロガーの話です。最近はSNSに利用者がシフトすることで、よりブログのコンテンツ重視の特徴は明確になったように思います。
人気ブロガーの影響力とは
『アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社)という2005年に出た本があります。
いまさら読みなおしてみました。
「アルファブロガー」というブログ賞で選ばれた、11人の“人気ブロガー”のインタビューをまとめた書籍です。
その後、一部ブロガーの経歴詐称などもあり批判も受けましたが、そもそも「人気ブロガー」とはなんだろうということを私は考えました。
アルファブロガーとは、まあ簡単に言えば、そのコンテンツでネットでは知られているプロのブロガーといったところでしょうか。
プロブロガーとは、読んで字のごとく、ブログでたつきの道を得ている人です。
本職があるかないかは別として。
いずれにしても、プロブロガーになるためには、そのブログ自体が桁外れのアクセスや影響力をもつことが前提です。
アルファブロガーとは何だ
『アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』が出版されたのは2005年です。
当時と今とではネット事情がかわっているとともに、「アルファブロガー(Alpha blogger)」の解釈も、少なくとも受けての第三者からすると変わっているようです。
wikiによると、「アルファブロガー(Alpha blogger)」とは、「インターネットにおけるブロガーのうち、そのブログが大きな影響力を持つ者や、多くの読者を持つ者などを指す」と書かれています。
ブロガーの徳力基彦氏らが組織する「FPN(Future Planning Network)」というブログ仲間のグループにおいて、『アルファブロガーを探せ 2004』と銘打ったブログ賞を始めたことから生まれた「和製英語」です。
しかし、では何をもって「大きな影響力」と判断するのか、「多くの読者」とはどのくらいを指すのかが定かではありません。
また、投票で選ばれたはずのブロガーの「不祥事」もあり、その選考方法で中傷もされたようです。
徳力基彦氏は、「アルファブロガー」について、「5人にしか読まれていなくても、5人に大きな影響を与えているのであれば、十分アルファブロガー的なブロガーと言えると思っています」「ファンがいるという事実以上のものをもとめるのは意味がない」などとブログで記しています(アルファブロガーという言葉とWikipedia)。
表彰するほど「大きな影響を与える」ブログの基準が「5人」とは、ずいぶんと“トーンダウン”の印象は否めませんが、要するに「アルファブロガー」とは、任意グループが“人気ブログ”を人気投票で決めた、その称号にすぎないということですね。
八方美人的な書き方ではダメ
『アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社)は、その中から「主にITビジネスや時評といった分野で活躍する『ベストイレブン』の方々」(Amazon)のインタビューです。
アクセスアップや、ネタの探し方、情報の整理、その他ブログ観などを聞いています。
シンプルにまとめれば、ここでも言われているのは「書きたいことを書く」ということ。
八方美人的な書き方ではダメなんですね。
この点についてはためになりました。
ただ、気になったのは、アルファブロガー11人全員の学歴が、大学や大学院です。
しかも、みなさん聞いたことのない大学ではありません。
そして経歴を見ると、引き続き外国の大学で学位をとったり、トップ企業で最先端技術を担当したりといった経験をされています。
そういう人たちが、自分の恵まれた立場で知り得た情報や経験をもとに、自分の意見を述べたブログが人気ブログとして認められているわけです。
そりゃ、ネット掲示板で匿名で勝手なことを書いている連中とは違って、(経歴が本当なら)裏付けがありますし、本来社会的に認められているはずの人達だから、むちゃくちゃな振る舞いもないでしょう。役に立つ専門的な話もあるでしょう。
しかし、それをもって彼らを「人気ブロガー」に投票するのは、学歴や肩書に弱い、日本人の卑屈で脆弱な体質を見るようで、なんとも鼻白でした。
しかるべき立場の人がそこで得た知識や経験や感想を開陳するという、いうなれば「当たり前」のブログ“だけ”が順当に選ばれるって、なんかつまんないと思いませんか。
それらのブログは「役に立つ」「勉強になる」ブログではあるかもしれないけれど、既存の価値観に風穴を開けるようなとてつもないパワーが有るかどうかはまた別の話でしょう。
たとえば、リアル社会の規範や雰囲気になじめなかった“落ちこぼれ”が、実は潜在的に持っている能力がブログを通して評価され、また評価されたことでさらにそのブロガーが力を発揮する、というような、
リアル社会では見いだせなかった能力の発掘
送り手と受け手の双方向の発展
などを“アルファブロガー”なるものに求めてみたいと、私などは思うわけです。
もちろん11人全員とはいいません。1人でも2人でもいいのです。
「アルファブロガー」11人には、そういう人はいなかった。もっともらしい学歴や肩書の人がもっともらしい話をしているだけ。
通り一遍の芸談。
だからつまらなかったです。
投票という「気楽」な行為なら、あえて、(一見)しょーもないブログを選ぶ勇気とセンスが欲しかったです。
2004年時点では、ネット自体の成熟度がその程度だったのかもしれませんが。
まあ、それは2021年の現在でも大して進歩していないかもしれませんけどね。
『アルファブロガー』の問題点
先の徳力基彦氏の説明が「トーンダウン」にも感じられるのは理由があります。
その後、登場した11人の中の一人が、経歴詐称などをネットで指摘されて袋叩きにあっています。
それによって、いったんは全盛期の3割閲覧者が減ったと言われますが、こんにちまでその人はネットから消えていません。
要するに、人気ブロガーというのは、必ずしも記事の評価だけではなく、ブロガーの人格(良し悪しに関わらず)が目立つことも含めて、興味深い(interested in)ブログのことをいうのです。
芸能人の人気と同じですね。
スキャンダルだろうが、炎上だろうが、注目してもらった者の勝ちなのです。
別の見方をすれば、学歴と経歴の光る人の落ち度のない専門的なブログよりも、そうした批判を受けた人が、“それでも”評価される方が、私には面白さを感じます。
むしろその人は、たとえ肩書や経歴などが嘘であっても、その生き様やブログそのものが面白いから生き残っているわけで、それこそ本物の「人気」という見方もできます。
でも、だとすれば、そんな価値判断でしか成立しないねうちに賞を与えたり、順位をつけたり、特定の「人気」ブログをもてはやしたりすることにそもそも意味はあるのでしょうか。
一方、現在は、SNSが発展していますし、Googleもコンテンツの中身を重視するようになりました。
いずれにしても、当時以上に「本物」のブログが求められている時代であることは間違いありません。
人気ブログとはいったいなんだろう。
本書を読んで改めてんなことを考えさせられました。
以上、『アルファブロガー』(翔泳社)は、2005年に上梓されたネットでの世論形成に大きな影響力を持っている11人の人気ブロガーの話、でした。
アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから (NT2X) – FPN, 徳力 基彦, 渡辺 聡, 佐藤 匡彦, 上原 仁
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