シャケ (原作/津流木詞朗、画/土山しげる、ナンバーナイン) は、肩を壊したドラ1投手とブルペン捕手が球界の事件を解決する話です。女性問題、八百長を巡る暴力団とのトラブル、政治家と野球選手による三角関係など、様々なトラブルを解決していきます。
『シャケ』というタイトルは、佐門勉という主人公の姓です。
津流木詞朗さんが原作、土山しげるさんが作画を担当し、ナンバーナインから上梓されています。
ゴマブックスが電子書籍がしているようですね。
この記事では、Kindle版をご紹介します。
本作全7巻は2023年1月11日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
また、2023年1月11日現在、マンガ図書館Zでも、全7巻が無料リストに入っています。
土山しげる・津流木詞朗 『シャケ 1』 #マンガ図書館Z https://t.co/UtaQiYAcnT Kindle Unlimitedも読み放題リストに入っていますね。
— 赤べコム (@akabecom) January 6, 2023
さて、ストーリーは、万年最下位球団・東京ベアーズに入団したゴールデンルーキーの佐門勉投手。
契約金の1億7000万円を、球団に現金で用意させ、それを亡くなった父親の借金清算にあてようとしますが、手違いから、その現金を捨ててしまいます。
しかし、借金返済はメディアで公言しているので、球団から同額の借金をします。
おまけに、肩を故障している佐門勉は、実は投げることができません。
それがバレて、しかもオーナーとは折り合いが悪かったために、寮で同室になった、ファームでくすぶっている東池袋文麿捕手とともに、選手契約を抹消され総務課付で雑用がかりに。
しかし、そこでは、高卒の野球選手では過去にも未来でも本来なら経験できなかった、野球もしくは野球選手絡みのトラブル解決を経験する、という話です。
八百長あり、女あり、ヤクザとの腐れ縁あり、まあ、実際の野球選手にありがちなトラブルが、全7巻にわたって展開されます。
そいつの金看板おろさせるぐらいの毒を握る
では、あらすじを第1巻からかいつまんでご紹介します。
佐門勉は、史上初の1億7000万円で、東京ベアーズに入団しました。
甲子園10勝。うち完全試合3試合。
注目されたのは契約金だけだなく、前代未聞の入団記者会見であること。
本人の座っている前の机の上に、その現ナマがドンと積まれています。
本人にマイクが向けられると……
「おい、銀行屋、サラ金屋。オヤジの借金、払ってやるぜ。いつでも合宿所に取りに来やがれ」
寮では、10年間捕手で芽が出ない東池袋文麿と同室の予定。
猿渡寮長が、片付いていない部屋を片付けるよう促します。
「10年も芽が出ないのに、お前さんが首を切られないことが不思議だよ。このバッグいらねえのか」と指さしたのはPIMAというブランド名の入ったキャリーバッグ。
「いらねえ」と東池袋文麿。
寮長は、そこに、部屋に散らばっているエロ本を詰めて、「これだけは出しておいてやるから、あとはちゃんと掃除しとけよ」と言って、キャリーバッグを引きずりながら部屋を出ます。
そのとき、佐門勉が寮に到着。
マスコミが、バッと駆け寄ります。
「佐門くん。契約金は本当に、お父さんの借金返済に充てるんですか」
「俺がオヤジの借金を返済する様子は、テレビの前でやるからよ。楽しみに待ってな」
そう言って、寮に入る佐門勉と、ゴミに出そうとかばんを引きずる猿渡寮長がすれ違います。
「あんたが寮長かい。よろしくな」
そこにマスコミのカメラが。
「よし、いただき。そのままそのまま」
佐門勉は、持ち物が入っいるPIMAというブランド名の入ったキャリーバッグをおいて、写真撮影に応じます。
そうなんです。
猿渡寮長の捨てようとしているキャリーバッグと、佐門勉が身の回りの荷物を詰めたキャリーバッグは、同じPIMAというブランド名の入ったものなのです。
撮影が終わり、お互い自分が持っていなかったキャリーバッグ保引きずって、お互いの目的地に。
部屋に入り、バッグを開けた佐門勉は驚きます。
「ぎぇー、俺の金がエロ本に……」
お互いのバッグが、かわってしまったんですね。
しかし、マスコミに大大的に宣伝した以上、借金取りはやってきます。
「俺がなんとかしてやらあ」と、東池袋文麿が連れてきたのは、ヤクザのフロント、というより正業の金融会社。
社長の楠目は、東池袋文麿に弱みを握られているので、言いなりになります。
なんとかお金の算段は付きましたが、その筋の追い込みはきつい。
そして当日、無事、債権者にはカネを返しますが、その合計は1億4000万円。
「東池袋さんよぉ、3000万円残っているはずなんだけど、すっからかんなんだ」
「借金すりゃ、仲介者に礼をするのは当たり前のことだろうが」
「仲介者?あんた、まさか」
「ああ、3000万円は俺がもらった」
「……て、てめえ、親切づらしやがって、とんでもねえ悪党だぜ」
「おい、ボウヤ。悪党はおめえだろう。その肩で、ボールが投げられると思っているのか。肩がボロボロなのは、てめえが一番わかっているだろうが」
ギクッとする佐門勉。
「こちとら、10年間、2軍でキャッチャーやってんだ。投手の調子は、ひと目で分かるぜ。この契約金ドロボーめ」
東池袋文麿は、タオルをタマ結びして、佐門勉に放り投げます。
「ホラよ、投げ返してみろ」
佐門勉は投げ返せません。
東池袋文麿は、置かれている厳しい現実を佐門勉に突きつけます。
ひとまず、佐門勉の借金は、球団から借り換えることになります。
そして、楠目金融の利息はチャラに。
暴力団から、1億7000万も借りて、いくら短期間とは言え利息がチャラになるはずはないのですが、そこは、東池袋文麿が社長の弱みを握っていたので、事なきを得ました。
「東池袋さん、あんた、いったい何者なんだ」
「東京ベアーズ、万年2軍のベンチキャッチャーよ」
その後、投げられないことがバレてしまった上に、オーナーに楯突いたために、任意引退して球団職員にされてしまった、佐門勉と東池袋文麿。
自由契約にならなかったのは、球団に債務があるからです。
では2人は、単なる球団の雑用係になったのか。
そうではなく、野球界や野球選手に関するトラブルのもみ消し解決の仕事をするのです。
八百長、オンナがらみ、その他政治家や暴力団絡みのトラブルです。
東池袋文麿のやり方は、相手の弱みを握ること。
「握って銭になる男の弱みは、そいつの金看板おろさせるぐらいの毒じゃねえと役にゃ立たねェ」
というのが持論です。
当然、危ない橋をいくつもわたります。
しかし、それによって、「野球バカ」だった佐門勉は、世の中の色々なことを勉強します。
パンチのきいた画風の作品群
というわけで、野球漫画ではありますが、野球の試合自体がストーリー展開に大きく影響することはほとんどありません。
しかし、「こういう野球漫画もあるんだな」と、いったん読み始めたら全7巻を一気に読んでしまうと思います。
今回は、土山しげるさんは作画のみ担当ですが、土山しげるさんのパンチのきいた画風の作品は、これまでにも何冊かご紹介してきました。
土山しげる作品といえば、何と言っても『食キング』(日本文芸社)を紹介しないわけにはいきません。
「B級グルメ店復活請負人」の主人公が、傾いた庶民向け飲食店を再建するストーリーです。
『男麺』(ゴマブックス)は、商社に勤める無類の麺好き主人公が、立ち食いそばや町中華の焼きそばなどで騒動を解決するストーリーです。
どんな揉め事があっても、大衆的な「麺」を食べることで心が穏やかになってハッピーエンドです。
『喰王スペシャル』(日本文芸社)は、食べることが好きなキャバクラ店長が、食べ物で問題を解決する日常を描く漫画です。
“飯テロ”的なエキセントリックなシーンもなく、グルメ漫画の多い作者としては異色ともいえる作品です。
原作者と組んだ作品としては、『漫画版野武士のグルメ カラー版1st01』(久住昌之/原作、幻冬舎)があります。
定年を迎えた還暦男性がありふれた食堂を巡るストーリーです。
こちらのブックスもおすすめです。
以上、シャケ (原作/津流木詞朗、画/土山しげる、ナンバーナイン) は、肩を壊したドラ1投手とブルペン捕手が球界の事件を解決する、でした。
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