デコちゃんが行く:袴田ひで子物語(著/いのまちこ、イラスト/たたらなおき)は、袴田巖さんの姉・ひで子さんの自伝漫画です。といっても、その大半は「袴田巌冤罪事件」についてです。先月下旬に、再審公判でやっと無罪が言い渡された事件です。
袴田事件とは、1966年に静岡県清水市(現・静岡市)で発生した一家4人が殺害されたゴウ盗サツ人・放火事件におきた、日本の司法制度における冤罪の象徴的な事件として知られています。
1966年6月30日、みそ製造会社の専務宅が放火され、焼け跡から専務一家4人の刺殺された焼死体が発見されました。
事件から約2ヶ月後、同社の従業員で、引退したプロボクサーの袴田巌さんが逮捕されました。
取り調べ中に自白しましたが、その自白は後に強制的に引き出されたものであることが判明しました。
しかし、当時の判事は多数決で判決を決め、1968年に静岡地裁で死刑判決が下され、その後の控訴審や上告審でも死刑判決が維持されました。
このへんは、以前映画化されたので、このブログでもご紹介しました。
実刑になった俳優が主演で、多数決を提案した判事役が村野武範、最後まで無罪にこだわった判事役が萩原聖人でした。
【動画】2対1の多数決で下された極刑 苦悩し続けた裁判官、40年後の告白https://t.co/8xl6Zkzmfg
一審の主任裁判官として袴田巌さんの死刑判決を書いた熊本典道さん(2020年死去)。
後に袴田さんの再審請求を支援。
生前、死刑判決を書いたことへの後悔や事件に対する思いを語っていました。 pic.twitter.com/80SxcHU8TK— 朝日新聞デジタル (@asahicom) September 30, 2024
袴田さんの弁護団は再審請求を続け、2014年に静岡地裁が再審開始と釈放を決定しました。
再審では、事件当時の証拠とされた「5点の衣類」が、捏造された可能性が高いことが指摘されました。
2024年9月26日、再審公判で袴田巌さんに無罪が言い渡されました。
本書は、その間、ずっと袴田巌さんを支援し続けた実姉の日出子さんについて描かれています。
長い拘留生活は本人はもちろん家族も大変な苦労を伴う
■速報
58年前、静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審=やり直しの裁判で、静岡地方裁判所は無罪判決を言い渡しました▼詳しくはNHK NEWS WEBでhttps://t.co/VlcQKvMJFp#nhk_video pic.twitter.com/N9JCcTwO6z
— NHKニュース (@nhk_news) September 26, 2024
袴田巌事件では、警察と検察が長時間にわたる厳しい取り調べを行い、袴田巌さんに自白を強要しました。
取り調べは1日平均12時間、長い日は16時間50分にも及び、暴力や精神的・肉体的な拷問が繰り返されました。
取り調べ中には、便器を持ち込んでトイレに行かせないなどの非人道的な方法も用いられました。
こうした、可視化されていない取り調べと、長い拘置所暮らしで、袴田巌さんは、精神的におかしくなってしまいました。
日出子さんが面会に行っても、姉とは判らず、ぶつぶつ意味不明のことを言って、すぐに席を立ちました。
しかし、これは死刑を前提とした長い拘留、とくに罪状を否定している人にありがちなことだそうです。
3食腹いっぱい食って、元気いっぱいのキジマなんとかという毒婦は、例外なのです。
日出子さんだけでなく、弁護団、さらには相談を受けた保坂展人(当時)衆議院議員までもが面会をして、袴田さんの意識が正常に戻るための努力をしました。
そして、日出子さんが姉ということは認識するようになります。
でも、それ以外のぶつぶつは変わりません。
それでも、わずかな前進を、面会者たちは喜びます。
2014年の釈放の時点でも、実は袴田さんの意識はまだ完全には戻っていなかったそうです。
それでも、時間をかけて少しずつ意識は戻り、袴田さんの無罪を主張した裁判官が寝たきりになったからと見舞いにも行っています。
日出子さんたち家族は、やはり周囲から白い目で見られたそうです。
釈放前に、両親や兄はなくなってしまいました。
日出子さんは、巌さんを支えながらも働き続け、マンションを建てて、釈放の際に帰ってこれる家を用意したそうです。
わたしだったら、たぶんそこまで至らないです。救援活動しながら、職をもってマンションまで建てるなんで。
感動と感服に貫かれた一冊です。
そこにいない人のことを話題にするのは気をつけよう
東京新聞は今日の朝刊1面に、袴田巌さんへのおわびを掲載しました。
1966年当時の報道がどうであったかを振り返り、冤罪に加担しない決意を綴っています。 pic.twitter.com/aMoWBb8Yr8— 編成記者A子 (@e_i_k_) September 27, 2024
事件については、一貫して支援してきたのが、現世田谷区長、当時の保坂展人衆議院議員です。
実際に保坂さんも面会しています。
社会民主党なんて、今やもう泡沫政党扱いですが、このように、打算的な人がメリットがないと相手にしないことを拾い上げてくれる功績はあるのです。
自民党や立憲民主党なんて、こういう仕事は絶対にしませんからね。
もちろん、社会民主党が言ってることで、出鱈目でおかしなこともあります。
要するに、どんな政党だろうが、無謬万能でもなければ、逆にアタマから全否定でもだめだということです。
それはともかく、冤罪の災禍は、いつ誰に襲いかかるかわかりません。
たとえば、痴漢冤罪。
電車内にカメラも設置されているそうですが、混んでいる時にはなかなか決め手のシーンは撮れないのではないでしょうか。
私は電車に乗ると、つり革が遠くなっても、人と触れ合わないところに移動しています。
あと冤罪とは少し違うかもしれませんが、そこにいない人のことを話題にする人とは、かかわらないようにしています。要するに陰口ね。
そういう人は、何言われているか、わかったものではないし、人間関係のトラブルで、ややこしいことに巻き込まれないようにね。
みなさんは、日常的に、気をつけている人やシチュエーションはありますか。
以上、デコちゃんが行く:袴田ひで子物語(著/いのまちこ、イラスト/たたらなおき)は、袴田巖さんの姉・ひで子さんの自伝漫画、でした。
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