ドカドカドッカン先生 全2巻(望月あきら著、オフィス漫)は、かつて『小学五年生』に連載された小学校を舞台にした学園漫画です。本当は資産家で大きな寺院の跡取り息子が、それを隠して自分が理事である小学校教師になり、ドタバタ事件を巻き起こします。
『ドカドカドッカン先生』(全2巻)は、望月あきらさんが描き、現在はオフィス漫から発売されています。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
望月あきらさんといえば、先日も『サインはV!』をご紹介したばかりです。
バレーボールで頂点を目指す女性たちを描いた昭和のスポ根漫画です。激しいライバル意識や身体的ハンディキャップの克服、魔球などで人気沸騰し、テレビドラマ化や映画化されました。
さて、本作は、ドカドカドッカンと、大きな音を立てるでっかいことをやらかす先生、綾小路光浩が主人公です。
彼は大きな寺の跡取りで、学校の理事なども勤めており、わざわざ小学校教師になる必要もありませんでした。
が、教職の好きな彼は、父親の住職に内緒で、変装して別人を装い、でも同じ名前で自分が理事をつとめる学園、井矢奈小学校の小学五年の担任で教師生活を送るという話です。
いくらなんでも、名前が同じならバレるだろうと思いますが、そこは漫画なので、上手に、瞬時に変身しています。
自分の素性を隠して、というストーリーは、『おくさまは18歳』がおなじみですが、同作は集英社『週刊マーガレット』に1969年8月~1970年8月まで連載されているので、『ドカドカドッカン先生』が先に始まっています。
また、ドカドカドッカンというのは、東宝映画の社長シリーズ『社長学ABC』で、藤岡琢也さん演じる宴会部長のセリフにあるのですが、こちらも封切りは1970年ですから、やはり『ドカドカドッカン先生』が先なのです。
そういう意味では、実はかなり先駆的な作品なのかもしれませんね。
『小学五年生』(小学館)という月刊の学年誌に連載されていました。
小学館の学年誌は、学年ごとに発行されており、それぞれ連載漫画と読み物で構成されていました。
2010年(平成22年)2月まで『小学五年生』は休刊となり、今は『小学一年生』だけが刊行されているようです。
みなさんも、子供の頃、読んでいませんでしたか。
小学館の学年誌。
まあ、持ち上がりもありますが、大抵は1年で連載は終わるんですよね。
作品によっては、複数の学年に連載されているものもあったので、その場合はストーリーも持ち上がりになるのですが、『ドカドカドッカン先生』(全2巻)は、1969年~1970年の1年間だったので、持ち上がりではなかったようです。
本作は2023年2月28日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
地元の名士と小学校教諭の2つの顔
第1話の『ドッカン先生登場の巻』から。
小学5年の女の子3人組が、新任の先生はどんな先生だろうと話しながら登校しています。
そこですれ違ったのが、綾小路光浩。
若い2枚目です。
その直後に現れたのが、髭面で下駄履きのタバコを咥えたむさくるしい男。
『ゆうひが丘の総理大臣』の大岩雄二郎そっくりです。
女の子たちの後を追いかけてきます。
新任の先生なので、井矢奈小学校までご一緒なのです。
そして朝礼。
綾小路光浩と挨拶。
要するに、別人を装っているのですが、2枚目の方とは同姓同名ということにしています。
カタキ役は鈴木太郎先生。
図工と音楽担当といいますが、『すきすき、ビッキ先生』の音楽担当だった伊矢見先生、『ゆうひが丘の総理大臣』の伊井加一先生の役どころで、顔までそっくり。
自称、マイク・ピンキーだそうです。あだなおフランス
校長先生は、名前なし。あだ名たれ目。
古井加奈子先生。あだなオールドミス。ただ、この先生は結局ほとんど出番はなかったですね。
そして、マドンナ先生は、黛ゆかり先生です。
ぼやっとしているように見えるドッカン先生ですが、背後から飛んできたサッカーのボールに気づくと、素早く蹴り返して、鈴木太郎先生に直撃させます。
さらに、怒った鈴木太郎先生がそのボールを蹴ると、今度は意図せず黛ゆかり先生の背後に飛び、これまた鮮やかに蹴り返して鈴木太郎先生にあたってしまいます。
放課後、校門を出てきたドッカン先生は、誰もいない小屋に入ります。
後をつけてきた女の子たちは、こっそりその小屋を開けると、誰もいません。
反対側にあるドアを開けて外に出ると、2枚目の綾小路光浩が、車で走り去るところでした。
要するに、彼は小屋で、バタバタと2枚目に戻ったり、むさ苦しい先生になったりしているわけです。
で、毎回慌ただしく2役変身しています。
ところが、最終回では、結局それがバレてしまうのですが、周囲の反応としては「あっそう」という感じで、だったらなんで2役と思うんですけどね、名前も同じだし。
まあ、小学五年生向けの漫画ですから、あまり難しくしてもね(笑)
プロトタイプと翻案とリメイクの違い
本作『ドカドカドッカン先生』も含めて、望月あきらさんは、学園漫画を3作描いています。
時系列に並べると、まずは『週刊マーガレット』(小学館)に1965~1966年の2年間連載した『すきすきビッキ先生』。
次に本作。
そして、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、1977年12号~1980年16号まで連載された『ゆうひが丘の総理大臣』です。
前2作は、もちろん作品として独立し完成したものですが、『ゆうひが丘の総理大臣』のプロトタイプ的な役割も果たしています。
プロトタイプとしうのは、前身作品です。
タイトルや登場人物名などは違うのですが、設定やストーリーが、お色直しで後発作品に使われている場合、使われたほうが前身作品、すなわちプロトタイプといいます。
これが、別の作者によって行われると、「翻案作品」なんていいますね。
さらに、同じタイトルでありながら時代に沿って細部を変えたものをリメイクといいます。
本作は、主人公が敵役の先生の足を踏んづけて、「今アマガエルを踏んづけたみたいな音がしたが……きっと気のせいだろう」というシーンがしばしば登場しますが、これは『ゆうひが丘の総理大臣』に引き継がれています。
そもそも先生のキャラクターは、本作と『ゆうひが丘の総理大臣の大岩雄二郎がそっくりです。
下駄履きで、タバコを咥えて、あごひげ、ジーンズの上着、ボサボザ頭……
『すきすきビッキ先生』や『ドカドカドッカン先生』は、実はお金持ちの御曹司なのに正体を隠して変装して……という設定ですが、『ゆうひが丘の総理大臣』の大岩雄二郎は孤児という設定であるのと、前2作に比べて、より現実的な学園生活を描いたことから、それらのようなドタバタの設定ではなく、かつては柔道の王者で留学経験もあるのに一介の教師をしている、という設定にしています。
そして、男女とも3人組が、生徒・児童の中心であることは、3作共通しています。
三部作としてみると、改めて本作の味わい深さが感じられます。
以上、ドカドカドッカン先生 全2巻(望月あきら著、オフィス漫)は、かつて『小学五年生』に連載された小学校を舞台にした学園漫画、でした。
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