ハゲに悩むー劣等感の社会史(森正人著、ちくま新書)をご紹介します。タイトル通り、ハゲのコンプレックスはどこから来ているのか

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ハゲに悩むー劣等感の社会史(森正人著、ちくま新書)をご紹介します。タイトル通り、ハゲのコンプレックスはどこから来ているのか

ハゲに悩むー劣等感の社会史(森正人著、ちくま新書)をご紹介します。タイトル通り、ハゲのコンプレックスはどこから来ているのか、脱毛への不安と恐怖が生み出される背景は何か、などについて調べ、あまた存在する発毛・育毛の民間療法についても振り返っています。

先日も、髪についての書籍をご紹介しました。

髪は増える!(山田佳弘著、自由国民社)。相変わらずネットは、毛髪に関する広告や関連書籍・雑誌記事の情報も多いので読んだ
髪は増える!(山田佳弘著、自由国民社)。相変わらずネットは、毛髪に関する広告や関連書籍・雑誌記事の情報も多いので読んでみました。薄毛・育毛といえば、ダイエットと並ぶ“お悩み系”キーワードの決定版といえますが、情報過多ということは、決め手がない、ということでもあります。

同書は、髪の「増やし方」について書かれていましたが、本書は、「ハゲの歴史」について書かれています。

タイトルが、お悩み系としては、あまりにもド直球なので、タイトルで思わずクスッとしてしまいました。

コンプレックスにもいろいろありますが、率直に言って、禿はその中でももっとも救いのないもののような扱いです。

加齢で仕方のないことだと思いきや、最近は若い人も悩んでいるのですね。


たとえば、「ロマンスグレー」はあっても、「ロマンス禿」とはいわれないように、禿が好意的に受け止められることはほとんどありません。

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悩みは企業やマスコミに作られるもの?

著者の森正人さん(日本文化論)によれば、昔からハゲ頭を茶化す風潮は存在し、落語にも「やかんなめ」などにハゲ頭が登場しています。

ただ、それが商業的な狙いとして扱われたのは、高度成長期以後だといいます。

その背景として、頭髪がらみの産業が大変な勢いで伸びてきたことを本書は述べています。

本書には、具体的な商品名や成分も、懐かしい物も含めて次々でてきます。

リアップ、ミノキシジル、ロゲイン、ヨウモトニック、加美乃素、ハツモール、カロヤン、スウェルチノーゲン、薬用不老林、紫電改、ササトニック、玄華、薬用ペンタデカン、薬用ヘヤークロン、薬用麗髪恵、冠髪草、ヤクヨウクロノス、ステリアンG、グローリッチ、薬用髪活、薬用トニックSP……

各商品、成分についての解説は本書でご確認ください。

要するに、こうした商品のメーカーにとって、禿は“放っておいてはならない国民的悩み”でなければならないわけです。

同様に、女性が「痩せている」ことが綺麗だとする我が国の価値観は、1967年にツイッギーが来日して以来というのが定説ですが、彼女の来日は、東レ、トヨタ、森永製菓の3社合同招待によるものでした。

つまり、やはり商業的な狙いで刷り込まれた価値観と見ることが出来ます。

多くの国民が踊らされている、ダイエットだのフサフサ髪だのといった「美的」価値観は、大企業が売らんかなで広め刷り込んだ価値観というわけです。

本書は、それだけでなく、禿が社会的にどう扱われてきたか、ということを江戸時代より前から調べていますが、そこは資料的価値はあるものの、学者さんの書き物なので、読み物としてはちょっと退屈かもしれません。

いずれにしても、禿事情の今昔について網羅されている力作であると思います。

禿にがんなし、白髪に卒中なし、の虚実


よく言われるのは、「ハゲにがんなし。白髪に卒中なし」。

薄毛者を力づける(?)ことになるでしょうか。

ガンにはなりにくい(遠い)人となりやすい(近い)人がいます。体質といってよいかもしれません。
例えば男性よりも女性の方がガンになりにくい、ガンに遠いといわれます。ただ男性でもおつむの毛の薄い人は、ガンに遠いようです。「ハゲにガンなし、白髪に卒中なし」ということばがあります。かつてある大学医学部から、ハゲにガンが少ないという研究発表がされています。(中略)
したがって、若い時から頭の髪がうすくて(若ハゲ)、タバコを吸わず、果物、緑黄色野菜、とうふ、魚が好きな方は、確率的にもかなりガンになりにくい、そしてひいては長寿に向かっている、と言うことになると思います。(医療法人つくばセントラル病院公式サイトより)

でも、いろいろ調べてみたのですが、科学的な根拠はないんですよね。

たとえば、久留米大脇坂外科の助手だった柿添建二医師が、胃がん患者の髪の毛を調べたところ、禿の割合が4.6%と少なかったという調査結果が有名です。

しかし、これは、「A型に政治家が多い」という「調査」と基本的には同じで、たまたまそうであったというだけで、直接の因果関係は何も証明されていません

禿の原因のひとつとされるDHT(デヒドロテストステロン)ホルモンは男性ホルモンで、一方女性ホルモンのエストロゲンは毛髪を発達させ、毛髪の成長期を持続させるはたらきがあるので、一般に女性のほうが男性よりも髪が多いといわれています。

エストロゲンはコレステロールを抑制する働きもあるので、「禿げていない人は禿げている人に比べると女性ホルモンが多いから脳卒中を引き起こす可能性が低い」という推理は成り立つかもしれません。

でもハゲの原因は、これをすればなる(ならない)というものは実はわかっていません。

ただ、加齢のほかに、上記のDHTが抑制するという「ホルモン説」、親や先祖の遺伝子によるという「遺伝説」、喫煙、偏食などによるとする「生活環境説」、睡眠不足や多忙、心配事に悩まされるなどの「ストレス説」、不十分、もしくは過度の洗髪によるという「不適当なヘアケア説」などがあります。

それらが、単独、または複合的に影響して発毛阻止をおこしているのだろう、というところまでがわかっていることです。

私自身は、今のところ、かつらも白髪染めのお世話にもなってはいません。

でも、だいぶ細くなってきましたし、もみあげのあたりを見ると、白髪染めは使うなら使ったほうがいいかな、という感じになっていますが、まあ、深刻になったらそのときに考えようという成り行き任せです。

以前、某育毛会社が、無料で診断して、1回洗髪してくれるというので行ってみましたが、育毛剤とシャンプーと漢方薬とサプリメントのセットで、ン十万といわれたので、そこまでお金をかけるほど切実に望んではないないのでお断りしました。

女性のウィッグ広告も見る機会が増えてきましたが、みなさんの“なが~い友達”とのお付き合いは、いかがですか。

以上、ハゲに悩むー劣等感の社会史(森正人著、ちくま新書)をご紹介します。タイトル通り、ハゲのコンプレックスはどこから来ているのか、でした。

ハゲに悩む: 劣等感の社会史 (ちくま新書 1008) - 森 正人
ハゲに悩む: 劣等感の社会史 (ちくま新書 1008) – 森 正人

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