『ポイズン・ママ~母・小川真由美との40年戦争~』は、一人娘の小川雅代による壮絶な毒母ぶりをどこかユーモラスに描いています。壮絶すぎるゆえにユーモラスなのか、毒親ほど子は親にこだわりを持つからなのかはわかりませんが、母子について考えさせます。
本書の内容
『ポイズン・ママ~母・小川真由美との40年戦争~』(小川雅代著、文藝春秋社)に書かれている小川真由美といえば、1970年代~1990年代にかけて、テレビドラマ、映画、舞台で主役を何本もつとめてきたスター女優です。
Wikiには、テレビドラマが、『孤独の賭け』『浮世絵 女ねずみ小僧』『アイフル大作戦』『積木くずし』<1983年版>『葵 徳川三代』など紹介。
映画は、『母 (1963年の映画)』『二匹の牝犬』『八つ墓村』『鬼畜』『復讐するは我にあり』『食卓のない家』などが枚挙されています。
そして、もとは文学座の座員で、「杉村春子の後継者」といわれた人ですから、舞台の実績も十分です。
それほどのスター女優ですが、家庭生活も経験したかったのか、細川俊之との結婚歴があり、その時に娘の雅代を産んでいます。
その娘雅代が、赤裸々に語る、母親としての小川真由美の告発本です。
毒親と子の複雑な関係
『ポイズン・ママ』を読みながら・・・子供の頃は子供なりの素直な視点で、あんなひどい目にあったのに有名人の母をどこか憎めないキャラとして書いてる所に作者の優しさを感じる。わたしの身近なある人物とも共通点が多いので、その箇所だけを「鬼のようにw」呟いてみる。
— カナ (@livebluesy) April 28, 2012
小川真由美の離婚後、小川雅代は小川真由美に引き取られます。
家族は叔母一家との5人家族。
小川雅代は、見栄っ張りでわがまま放題で、男性関係も派手な小川真由美になつけません。
一方、小川真由美は離婚や大女優ゆえのストレスから占いに凝り始めます。
とにかく緑と紫が絶対だめで、絵本の表紙の葉っぱの絵まで、黒いマジックで塗りつぶすほど徹底。
そのこだわりは、女優としての役作りにはプラスになるのでしょうが、家族としてはたまりません。
高校も途中でやめさせられ、名前を変えさせられ、付き人が盗んだ300万円の犯人の濡れ衣を着せられ、「48日以上この家にいるとあなたが不幸になる」と実家を追い出されて何度も引っ越しを強要され、頻繁に5~7日間の飢餓状態に追い込まれ、などなど壮絶なエピソードは数しれず。
そりゃ、なつくどころか憎んだっておかしくありません。
少なくとも母親としては論外です。
でも、どんな母親でも子どもは親を選べません。
エキセントリックなエピソードを次々披露することで母に対する「復讐」を行う一方で、憎しみ一色ではなく、母・小川真由美への複雑な愛憎を思わせるユーモアを忘れない書き方が何とも切ない。
やがて、わがままが過ぎた小川真由美は仕事を干されるようになりましたが、今度はマスコミで霊験者として紹介される女性宗教家の元で尼僧として得度。
そして怪しげなビジネスに乗っかり失敗してしまいます。
小川雅代は小川真由美のもとを離れ5年。小川真由美とは一切連絡を取っていませんが、小川真由美が施設に入るお金のために本を書いた、とあとがきで告白しています。
やはり娘は親と完全に縁を切ることはできないのでしょうか。
では、父親の細川俊之はいったい何をやっていたのかといえば、娘が困っていても助けてはくれなかったようです。
離婚して離れてしまうと、実父でもそんなものなのでしょうか。
親を絶対とする人が非難したようだが……
Wikiによると、出版時の様子が説明されています。
2週間後に出版された田房栄子の漫画「母がしんどい」と共に、毒親・毒母ブームの火付け役となり、社会現象が起こる。発表と同時に、覚悟していた好奇の目や偏見から、「親を悪く言うなんて!」と叩かれたり、小川真由美を盲信するファンからの反撃にあったりしたが、精神科医である岡田尊司著書の「母という病」の参考文献になったり、テレビや雑誌で取り上げられ、毒親・毒母の認知は確実に上がっていった。
この「親を悪く言うな」というのは、どうにかならないのでしょうか。
たしかに、自分の家族とのゴタゴタをいちいち表沙汰にするなといいたくなるような、身内ネタの好きなタレントもいますが、それも事と次第によります。
小川雅代の場合には、明らかな虐待、ネグレクト、過干渉など、毒親満貫であり、それを明らかにすることは社会的公益性があります。
しかし、たぶん「事と次第の問題」ではなく、文句を言う人達は、親を無条件に絶対的な立場に置けという意見ではないかと思います。
我が国には、未だに家制度の因習を事実上残す目的で、子は親に無条件で従う奴隷であることを示す法律(民法第818条)があります。
たとえば、親であることをタテに、子に特定の選択や価値観を強要する毒親は、今の日本では違法行為が公然としたものでない限り「合法」になってしまうのです。
それが、親が絶対などという、インチキ道徳を生み出す原因だと思います。
そのインチキ道徳のおかげで、たとえ毒親でも、いえ毒親だからこそ、子は自分が尽くし足りないのではないかと、自分の人生を犠牲にして自分を追い詰めてしまうのです。
親は親の意思で子を生んだのです。
子に対しては、親のほうが「生まれてくれてありがとう」であり、子に対して恩着せがましく、苦労して育ててやっただの、親孝行しろだのと言うのは筋違いも甚だしい。
自分が勝手に生んだのですから、責任持って育てるのは当たり前の話です。
ですから、たとえば毒親に対して、子だからといって人生を犠牲にしても当然なんだ、ということはないのです。
そんなことも考えさせてくれる書籍でした。
以上、『ポイズン・ママ~母・小川真由美との40年戦争~』は一人娘の小川雅代による壮絶な毒母ぶりをどこかユーモラスに描いています、でした。
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