マンガでわかる!統合失調症(中村ユキ著、当事者のみなさん/福田正人監修)は、症状、外来、入院生活を漫画化して解説しています。100人に1人はいるといわれる統合失調症と上手に付き合いできる社会にしていけるためのコミックエッセイです。
『マンガでわかる!統合失調症』は、漫画家の中村ユキさんの作画、当事者のみなさん/福田正人さん監修によるKindle書籍です。
福田正人さんは、Amazonのプロフィールによると、1958年栃木県生まれ。東京大学医学部卒業。現在、群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学准教授(書籍刊行当時に掲載されていたもの)です。
コミックエッセイであり、医学的裏付けもとられているということです。
本書は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
統合失調症は、簡単に述べると、心や考えがまとまりづらくなってしまう病気です。
センパイの何気ないひとことがキッカケで……
『マンガでわかる!統合失調症』の「商品の説明」は、「自分の病気を正しく知って、上手につきあおう」と記載されています。
つまり、病気になった側からの書籍ということです。
といっても、だからそうでない人は関係ない、ということではなく、自分もそうかもしれない、自分がそうなったらどうするか、という視点で読むべき書籍だと思います。
登場人物は、創作の一家と、ナビゲーターとして中村ユキさん本人の一家が登場します。
創作の一家は、「当事者のみなさん」によって構成された症状とキャラクターであろうと思われます。
中村ユキさんの実母が、統合失調症歴34年目だそうです。
その他、アキクサインコのスモモ、セキセイインコのポポ、文鳥のサクラ、オカメインコのクーなども登場します。
読み物としての主人公は、創作一家のこころ(24)。
母(49)、父(53)と暮らしています。
こころが発症したのは、ストレスが契機になっています。
3年間、交際した男性を「親友にとられた」のが社会人1年目。
仕事に打ち込んで、嫌なことを忘れようと思ったのに、仕事上の失敗が続き、上司と先輩から叱責。
布団に入っても眠れない日が続き、なんだか不調。
「仕事に行きたくないなあ」とつぶやくと、仕事一筋でキビシイ父親は、「まだ半年しか勤めてないくせになさけない!!」と批判し、心配性の母親は、「会社でなにかあったの」と追及してくるので、結局気合で通勤。
職場に行けば、先輩からは「もう失敗するなよ」と圧をかけられ、気持ちに逃げ場がなくなります。
「センパイの何気ないひとことがキッカケで、まわりの目がとても気になるようになり、常に不安と緊張で気が休まらなくなってしまった……」
そんなある日、こころは、悪口を言われていることに気づきます。
「あいつ、仕事全然できないじゃん」
「空回りしてるよ」
先輩が、自分にニコニコ手をふるので振り返すと、今度は「先輩に手を振るなんて生意気なやつ」「常識がないのよ」という脳内からの声。
そうです。
始まってしまったんです、幻聴が。
統合失調症の発症です。
以来、いつもヒソヒソ声につきまとわれることとなり、人と会うのが怖くなって会社にもいけなくなります。
しかし、父は怒り、母は悩むので、ますますこころを追い詰めるだけ。
会社は退職し、こころは、「みんなが私の悪口を言っている」「部屋に盗聴器を仕掛けられている」など両親に訴えます。
ことここに至り、母親はこころを病院に連れていくことを決意します。
そして、統合失調症の診断。
当初は外来で、自宅養生していましたが、幻聴が聞こえなくなったことでよくなったと思い、薬を飲まなくなって再発。
結局入院も経験し、同じ病気の仲間との交流もあります。
とくに、年配の仲間の一人の、棺桶退院という話にこころはびっくり。
以前は、「精神分裂症」は治らないとして、生涯社会から隔離されていたのです。
つまり、退院できるときは亡くなったとき、という意味です。
こうしたストーリーを通して、時折中村ユキさん一家のビョーキとのつきあい方のコツが紹介されています。
これまでご紹介した統合失調症についての漫画
統合失調症については、統合失調症になった木村きこりさんの妄想・幻痛・幻聴を描いたコミックエッセイ『統合失調症日記』(作画、ぶんか社コミックス)をご紹介したことがあります。
周囲の人との付き合いにも苦労があったこと、往来で「危ない人」になったことなどをリアルに描いています。
『「子どもを殺してください」という親たち』(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています。
統合失調症などの子弟を、説得で病院に移送するサービスを日本で初めて創始。移送後の自立・就労支援にも携わっています。
統合失調症についての、簡単なご説明はそれらの記事で書かせていただきました。
統合失調症は、100人に1人弱が発症するといわれていますが、うつ病やパニック障害などに比べると、馴染みが少ないかもしれません。
それは別の言い方をすれば、うつ病やパニック障害はある程度市民権を得ているのに、統合失調症はまだそうなっていない、ということでもあると思います。
それだけに、こうした体験コミックを読むことで、統合失調症(の患者)への理解を助けてもらうとともに、自分にもそうした所見はないか、自分がもしそうなったらどうふるまえばいいか、を考える縁(よすが)としたいものです。
以上、マンガでわかる!統合失調症(中村ユキ著、当事者のみなさん/福田正人監修)は、症状、外来、入院生活を漫画化して解説、でした。
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