マンガ自営業の老後(上田惣子、文響社)は、53歳の女性イラストレーターが老後対策を取材しながら実践したリポートを漫画にした書籍です。個人事業主の老後のためにできることのすべてと、保険や年金の専門家、老後に備えている人たちに話を聞いています。
老後に備える実用コミックエッセイ
『マンガ自営業の老後』は、53歳の女性イラストレーター・上田惣子さんが、文響社から上梓した書籍です。
フリーランス(個人事業主)の老後に不安をいだき、保険や年金の専門家、同じフリーランスの人などに話を聞き、実践した報告を漫画化しています。
「こわい! でも読んでよかった」と大好評! 7刷決定しました、とAmazonには記載されています。
本書によると、何でも断らずに仕事をしていた著者は、若いときは仕事があったものの、47歳に仕事が激減したことに気づいた。
そして、将来が不安になった。
そこで、老後に備えまくっている30代のデザイナー、自分より高齢のフリーランス、不動産、年金、保険などの専門家などに話を聞き、それだけでなく実際に年金に入るなど実践も行い、その様子を漫画化しています。
若いときは仕事があったが、年を取ってから仕事が減って将来を憂う。
これは、フリーランス(個人事業主)なら誰でも経験があることかもしれませんね。
フリーランス、たとえば著者のようなイラストレーターが仕事を請け負うのは、契約上は出版社なんですが、実際の窓口はそこの一社員。
その人が、使いたくなくなったら、仕事はなくなります。
そうでなくても、その人が異動、退職などしたら、それっきりです。
そういう不安定な仕事です。
で、編集部の制作は、そんなに年配の人はいません。
自分が若いうちは使ってもらえるのですが、だんだん社員よりも自分のほうが年上になると、向こうも使いにくいですよね。
それと、以前はできていた徹夜仕事がちょっときつくなるとか、自分の側でも加齢による制約が生じてきます。
あとは、時の移ろいでトレンドが変わりますから、自分のセンスがだんだん通用しなくなってくる、ということもあるかもしれませんね。
もし、サラリーマンだったら、今は早期退職制度という肩叩きもありますが、でも簡単に解雇はできませんから、何が何でも会社に居座れば、多少は減っても給料も社保もあります。
でも、フリーランスは成果物を収めてナンボですから、仕事がなくなったらそれっきり。
年を取ったら、いったいどうなるのだろう、と不安になるわけです。
そのときになって泣かないように、保険や年金をしっかりしよう、という「老後不安脱出ルポ」が本書の趣旨です。
取材した人は、以下のとおりです。
- 老後に備えまくっている30代のデザイナー加藤さん(確定拠出年金、小規模共済)
- 不動産コンサルタント長谷川高先生(大家さんは甘くない)
- 年金と保険のスペシャリスト田中章二先生(年金未納者、何歳まで間に合うの?)
- 65歳のフリーライター佐竹さん(国民年金暮らしと家計を大公開)
- 現役サービス業 80歳もつ焼き屋の山本さん(80代で働ける幸せ)
- 管理会計のプロ! 65歳売れっ子公認会計士 林總先生(自営業の会計、キャッシュフローについて)
ということで、本書は、ライター、イラストレーター、カメラマン、デザイナー、プランナー、ITエンジニア、ミュージシャン、カフェオーナー、ネイリスト、コンサルタントなどの個人事業主必読! !と、実用コミックエッセイを標榜しています。
多くの自営は家なんか買えません!いや買いません
本書は、フリーランスの人が、知っておいた方がいい年金やマイホームなどについて書かれています。
それらの情報は役に立つとして、私は著者には感情移入できなかったな。
だって、フリーランスって、最初からそういうものだってわかってるわけじゃないですか。
それでも選んだからには、貧乏は承知の上。もしくは、ある年齢で別のステージに移る人生設計を構築するのが順当な方向性ではないかと思います。
やれ保険だ年金だって、だったら公務員やサラリーマンになれよっていう話ですよね。
そもそも、著者はなんだかんだいって一軒家を買っています。
頭金2000万円出した上に、35年ローンまで組んでる。
事実婚のオットと婚姻までして。
しかも、もう払い終わった。
どこかせ老後不安なんですか。
まあたしかに、いったん家を持てば、それは収益のもとにもなります。
隣地の状況次第では、条件のいい「地上げ」にのれるかもしれないし。
そこが気に入らなければ、最悪貸したっていいですよね。
でも、多くの自営は、そんなお金ありません。
たぶん、著者夫妻は、子供がいないことと、オットの実家が教員で、裕福と言うほどではないにしても、いざとなったら転がり込める家なのかな、なんて勘ぐりました。
ただ、自分たちが住むということなら、そもそも賃貸じゃなんでいけないの? という気もします。
たしかに、賃貸物件を高齢者に貸さない、という話はあります。
さすれば、将来が不安だと。
ただ、それは新規の場合ですし、今や空き家800万戸の時代、ますますの高齢化社会に向かって、オーナー側もそうは言っていられなくなると思います。
それに、家を持っているからといって、コストがかからないわけじゃないですから。
家賃こそかかりませんが、維持費はかかるんですよ。
屋根が壊れた、雨漏りがした、シロアリが出た、固定資産税の支払い……家の価値は償却していく。
自営の場合、ローンと家を抱えている方が、よほど将来のリスクはあると思います。
著者の場合、幸い、乳がんになっても仕事に復帰されていますが、私の妻は火災で気道熱傷になってからは、ほぼ仕事はしていません。
乳がんはまさに不幸なことでしたが、復帰できたのは運も良かったと思います。
しかも、保険金300万もらったそうです。
どこが貧乏なんですか。
ことほどさように、著者の本書における老後の道筋づくりは、そういう「恵まれた」前提なんですね。
そんな個人的体験を、「自営業の老後」などと全称命題にされてもなあ。
「アタシの老後」ならわかりますけどね。
じゃあ、オマエだったらどうするの、という話ですが、私はまあ、いざとなったら生活保護しかないでしょうね。
住居は、今から公営住宅を応募しまくるとか。
ミニマリスト流行りですし、正直、本書にはそういうサバイバルを期待していました。
持たざるものは、どうやって生きていくかという……。
持たざるものは持ちなさい……が本書のコンセプトですよね。
う~ん。なんのひねりもない。
よりによって、家を買い、年金や保険をしっかりと付保する自営業とは……。
登場人物が「無駄に」高学歴だったという『サザエさん』みたいなもので、つまらないことこのうえないですね(笑)
ま、あくまでもそれは「持たざるもの」である私個人の感想ですけど。
以上、マンガ自営業の老後(上田惣子、文響社)は、53歳の女性イラストレーターが老後対策を取材しながら実践したリポートを漫画にした書籍、でした。
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