ヴィヨンの妻(太宰治著、青空文庫)は、放蕩夫の妻の視点で描いた、太宰作品としてはめずらしくカリカチュアライズされた短編小説

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ヴィヨンの妻(太宰治著、青空文庫)は、放蕩夫の妻の視点で描いた、太宰作品としてはめずらしくカリカチュアライズされた短編小説

ヴィヨンの妻(太宰治著、青空文庫)は、放蕩夫の妻の視点で描いた、太宰作品としてはめずらしくカリカチュアライズされた短編小説です。6月19日生まれの太宰治さんは東京帝国大学仏文科を中退、共産党新派活動からの脱落、自殺未遂、心中、薬物中毒などを図るなど波乱万丈の人生でした。

Copilotがまとめた太宰治さんのプロフィールです。
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– **生涯と経歴**:
– **誕生**: 1909年6月19日、青森県北津軽郡金木村(現在の五所川原市金木町)で生まれました。
– **学歴**: 東京帝国大学仏文科に入学しましたが中退しました。
– **活動期間**: 1933年から1948年まで、自殺未遂や薬物中毒を経験しながらも多くの作品を発表しました。

– **代表作**:
– 『走れメロス』(1940年): 友情と犠牲をテーマにした短編小説。
– 『津軽』(1944年): 津軽地方の風土と人々を描いた作品。
– 『人間失格』(1948年): 自己嫌悪と孤独を描いた傑作。

– **文学活動と影響**:
– 戦後は坂口安吾や織田作之助とともに「新戯作派」「無頼派」と称されました。
– 『斜陽』は没落した華族の女性を主人公にしたベストセラーとなりました。

太宰治は、人間の心理や宿痾を深く描いた作品で知られ、日本文学の重要な作家の一人です。
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これまでご紹介した記事のリンクです。

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本作『ヴィヨンの妻』は、短編小説です。初出は『展望』(1947年)。

泥酔状態で帰り、借金を作ってくる大谷を夫に持つ「私」が、大谷が泥棒を働いた店で働くようになり、人生観が変わってしまう話です。

人格が破綻した詩人や周囲の人々の生活を、詩人の妻の視点から戯画化して描いています。

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うしろ暗くない生き方は不可能だ

主人公は27歳の妻で、彼女の夫「大谷」は遊び人です。

詩人で大酒飲みの夫は放蕩三昧で、めったに帰って来ません。

妻は、もうすぐ4歳になる発育の良くない息子と暮らしていました。

ところが、その日は珍しく、「坊やはどうです。熱は、まだありますか?」とたずねます。

妻は、嫌な予感がしていると、行きつけの料理屋の夫婦が訪ねてきて、金を返せと言ってきました。

夫はそれまでも、かなりの酒代を踏み倒してきたが、その日はついに、店の金を盗んだというのです。

それだけでなく、夫はかなり多くの女性と関係を持ち、金も巻き上げていたのだといいます。

妻は、事を荒立てないように、自分がその店で働くことにします。

そこで働いているうちに、妻は悲しい現実に気づきます。

店の客も、店に出入りする人間も何らかの罪を犯していることを。

放蕩の夫などよりもよほどたちが悪いくせに、平気な顔でしながら生きているのだ、と。

妻は、「我が身にうしろ暗いところが一つも無くて生きて行く事は、不可能だ」と思い至ります。

「神がいるなら、出てきてください! 私は、お正月の末に、お店のお客にけがされました」

妻は、客の男を家に泊め、明け方あっけなくサせてしまったのです。

させた日も、妻が出勤すると、夫は店に泊まっていました。

夫は盗みを働いた晩のことを、「妻と子と正月を過ごすためだった(だから私は人非人ではない)」と言い訳しますが、自分も大きな罪を犯していた妻が今更それを咎める筋合いでもなく、「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」と言いました。

人間の堕落を滑稽に描いた異色作

作品のタイトルに登場する「ヴィヨン」とは、15世紀フランスの詩人フランソワ=ヴィヨンのことです。

フランソワ・ヴィヨンは、無頼・放浪の生涯を送りながら、その生き様を詩に著したといわれています。。

太宰治は、ヴィヨンの詩人としての生き様を重ね合わせ、主人公の夫として描いています。

本作は、ロマンチストからリアリストへ変貌する主人公(妻)の心の葛藤や、社会との関わりを通じて描かれています。

ひらったく述べますと、人間は社会に出ることで悪に染まるというテーマを探求しているといわれています。

初々しい新卒の新入社員も、仕事に慣れ社会に染まり、変わっていきますからね。

衆生は、心がきれいではない、というのは浄土真宗の開祖・親鸞の持論ですが、妻が酒の勢いであっさりと客を泊めてモノにされてしまうなど、堕落の中にも美学があった太宰作品にしては珍しく、まるで芥川竜之介先生の作品かと思ってしまいました。

そういう意味では、異色の作品といえます。

ご一読をおすすめします。

以上、ヴィヨンの妻(太宰治著、青空文庫)は、放蕩夫の妻の視点で描いた、太宰作品としてはめずらしくカリカチュアライズされた短編小説、でした。

ヴィヨンの妻 - 太宰 治
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