世界のニュースを日本人は何も知らない(谷本真由美著、ワニブックス)は、日本のマスコミでは報じない世界の真実に迫るとする書籍です。日本のマスコミは世界のことを報じないので日本人は何も知らないんだ、という「衝撃」の内容です。
『世界のニュースを日本人は何も知らない』は、谷本真由美さんがワニブックスから上梓しています。
ワニブックスPLUS新書というシリーズ名がついています。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
一口に述べると、
日本国内で流通しているニュースは低レベルで視野の狭いものばかり。もっと世界に目を向けよう!
という内容です。
まあ、それが事実だとしても、では海外のニュースのすべてが正しいのかというと、そんなことはないはずですから、国内外のニュースの「質」を比較する書籍としては、どうなのかなと云う気がしますが。
つまり、質を比較するなら学術的に行うべきで、そうでない本書は、国連で仕事をして、イギリス人と結婚したという「国際派」を標榜する著者のたんなる主観に過ぎません。
ただ、海外のメディアは政治や経済のことを報じているのに、日本は芸能だの些末なことを中心とした壁新聞的なものだということは、たしかに多くの人が指摘しているところでもあります。
しかし、それは、著者も書いている通り、日本の市場自体が大きいので、国内のことをしっかり知っておけば食っていけるということですから、何も著者のように国際的なことにこだわらなくてもいいということはいえます。
もちろん、政治や経済のことを知りたい、という場合、指摘されている通り、日本のマスコミはまるで駄目ですけどね。
日本人、日本のマスコミ、何にも知らない、誤解と偏見と無知だらけ、という本書は、たぶん評価が分かれるかと思いますが、日本人の「ネトウヨ」と「パヨク」のポジショントーク対決について、「くだらねえ。そんな事してる場合じゃないだろう」と苦々しく思っていた私としては、参考になる、うなずける箇所も多い書籍であるとは思いました。
本書は2023年2月7日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
「効率」でははかれない成果
本書の「はじめに」の部分にはこう書かれています。
少子高齢化で下り坂を転げ落ちつつある国だと酷評されていることも、失われた二十年間で十分予測できた課題への対策を怠った国として、他の先進国からたいへん厳しい視線を送られていることも。
この本は、そんな危機的な状況に置かれた日本のみなさんに、外からの視点を提供し、さまざまな気付きのヒントを得てもらうための指南書です。
日本のみなさんが、世界のニュースにしっかりと目を向けて、一人ひとりの意識を変えていくことを願ってやみません。
ね、「ネトウヨ」VS「パヨク」の低級な「戦い」に明け暮れるネットの「論争」を見ていると、「お前ら、いい加減にして、外に目を向けろよ」といいたくなりますよね。
Amazonの販売ページには、見出し例が公開されています。
●日本の「トップニュース」に外国人は驚いている
●外国人にとって常識的なことを日本人は知らない
●アフリカのメディアを買収する中国
●本当はものすごく豊かなアフリカ
●日本人が知らないトランプ大統領の意外な評価
●EU・国連はまるで“町内会”
●ロンドンでは白人のイギリス人は少数派
●男女別の講義をしろという圧力に悩むイギリスの国立大学
●逆差別を受けている! と声を上げる白人男性
●人種差別にも“格差”がある
●日本人が知らない日本への厳しい評価
●日本人が知らない意外な親日国とは
●世界のニュースを知らないことが命取りに
●世界の「国民性」を日本人は何も知らない
など、「日本人は何も知らない」という点で一貫しています。
でも、じゃあ、外国人は日本のことに通暁しているのか、日本の政治や経済を逐一報道しているのか、という反問も出てくるんですけどね。
そして、もっと突っ込めば、だったら著者は、国内のことも無謬万能なのか、ということで、たぶんそんなことはない。
誰でも時間や能力のキャパにそれほどの違いはありませんから、「海外通」は、一方で国内情報に弱点もあるはずです。
ですから、著者のように海外のことばかり見ていると、逆に肝心の日本のことがわからなくなる、という場合もありますから、まあ、日本と海外のメディアは報道の力点が違う、という程度に知っておいて、あまり「日本がだめだ」という結論を気にしなくてもいいのではないかと私は思っています。
でもね、それはそれとして、興味深い件もあります。
Kindle版の場合、そこに線が引いてありますね。
たとえば、「創造性を豊かにしたいのであれば、無駄と思われることにも取り組んで寄り道した方がいい。生産性や効率性ばかりを追求していると、いつかあなたの創造性は殺されてしまうかもしれません。」というのは、なるほどなと思いました。
Amazonでは、ある書籍のページで、類似書、関連書も一覧表示されますよね。
ですから、自分で選ぶことなく、ちゃんとそれらを知ることができる。
書店で自分で探そうとすると、結局何の関係もなかったとか、調べたいことについては選び損ないがあります。
では、それが「無駄」とか「失敗」なのかというと、そうともいえない、というのが著者の意見です。
「仮にAIの判断だけで出版する内容を決めていたら、ヒット本も生まれるでしょうが、似たような内容ばかりに偏ってしまうに違いありません。」と書かれています。
「似ていない」斬新な新機軸の企画は、効率的な判断から生まれない、ということです。
人間の営みって、そういう泥臭いものですよ。
と同時に、我々の努力というのは、要するにその時は直接役に立たなくても、別の展開に役立つかもしれない。
ですから、あまり、このことに関係有ることだけをしたいとか、思わないで、成り行きに任せて、いろいろな体験を楽しむようにしたらいいと思いますね。
情報はもらい下げではなく主体的に選別する
では、目次のような現実の中で、私達が正しい知識をみにつけるにはどうしたらいいのか。
著者によると、「最も重要なのは、信頼できる情報ソースを見極めることでしょう」とのこと。
著者の言う「信頼できる情報ソース」として、以下のものが枚挙されています。
- 中央政府や地方自治体、国際機関など公的な組織
- 知名度がある大学や研究所
- 医師や弁護士、不動産鑑定士、建築士など許認可が必要な専門家
- 長年堅実経営している一部上場の公式発表
- 知名度が高く専門家に評価されている新聞、雑誌、通信社
- 評価の高い学術論文誌に掲載されている論文
- 老舗大手出版社が出版している書籍やニュースレター
- 公共放送、大手民間放送
- 専門家などから評判のいいニュースサイト(例:IT分野で専門家から高評価のサイトなど)
その他、「実名で活動しており、なおかつその人が発信するブログ、動画などがある程度評価されていたら、信頼する情報ソースに入れても構わない」そうです。
このブログ『市井の話題書厳選』は、「ある程度評価されてい」るかどうかわかりませんが、一応実名ですからね(笑)その点、よろしくどーぞ。
まあそれはともかくとして、私としては、著者の枚挙したものそれ自体は全否定はしませんが、枚挙されているものが本当に正しいかどうかというのは、やはり自分で裏を取るべきだと思います。
つまり、知名度があればいい、評価が高ければいい、実名であればいい、ではなくて、知りたいことについてはどんな権威のあるサイトだろうが丸呑みにしないで、自ら一次資料に当たるとか、複数のサイトを比べてみるとかした方が良いと思いますね。
真実への肉薄に王道はないのです。
たとえばですよ、ノーベル賞受賞者の考察が間違っていて、便所の落書きが正しい、ということだって、絶対になくはないのです。
著者が枚挙したものは、確度の確率が高いと言うだけで、絶対に正解というわけではないんですよ。
それに何より、真実は自分で取りに行く姿勢が必要ではないでしょうか。
誰かから与えられる情報は、提供者のバックボーンの影響があるとか、提供者の価値観が反映しているとか、人間ですから絶対にそういうことはあるんです。
このブログでは、『「悪意の情報」を見破る方法』(シェリー・シーサラー著、菊池誠監修、今西康子翻訳、飛鳥新社)をご紹介したことがあります。
情報は、嘘か本当かを見抜く力が必要だということです。
それに、自分で確かめることにより、既存の「定説」にさらに風穴を開ける考察が、自ら出てくるかもしれないじゃないですか。
既存の書籍やサイトからの意見・情報もらい下げでは、なかなかそれは難しいと思います。
この本の中でも言ってるように、この本の内容も取捨選択して、読んだほうがいい、ということかな。
みなさんは、いかが思いますか。
以上、世界のニュースを日本人は何も知らない(谷本真由美著、ワニブックス)は、日本のマスコミでは報じない世界の真実に迫る書籍、でした。
世界のニュースを日本人は何も知らない (ワニブックスPLUS新書) – 谷本 真由美
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