『古事記ーまんがで読破ー』(バラエティ・アートワークス、イースト・プレス)は“最古の歴史書”をまんがで平易に翻案

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『古事記ーまんがで読破ー』(バラエティ・アートワークス、イースト・プレス)は“最古の歴史書”をまんがで平易に翻案

古事記ーまんがで読破ー(イースト・プレス)を読みました。文官・太安万侶が日本で初めて書き残した“最初の神話”“最古の歴史書”をまんがで翻案したもの。日本語も文法が体系付けられたものがない時代の表現物をわかりやすく翻案しています

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『古事記ーまんがで読破ー』とはなんだ

古事記といえば、文官・太安万侶による日本最古の書物。

世界のはじまりから神様の出現、皇位の継承など、日本の成立がドラマチックに描かれています。

ただし、日本語も文法が体系付けられたものがない時代の表現物。

翻案も様々で、これまで古事記や日本書紀の漫画翻案・解説本はかなりの数が出ています。

しかし、いずれにしても、ちょっととっつきにくい面はあったのではないでしょうか。

そこで本書『古事記ーまんがで読破ー』(バラエティ・アートワークス著、イースト・プレス)は、他の漫画のように「原作」をそのまま漫画化するのではなく、高等学校を舞台にして、文学部出身の図書館司書が、生徒に対して古事記における自分の解釈を説明をする、という体裁をとってわかりやすく構成しています。

諸外国の神話と日本の神話の違い

本書は、諸外国諸宗派の神話と、日本の神話の違いについての解説から始まっています。

曰く、諸外国の神話は、神話の主人公である神が、唯一絶対的な万物の創造主になっています。

たしかに、科学者でも、目の前の自然現象については客観的に考察しますが、ではそもそもその自然はどこからどうやって始まったのか、というと、“神の一撃”から始まったとします。

いくら進化論を説いても、その最初を作ったのは神になってしまうのです。

ところが、日本の神話は違うと、司書は述べています。

最初は無であり、次に宇宙物理学でいうビッグバンがあり、その直後に姿かたちの無い神が誕生したというのです。

その神が子どもを作って、空間などの概念、土地、生命などを創造し、それからようやく人間の形の神々が登場します。

すなわち、自然科学的な世界観を前提としてファンタジーがある、ということです。

しかも、そのファンタジーには、進化論など、これまたこんにち明らかになっていることを示唆する内容が含まれていると司書はいうのです。

まあそこまでいくと、ノストラダムスの大予言並みの「深読み」になってしまいますけどね。

その「深読み」が、学的根拠があるかどうかは別として、ファンタジーを意味づけして、私たちの現実にあてはめることで、私たちが現実の生活と向き合う「よすが」にするというのは、まさに小説や映画やプロレスと同じ楽しみ方ができるので、私は神話の様々な考察には心をもっています。

古事記は日本最古の歴史書と言いますが、自然科学や史学というよりも、文学としての探求に適した文書でしょう。

よく、外国は一神教で、日本は多神教といいますが、日外の世界観の違いがその違いにつながっているのだと思います。

kindle版ならシリーズ読破も可能

Amazonのレビューでは、本書に対して、「古事記の面白い解釈」「古事記ではなく作者の解釈した古事記になってますよね」という意見もあります。

本書では古事記を歴史資料ではなく「日本文学」としてとらえ(まあそういうシリーズですからね)、パーソナルな解釈を採用しています。このためいわゆる一般的な「古事記の解釈」とはかけ離れており、本書のみを読んでわかった気になるのは危険です。
長年、古事記を読み解いたものからすると、たしかに読み物エンターテイメントとしての興趣を狙った面は否定できません。

ただ、繰り返しますが、そもそも大和の国が完成する前の書き物で、日本語も文法が体系付けられたものがない時代の表現物です。

人によって翻案に違いが出てくるのは当たり前の話で、どんな解説本(学者が書いたもの)でも「作者の解釈」に過ぎません。

もちろん、上記のAmazonのレビューのコメントで指摘されるまでもなく、あくまでも漫画解説で表現できるのは一部であり、それを読んだからといって、もとの本を読破したことにはなりません。

本格的に読み解くには、やはり自分でもとの書籍にあたらなければなりません。

その場合、いきなり活字で一杯の書籍を手にしても、頭に入りにくいでしょう。

そこで、漫画に理解を助けてもらい、もとの本に入りやすくする知識や問題意識をもつわけです。

著者はバラエティ・アートワークス。著者のまんがで読破シリーズは外国の古典、日本文学なども漫画で読み解いており、導入としては最適です。

古事記以外にも古今東西、分野も手広く多くの「漫画解説本」を上梓しています。

たとえば、ダンテの『神曲』、シェークスピアの『マクベス』、デカルトの『方法序説』、マルクスの『資本論』、ドストエフスキーの『罪と罰』、夏目漱石の『こころ』、島崎藤村の『破壊』、松尾芭蕉の『奥の細道』などがあります。

すべてKindle版もリリースされており、Kindle Unlimited(定額読み放題)の対象です。

以上、『古事記ーまんがで読破ー』(バラエティ・アートワークス、イースト・プレス)は“最古の歴史書”をまんがで平易に翻案、でした。

古事記 ─まんがで読破─
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