『家系図を作ろう!』(ムック編集部/岩本卓也著、岩本卓也監修、エイ出版社)は家系図の意義と決まりと作り方を解説した書籍です。自分の先祖や親類はどこまでたどれるのか、家系図を作るにはどうしたらいいのか、といった疑問にわかりやすく答えています。
家系図を作るための知識や情報収集法を網羅
『家系図を作ろう!』は、ムック編集部/岩本卓也著、岩本卓也監修。エイ出版社から発行されている書籍です。
タイトル通り、家系図を作るために必要な知識、戸籍制度の変遷や、戸籍の入手方法、その他さまざまな情報収集の方法を図解で紹介してくれています。
その中には、民法上の「親族」や「姻戚」とはどんな関係なのか、の説明も書かれています。
親しいように見えても「親族」にあたらない関係、逆に遠そうに見えても「親族」である関係なども解説してくれています。
家系図作成以外に、遺産相続などでも役に立つ話です。
わかりやすい文章とイラストや表など使った図解で構成
本書はまず、家系図があると、どんなふうに役立つのかについての説明から始まっています。
具体的には、このような点を挙げています。
- 自分が存在する位置を明らかにしてくれる
- 自分を取り巻く親類縁者との関係が明確になる
- 子孫にとっても貴重な資料になる
- 誕生日や没日も書いておくことで、お祝いや法事に役立つ
- 遺産相続に役立つ
- 血族の死因を書くことで、自分がかかる病気の予防にも役立つ
そして、先祖を知るための情報源として、戸籍簿・除籍簿、宗門人別帳などの古文書、親類からの情報、お墓、過去帳。戒名、家紋などがあることを説明しています。
戸籍謄本からおっていけばいいのかな、ぐらいはわかりますが、ただしその戸籍簿は、永遠に残っているわけではなく、役所が保存する期間があります。
したがって、家系図を作ろうと思ったからには、1日も早く取り掛かったほうがいいでしょう。
親族の説明については、どこまでが民法上の親族か、その呼び名などを解説しています。
自分を中心に、父、母、兄弟姉妹、伯父伯母、叔父叔母、祖父母、ぐらいまでは日常的に出てきます。
あとは、曽祖父母、いとこ、はとこぐらいでしょうか。
本書では、さらにその外側の親族の呼び方を教えてくれます。
戸籍制度は、世界でもわずかしかない貴重な制度ですが、全国で統一された戸籍制度が作られたのは明治5年。
それ以後、現在まで5回の改正が行われ、書式や記載内容が変更されています。
本書では、そのそれぞれの改正ごとの戸籍のフォームと解説が書かれています。
家系図を作るために戸籍を取る際、どのような手続きで行えばよいかがわかります。
また、家系図を作る以外にも、たまになにかの手続きで戸籍謄本をととらなければならないことがありますが、その読み取り方がわかります。
なにしろ、全体を通して、わかりやすい文章の上に、イラストや表などをふんだんに使った図解で構成されているので、理解しやすい構成です。
昨今の家系図調べのニーズ
昨今、雑誌などで「ルーツを探る」「家系図をつくる」などの特集が組まれ、家系図を作ることが静かに流行しています。
人によっては、ルーツを探れば、先祖の身分や家柄などもわかってしまうから差別の温床だ、などという人もいますが、私はその意見に賛成しません。
現在の世の中は、先祖の身分で社会的な処遇に差がつく仕組みにはなっていませんし、またかりに戸籍を取り寄せても、士族や平民など、当時の身分(族称)記載箇所は消されています。
現在の家系図調べのニーズというのは、人を差別したいからではなく、自分はどういう先祖から生まれたのだろう、というストーリーを知りたい内心の欲求にあると思います。
ましてや、日本は戸籍制度を採用していますから、調べようと思えば200年ぐらい前までの先祖のことはわかるようになっています。
せっかくその制度があるのですから、先祖調べぐらい邪魔しないでほしいと思います。
私は先祖調べをしてよかったと思いました
私も、2~3年前、父母両方の先祖を、戸籍謄本で調べました。
父方祖母はまだ完了していないのですが、それ以外はおおむね調べました。
私の場合は、親・親類に対してあまりいい感情を抱いていなかったので、「いったいどれほどひどい家系なんだろう」と考え、調べてみよと思ったのです。
私は、父が早く亡くなったので、とくに父方の先祖については全くわかりませんでした。
祖父が戸主である戸籍をとり、曽祖父の名前はわかったのですが、そこから先が戸惑いました。
私の先祖は女系で、曽祖父は養子だったのです。
曽祖父の先祖を知りたかったのですが、曽祖父の本籍は「宮城県名取郡」であり、そこは現在2つの自治体に別れてしまい、「名取郡」自体は消滅していたのです。
ただ、そこで諦めずに、双方の役所に尋ねたところ、なんとか戸籍をとることができました。
今だから打ち明けますが、その戸籍の戸主(曽祖父の叔父)の記載で族称が消し忘れており、「士族」と書かれていました。
そして、城下町に住んでいたこともわかり、間違いなく武士であるので、今度は宮城県の図書館に問い合わせ、その戸主について調べてもらいました。
すると、いくつかの書物から、仙台藩の重臣で定府の城使公議使及び出入司(勘定奉行)である大童信太夫の命を受けて、高橋是清(和吉)のお世話をしていたと書かれていたことを知りました。
武士と言っても中下級と思われますから、それが藩の重臣から直接命を受けるというのは、人柄や職能的信用をもって、本来の地位関係を飛び越えて任務を受けたということです。
いうなれば、本来与力の持ち物である紫房の十手を、奉行から直に預かった黒門町の岡っ引き伝七のようなものです。
それだけ信用されていたということは、真面目に仕事をしていたということ。
これは、偉い地位や身分であることよりも誇らしいことです。
さらに、曽祖父は婿養子に入ってからその地域で村長を務めましたが、祖父が結婚すると、ただちに家督を相続、つまり潔く戸主を交代していることもわかりました。
いずれにしても、真面目に生きたクリーンな人柄がしのばれます。
ですから、私はこの曽祖父一族のことがわかっただけでも、家系図調べをしてよかったと思いました。
私は愚直な方で、それゆえ、要領のいい人にうまく利用されたり、追い越されたりして、憤りや悔しさを感じるとともに、自分の生き方に疑問も感じていました。
しかし、曽祖父一族のことを知ってからは、自分自身が愚直であることに、誇りすら感じるようになりました。
私の名前は、曽祖父の名前から一文字もらったそうですが、そんなケチくさいことではなく、曽祖父の名前をまるごとつけてくれても良かったのに、とまで思っています。
家系図調べには、そのような、自分の生き方を考えることができる一面があります。
繰り返しますが、先祖の身分で差別をしたいからではなく、自分のためなのです。
みなさんも、自分の生き方がいかなるストーリーの反映であったか、調べてみたいと思いませんか。
以上、『家系図を作ろう!』(ムック編集部/岩本卓也著、岩本卓也監修、エイ出版社)は家系図の意義と決まりと作り方を解説した書籍、でした。
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