『悪女(わる)』(深見じゅん、講談社)は、コネ入社の期待されていないOLが、一目惚れしたエリート社員に釣り合う女性になるべく奮闘・成長する話です。1988年~1997年まで雑誌に連載され1992年にドラマ化。今年30年ぶりにまたドラマ化されました。
漫画が連載されたのは、『BE・LOVE』(講談社)。
1991年、第15回講談社漫画賞一般部門を受賞しました。
連載開始は、まだ「昭和」時代でした。
にもかかわらず、30年経ってまたドラマ化されるそうです。
4月13日(水)日テレ系
??夜9時54分スタート??
『#悪女わる』/
60秒予告映像??
豪華出演者?登場Ver.公開??
\公式HP【公式動画】から見てね??
??https://t.co/2SMceEglDq??#志田未来 #近藤春菜 #石橋静河 登場#江口のりこ #向井理 pic.twitter.com/35EjYqY8jO
— 悪女(わる)?働くのがカッコ悪いなんて誰が言った??【ドラマ公式】4月13日よる9時54分スタート! (@waru_ntv) April 10, 2022
それはすなわち、作品に普遍的な価値があるからにほかならないと思います。
T・Oさんに会うために……
『悪女(わる)』の主人公は、田中麻理鈴(たなかまりりん)。
姓と対象的に、めったにお目にかかれない名前は、父親がマリリン・モンローのファンだったからとか。
三流大学を、四流の成績で卒業。
世界に誇れる一流企業である近江物産には、親類による三流のコネで入社。
大企業はコネ入社当たり前で、そのコネにも、会社としてのメリットで考えるといろいろレベルがあり、田中麻理鈴のコネはどうでもいいコネのため、彼女は資材管理室という、一応雇用しましたというだけのどうでもいいセクションに配属されます。
入社2日目に麻理鈴は、コンパクトを拾ってくれた男性社員に一目惚れ。
その後、イニシャルT・Oを手がかりに、その男性社員を「星の王子さま」として探し始めます。
そして、その麻理鈴の一途な気持ちこそが、その後のストーリーに貫かれています。
S・Hは恋のイニシャル、というテレビドラマが昔ありましたが、こういう設定は昭和を感じますね。
配属先の、資材管理室で出会った先輩女性社員は峰岸雪。
ちっとも優等生社員ではない麻理鈴ですが、根拠もなく楽天的なところに伸びしろを見たのか、「出世したくない?」と問いかけ、出世の裏技を教えてくれます。
その内容は、Wikiに枚挙されている通り、以下の様なことです。
- お掃除担当のおばさんの名前を覚える
- 社史を覚える
- 重役全員の顔と名前を覚える
- 一通りのビジネス書に目を通す
- オセロに強くなる
- 外見だけでなく内面的な部分も鍛えて強くなる
偉い人に胡麻をするのならともかく、お掃除担当のおばさんの名前をどうして覚えなければならないのか。
近江物産では、人事部が社員には極秘で清掃員の女性達に社員達の評判を聞いて、社員達の立ち居振る舞いを調査しているのです。
三流大学を四流の成績で卒業している麻理鈴でしたが、偉くなってT・Oさんに会いたい、という一心で峰岸の言いつけを守り、お掃除担当のおばさんの名前を覚え、おばさんたちとは「〇〇さん」と名前を呼んで挨拶していました。
そこで、清掃員の女性達は人事部のヒアリングで、「清掃員に対して挨拶してくれるのは麻理鈴だけ」である事を話したり、麻理鈴に対して社内の人間関係の助言をしたりもしていました。
人事部では、エレベーターで部長から麻理鈴に挨拶したことで、周囲の社員たちはびっくり。
さらに、麻理鈴は偶然32階で会社の偉い人とオセロを楽しむ関係になり、そこでも顔と人柄を覚えてもらいます。
つまり、峰岸の枚挙した出世の裏技は、社員としてのブランディングにドンピシャで必要なことだったわけです。
が、「おばさんの名前を覚える」や「オセロ」などは、一般的ではなく社内事情を知らなければわからないことです。
峰岸がデキる人であることがわかるとともに、ではなぜその人が資材管理室の閑職なのか、謎も残します。
では、そうした裏技を教えてもらった麻理鈴がトントン拍子に出世するかというと、世の中はそれほど甘くありません。
社内では、麻理鈴の配属される部署ごとに、必ずアンチがいます。
実力勝負ではなく、嫉妬による卑劣な手段で足を引っ張られ、社内でのポジションは左遷や出向なども繰り返します。
何しろ、当時の連載は足掛け10年ですから、いわば10年間、行きつ戻りつがあったわけです。
ま、サラリーマン社会、ましてや女性社員の世界というのは、そういうものなんでしょう。
それだけに、ストーリーは主要な部分において、当時しか通用しない話ではなく、かなり普遍的な価値をもったものではないかと思います。
だからこそ、2022年4月13日から、ドラマが始まるわけです。
1992年のドラマも秀逸でした
ただ、個人的には、本作には昭和から平成への面影が残りますね。
本作と『東京ラブストーリー』には、バブルが終わって、でも今のようにデフレが20年以上続くどん底ではない、落ち着いたオフィスものを描けるいい時代だったことを感じます。
1992年には、読売テレビの製作、石田ひかり主演でドラマ化されています。
これもまた、良い出来でした。
田中麻理鈴を石田ひかりが演じたほか、峰岸役は倍賞美津子、小野役は布施博でした。
最初は麻理鈴を罵倒していた小野が、次第に理解を示していくストーリー展開が心地よかった記憶があります。
女のずる賢さを、鶴田真由が上手に演じていたし、犬塚弘の年上部下、高品格演じるオセロ友達のおえらいさんなど、主要なキャストはみんな適役でした。
さて、今春クールのリメイクには、その石田ひかりがまた出演するそうですが、どのような内容になるのか楽しみです。
『悪女(わる)』は第3巻までが、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
以上、『悪女(わる)』は、コネ入社の期待されていないOLが、一目惚れしたエリート社員に釣り合う女性になるべく奮闘・成長する話、でした。
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