ザ・女の事件 悪魔の女保育園長~園児6人虐待殺傷事件~(小牧成、ユサブル)は、無認可保育所で起こった園児殺傷事件の漫画化です。事件後、児童福祉法が改正され、無認可保育施設は都道府県への届出が義務付けられるなど規制が厳しくなりました。
無認可保育所のオーナー施設長による6件の殺傷事件
時は20世紀の最後の年である2000年。
神奈川県大和市にあった「無認可保育所」で園児が亡くなりました。
その園では、2名の死亡と4名の傷害によって女性オーナー園長が起訴され、最終的には懲役18年の実刑が確定しました。
女性園長が起訴されたのは、施設のオーナーだから、ではありません。
女性園長自らが園児に手をかけたからです。
上條昌史さんの記事『託児所の園長が幼子を虐待、殺害…「スマイルマム」の修羅【平成の怪事件簿】』によると、そもそも、オーナー園長は保育士でもなく、保育所の勤務経験もありませんでした。
そればかりか、資格を持つ従業員もおらず、2名以上の従業員を同じ時間帯に働かせることもなく、夜間は園長が単独で保育に当たっていることが多かったといいます。
しかも、AV出演やアダルト誌のヌード、売春なども行っていたといいます。
園長には子がいましたが、不倫によって強引に出産したものでした。
なぜそのような人物が保育所を経営して、そのような事件が起こったのか。
経緯を描いているのが、『ザ・女の事件 悪魔の女保育園長~園児6人虐待殺傷事件~』です。
子供時代の原体験が原因か
漫画では、無認可保育施設『ハッピー・マム・ホーム』の女施設長・渡部真琴が、わずか1年の間に園児2人を殺害、4人に骨折などのケガを負わせた容疑で逮捕されたことを描いています。
2002年とされていますが、実際の事件は2000年でした。
保育所名も、施設長名も実際と違いますし、あえて2年ずらすことで「創作」としたいのでしょうか。
ただし、描いているストーリーは、実在の事件に基づいています。
警察が家宅捜索で押収したのは、AV出演やアダルト誌のヌードなど。
売春を行っていた疑いもあるといいます。
渡部真琴は知り調べに対して、心神耗弱による無罪を狙っているような発言を繰り返しました。
渡部真琴は、父親が建築関係会社を経営する家庭の長女。
裕福な家庭に育ったので、私立の中学高校一貫校に通い、卒業すると外車を買ってもらっていました。
しかし、その「お嬢様生活」が窮屈だったのか、別に小遣いに不自由しているわけでもないだろうに、売春、AV出演などの「アルバイト」を始めたのです。
彼女のそれまでの人生には、心の闇を作る2つの経験がありました。
ひとつは、子供の頃に近所の男の子からいたずらされたこと。
もうひとつは、母親から暴力を受けていたことです。
やがて、彼女は勤務先の妻子ある男性社員(漫画では「上司」)と不倫関係になります。
先の上條昌史さんの記事によると、男性社員と肉体関係が生じるやいなや、彼女は強姦被害者の救済センターに訴えたとあります。
そして、彼に無言電話をかけ続け、彼が電車で痴漢をしているという虚偽の文書を彼の上司に、彼女とキスをしている写真を彼の妻の実家宛に送り付けりしたほか、強姦されたというビラを彼の家の近隣住人のポストに投入するなどしていたといいますから、正気の沙汰ではありません。
では、彼のことがそんなに嫌だったのかというと、そんなことをしていながら肉体関係は続け、その上で別の男性2名とも継続的な肉体関係を持っていたというのです。
その上で妊娠したわけですから、そりゃ、男性社員からしたら「ホントに俺の子かよ」と思うでしょう。
しかし、それは本当だったようで、DNA鑑定で男性社員の子であることが判明し、養育費を支払うことになったそうです。
そんな彼女が、自分の子どもと一緒にいられる仕事をということで、保育施設の経営を始めたのです。
子どもたちへの虐待は、自分が母親から虐待されたことが遠因としてあるのか。
理解しがたい「性」についてのふるまいは、いたずらされた原体験があるからなのか。
もうひとつ、高校を卒業したばかりの子に外車を買い与えるような溺愛も、人格形成上の支障になったのではないでしょうか。
現在も問題になっている「認可外保育園」
この事件がきっかけになって児童福祉法が改正され、認可外、いわゆる無認可の保育所に厳格な監督基準が設けられたといわれています。
先の上條昌史さんの記事によると、平成14年の改正児童福祉法の施行で、無認可保育施設は都道府県への届出が義務付けられ、指導に従わない悪質な施設は公表されるようになったというのです。
では、これで問題が解決したのかというと、どうもそうではなさそうです。
「「認可外保育園」は、認可保育園よりも死亡事故の割合が高い」と指摘する向きもあります。
サイトによると、「認可外保育園」というのは、ベビーホテル、事業所内保育園、院内保育園、その他の認可外保育施設の4つに分類されるそうですが、そうした施設と「認可保育園」との大きな違いは設置基準だそうです。
一口に述べれば、保育士の数や面積基準が、「認可」よりも「認可外」の方が緩めに決められているのです。
ということはどういうことかというと、保育士が担当する子供の数は「認可外」の方が多く、乳児室やほふく室、2歳児以上の保育室や屋外遊技場等など子供の月齢に沿った決まりもないのです。
その結果どうなるか。
「死亡事故」や「治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病ををともなう重大事故」について、「利用児童1万人あたりの事故数を比べると、認可保育園0.02件に対して、認可外保育園は0.39件もあり、発生確率は20倍近くもある」というのです。
つまり、本書の事件で「無認可」に対する規制がかかったといわれていても、まだ20倍もキケンな状態にあるということです。
私が思うに、高齢者や障碍者の介護福祉事業における人件費の安さもそうですが、国がお金を出さないことが悪いと思います。
と、書くと、すぐに「財源は?」と言い出す「財源パブロフの犬」がいるのですが、そもそも国の予算は財源ありきで決めているわけではないでしょう。
その年度の予算案は税収確定前に決まりますし、補正予算だって財源のあてがあって決められるわけではありません。
財務省のサイトを見ればわかりますが、税収は予算の半分程度です。
このことを、スペンディングファーストといいます。
つまり、税収から予算を組むのではなく、予算を決めて経済を回してから税収を得るのです。
その予算を決める際、保育や高齢者・障碍者の介護福祉にもっと予算をつけるべきだ、ということです。
考えても見てください。
より多くの保育士を雇うことで、子供への目が行き届きます。
「より多くの保育士を雇う」ことは、雇用を創出することになります。
安心して子供を任せられれば、もっと働きに出る人は増えるでしょう。
労働力があれば、事業拡大もできます。
さすれば、企業はお金を借りて事業を広げます。
しかも、働き手が増えれば、その家庭の財布は重くなりますから、お金を使うようになります。
必要なところにお金は使うべきです。
そう思いませんか。
以上、ザ・女の事件 悪魔の女保育園長~園児6人虐待殺傷事件~(小牧成、ユサブル)は、無認可保育所で起こった園児殺傷事件の漫画化、でした。
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