緊急特集週刊文春が報じた大相撲暴力と暗闘のすべて（文春e-book）は、日馬富士による貴ノ岩殴打事件などを振り返ったムックです。この事件を契機に貴乃花親方（当時）がスポイルされ、ついには第65代横綱を退職に追いやる禍根を残しました。
『緊急特集週刊文春が報じた大相撲暴力と暗闘のすべて』は、事件当時の記者の取材・解説記事や、貴乃花親方（当時）の真意、その他八百長事件などを掲載した文藝春秋社のムックです。
大相撲九州場所が3日目を迎えていた2017年11月14日。
スポーツニッポンが、横綱・日馬富士（当時）の暴行疑惑をスクープしました。
被害者は、当時東前頭8枚目の貴ノ岩。
九州場所、その翌年の初場所は頭蓋骨骨折などの怪我により全休し、貴乃花親方（当時）は警察に届けました。
しかし、相撲協会としては、内々に済ませたかったことを警察に届けたことが面白くなかったようです。
その後の齟齬もあり、貴乃花親方を孤立させ、結局貴乃花親方は日本相撲協会を退職しました。
本書は2022年12月3日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
いい加減な日本人大衆は、“一本気”が気に食わない
本書がまとめている日本相撲協会のスキャンダルです。
- 日馬富士暴行事件
- 時津風部屋暴行致死事件
- 大麻所持で現役力士逮捕
- 野球賭博
- 八百長メール
- 白鵬の問われる横綱の品格
- 北の湖理事長の急逝と相撲協会の確執
みなさんは、どのスキャンダルがいちばん印象に残っていますか。
あ、みんな忘れちゃったかな。
まあ、そんなもんです。
日本相撲協会も、そう高をくくっているから、繰り返しスキャンダルが出るのです。
喉元すぎれば忘れてしまう大衆は、また相撲に熱狂し、もう貴乃花親方がいたことすら忘れてしまっているのではないでしょうか。
私は、日馬富士暴力事件から、貴乃花さん退職までについて、こんなふうに考えました。
- 日本人の中には、暴力を必要悪とさえ捉えている歪んだ感覚の持ち主がいる
- 貴乃花（元）親方のような一本気な人が苦手。
- 大相撲などショウビジネスだから常識と違っていても別に構わない
ひとつひとつが、論考したいことですが、私はその中でも、「貴乃花（元）親方のような一本気な人が苦手。」という点について触れたいと思います。
もう最近では、忘れられてしまった感がありますが、貴乃花さんというと、マスコミでは人格攻撃まで行われていましたね。
たとえば、リアルライブなるサイトの記事に、『両親だけでなく妻、息子まで…貴乃花「絶縁」の歴史』というタイトルによる貴乃花さん叩きがありました。
両親だけでなく妻、息子まで…貴乃花「絶縁」の歴史 | リアルライブ https://t.co/eGWPfoXIRR @reallivenewsより この著者はよほど立派な親兄弟なんでしょうね
— 畠中由宇・相互フォロー100％ (@hata_follow) February 6, 2021
親兄弟と絶縁し、妻と離婚し、子を勘当したのは、気難しいからだろう、周囲と絶縁するのは人としておかしいのだろうと、まるで貴乃花さんの人格に問題があるかのように揶揄している記事です。
記事によると、「貴乃花はこれまでにも家族との「絶縁」を繰り返してきた」と書かれています。
1.1998年ごろ整体師に洗脳され、実父で師匠の二子山親方(11代目)と交流を断ち、絶縁状態と報じられた。
2.兄の花田虎上こと花田勝(3代目若乃花)と相撲への向き合い方を巡って確執が高まった
3.母の藤田紀子とは2001年に二子山親方と離婚してギクシャクし、兄との不仲を強い口調でたしなめられたことで絶縁状態になった
4.河野景子の姿勢を問題視する声もあったが、実際には貴乃花のモラハラ的な行動があって離婚した
記事はそう述べた上で、「さまざまな事情はあるのだろうが、父、兄、母、妻、子と周囲との関係を次々と終わらせる貴乃花には、やはり気難しい部分があると言えそうだ」と、悪意に満ちたまとめ方をしています。
複数の人間関係トラブルを経験した（している）人は、きっと他者とうまくやっていけない人格的に問題のある奴にきまっている、という思い込みのレッテルを貼ってしまうのが、とくに揉め事の嫌いな日本社会の習い性になっているように思います。
まあ、こういう記事は、読者を面白がらせる、やくたいもない読み物ではありますし、私も別に貴乃花さんの知り合いでもないからカタを持つ立場でもありませんが、エラソーに他人様の人格を論評するカストリ記事は気に食わない。
「絶縁」の一言にまとめていますが、そもそも貴乃花さんは父親・元貴ノ花の最期を看取り、葬儀も喪主だったはずです。
ですから記事は、前提となる事実認識を間違えています。
それに、親兄弟との絶縁、妻との離婚、子の勘当は、それぞれ別の事情です。
「お別れした」現象だけで、それを一緒くたにすること自体、粗雑な観察です。
たとえば、親兄弟は、貴乃花さんが好き好んで肉親になったわけではなく、生まれ持っての「ほしのもと」です。
つまり、かりに親兄弟がどんなにひどい人だったとしても、貴乃花さんには何の責任もないのです。
トラブルの一つ一つについて、どっちが悪いのか、なぜそのトラブルが起こったかを見なければ、貴乃花さんの「人格」に由来するかどうかなんてわからないじゃないですか。
そもそも、家族（親や兄弟）との絶縁は、最年少である貴乃花さんからすれば、絶縁することでしか自分の意見を通せない、立場を貫けないわけです。
その後も、相撲協会退職、離婚や息子との断絶など「絶縁」が続いたため、匿名のWeb掲示板では、「貴乃花は周囲の人を不幸にするキ×ガイ」なとという書き込みもありました。
「キチガ×」という表現自体は論外でありますが、それ以前に一言したいのは、貴乃花さんと、貴乃花さんを批判する「普通の人」との違いは、生き方に対する覚悟の違いだと私はつくづく思います。
自分が正しいと思ったことは、どんな事があってもやり遂げる。
嫌だと思ったことは絶対に嫌だ。
それを貫くために社会との衝突があるのなら、自分が傷ついたり失ったりしても致し方ない
貴乃花さんの場合、そういう生き方でしょう。
断っておきますが、これは、個々の問題について、すべて貴乃花さんの肩を持つとか、無条件に貴乃花さんに賛成するといいたいわけではありません。
そうではなくて、賛否・正誤にかかわらず、貴乃花さんは自分の言動に自分を賭ける覚悟がある、責任を持つ、という話です。
たとえば相撲協会をやめるとか、子を手放す離婚をするとか。
あなたに、それだけの覚悟がありますか。
ないよね。
けだし、小賢しい処世術でしか生きられない大衆からしたら、それは狂気の沙汰に見えるかもしれません。
小利口な「普通の人」たちは、捨てることを「悪いこと」と思っているのだろうと思います。
だから、貴乃花さんが、無責任で非常識な人間に見えるのかもしれません。
でもね、人生というのは、しょせん諸行無常なんですよ。
人間関係にも、「生涯ずっと」も「絶対」もないと私は思うんです。
信用していた人間に、裏切られるときだってあるんです。
折り合えない友とは、別れるときもあるのです。
そして、真剣に付き合おうとするからこそ、折り合えないことも出て来るのです。
そこを、失うのが怖くて、うわべの付き合いで「薄笑い」でやり過ごすのか、腹を割って付き合いたくて踏み込んで、結果として別れるのか。
どちらの生き方が正しいとはいいません。
これは人生観の問題です。
少なくとも、別れる方を選択したからといって、その人を「×チガイ」などと悪しざまに罵るものではないでしょう。
誰だって、合う合わないはある
貴乃花さんたたきは、花田一家の崩壊というキーワードもありました。
当時、両親の貴ノ花親方と藤田紀子さんが離婚したことも、メディアにとっては格好の餌食でした。
では、貴乃花さんの両親である、先代貴ノ花さんと藤田紀子さんが悪いのでしょうか。
先代貴ノ花さんについては、貴乃花さんを失望させた「あの事件」の責任は免れないでしょう。
それは、上記の記事が書いている、「整体師」云々ではありません。
貴乃花vs若乃花の、兄弟対決による優勝決定戦の時に、貴ノ花親方が貴乃花さんに対して、「わかってるな」と、負けることを求めたことで、父を尊敬していた勝負師の貴乃花さんは、師匠として父親として、二重に失望してしまったという件です。
（同僚力士だった）悟道力「実際どうだったのって聞いたら（貴乃花は）、「いやあ、まあ、100番とって負けない相手に、決定戦で負けると思いますか？」っていうのが、貴乃花の一言ですよね。
【真相究明】兄弟対決！若乃花VS貴乃花 優勝決定戦の真相は？ https://t.co/yDOcVHSd5C @YouTubeより
— 畠中由宇・相互フォロー100％ (@hata_follow) February 16, 2021
貴乃花さんを絶望させたのは、貴ノ花親方だったのです。
そして、引退してから、「本当は相撲は嫌いだったけど、弟に付き合えって言われたからイヤイヤやったんだ」と、相撲をコバカにしたことを語ったのが、花田虎上さんです。
こんな父と兄ですよ。
そりゃ、貴乃花さんも意固地になるでしょう。
では、貴ノ花親方はそんなにひどい奴かというと、そうともいえないのです。
貴ノ花夫妻は、上掲の動画チャンネルオーナーの貴闘力さんがどん底の生活をしていたのを、入門前の中学生の時から引き取り、我が子同様に育ててくれたそうです。
入門前ですよ。
飯だけ食って、中学出たらトンヅラするかもしれない、親戚でもない悪ガキを我が子と区別せず育てたのです。
貴乃花親方の兄の元横綱先代若乃花こと花田勝治さんが、韓国で隠し子を作ったときも、弟子という名目で引き取って面倒見ていたのは貴ノ花・藤田紀子夫妻です。
もともと貴ノ花夫妻の部屋は藤島部屋といいましたが、藤島部屋は「八百長をしない部屋」として清廉潔白な部屋だったそうです。
だからこそ、貴乃花さんのような真っ直ぐな大力士が誕生したわけですが、「八百長はやめましょう」とという旗を掲げたのは、おかみさんの藤田紀子さんだったそうです。
私も含めて、世間は藤田紀子さんを誤解していたのではないでしょうか。
本当は、河野景子さんなんかよりも、ずっと立派なおかみさんだったのです。
たぶん、花田虎上さんは、ちょっと無責任でちゃらんぽらんではありますが、父親の貴ノ花さんの気の優しいところを受け継いでいるのではないかと思います。
つまり、花田家の1人1人は、決して悪い人たちではないのです 。
でもゃっぱり、いろいろあってうまくいかなかった。
それはそれで、仕方ないと思います。
これを読んでいるあなた方だって、親・兄弟・親類すべてと完璧に良いおつきあいしていますか。
価値観が合わなかったり、立場が相反したりで、一人ひとりは悪い人じゃないのに、うまくいかないことってあるってわかるでしょう。
貴乃花さんをキチ×イ扱いするそこのあなた、いかがお考えになりますか。
以上、緊急特集週刊文春が報じた大相撲暴力と暗闘のすべて（文春e-book）は、日馬富士による貴ノ岩殴打事件などを振り返ったムックです、でした。
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