昭和の中坊+俺たちのラブ・ウォーズ~その後の昭和の中坊たち~(漫画/吉本浩二、原作/末田雄一郎、双葉社)は青春昭和回顧漫画です。特典に『令和の「昭和の中坊」』も加わり、昭和から令和にかけての中学生の日常を描いています。
『昭和の中坊+俺たちのラブ・ウォーズ~その後の昭和の中坊たち~』は、末田雄一郎さんが原作、吉本浩二さんが漫画を描いて双葉社から上梓しています。
内容は、昭和50年代を過ごす中学生の日常を漫画化したものです。
『ちびまる子ちゃん』のようなものですね。
ただし、「中学生の日常」と書きましたが、ほぼある一点にフォーカスしています。
それは、エロです。
といっても、濡れ場がでてくるわけではありません。
オナニーは、第26話でやっとでてきます。
つまり、それまではオナニーも知らないのです。
夢精しただけで「おねしょ」と動揺していました。
陰毛が生えたからと言って大騒ぎもします。
その程度のレベルの中学生です。
幼いながらも、関心が高かった、ニキビヅラのあの当時の行動原理を漫画にしています。
そして、昭和50年代ですから、ヘアヌードなんてありませんし、エロ本の入手も中学生にとっては困難な時代です。
逆にそういう時代だからこその、欲望や想像力などがストーリーを盛り上げています。
当時の流行歌、流行語などもでてくるので、懐かしさもあります。
登場人物は、猿田清志ことニゴシを中心とした滝沢礼二、丸木正一郎の3人に、途中から九州からの転校生が加わり、さらに卒業してもなにかにつけてやってくる矢島先輩の5人の男子陣。
女子も、ヒロインと、まあまあきれいだけど棘があるのと、おいもちゃんの3人。
この8人が中心です。
そして、セリフなどはなく、ニゴシの想像シーンだけに出てくるB組の竹光。
ニゴシが、エロな行為に走るための動機として、竹光きこんな失敗をしたっけという回想をニゴシが毎回するのです。
舞台は、特定はできませんが、狛江市、調布市あたりの23区外多摩川沿いです。
環状八号線もでてくるので、よもやとは思いますが、世田谷区や大田区あたりも候補として完全に外すわけにはいきません。
いずれにしても、全く架空ではなく、現実の地名も入ってくるので、親近感やリアリティもあります。
中学の名前は、野川台中学といいます。
実を言うと、今回、Kindle Unlimitedのリストで見かけるまで、本書のことは知りませんでした。
で、読みはじめて、最初は、なんか暑苦しそうな画風の漫画だなと思っていましたが、読んでいくうちにやめられなくなり、合本で読み上げるのに時間がかかるにも関わらず、どんどん読み進めていきます。
キャラクターが出来上がっているので、話が進むに連れて感情移入できるのかもしれませんね。
いずれにしても、面白い漫画だと思います。
本書は2023年2月26日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
夜中に出かけて頑張ったものの……
第1話『はじめてのおつかい』から見ていきます。
放課後の部活シーンから。
中1の猿田清志は、陸上部。通称ニゴシ。
真面目な部に入ってますね。
同じグラウンドでは、ヒロインの岩渕香織がテニスをしています。
香織を見ているニゴシに声をかける、リーゼントでとにかく背が低い万年補欠・矢島先輩。
「エロい目しやがって。だからお前『清志』なのに『ニゴシ』って呼ばれんだよ」
しかし、万年補欠でも部活をやめない矢島先輩も、根は真面目ですね。
ニゴシは、いつも3人で行動します。
ひとりは、眼鏡の新聞部員・滝沢礼二。
もうひとりは野球部の丸木正一郎。
これも偉いですよね。
いつもつるんでいても、部活は別。
それぞれ、やりたいものをヤる。
部活が終わると、3人は一緒に帰ります。
そして、エロ本の自動販売機の前で立ち止まります。
ため息をつく3人。
昔は、エロ本を手に入れるのも大変だったんですね。
しかも、ヘアなし。
今だったら、ネットでいやというほど出てくるのに。
空き地で、その思いを話し合う3人。
「女の胸をもむのと、アソコ見るの、どっちがしたい?」と問いかけるニゴシ。
「い、今はアソコみたい」と答える丸木。
「オレは両方してえ」と答えるニゴシ。
だったら選択肢にして質問するなー(笑)
丸木は言います。
「この前の日曜日、親戚の家で見た雑誌に書いてあったんだけどよ。女のアソコには……」と、隠語を言い出す丸木。
ニゴシはもう気になって、その日は勉強も手につかず、秘密のノートに女性の陰部の想像画を描いています。
「このままでは集中して勉強できない。あ、そういえばB組の竹光。アイツ、あまりのエロ本見たさに、コンクリートブロックを投げたけど跳ね返ってきて、頭4針縫ったんだな。おれはそこまでできないけど……」
有り金を集めて、ギリギリ200円のエロ本が買えることを確認します。
「勉強に集中するために買うんだ。悪いことじゃない。あしたは土曜で次の日登校なし。よし、明日の真夜中決行だ」
翌日土曜日。
まだ『8時だョ!全員集合』をやっているのに、「明日早く起きて勉強するから」と、床に入ります。
そして、夜中の3時。
自転車でエロ本販売機に。
お金を入れてボタンを押すと、ドカンと本の落ちる音で腰を抜かします。
そのとき、人が通りかかったので、急いで逃げるニゴシ。
しかし、せっかくお金を払って買ったのです。
思い直して、販売機に戻るニゴシ。
ところが、販売機には入っていませんでした。
何と、新聞配達の兄ちゃんが抜き取っていたのです。
「拾ったからオレのもの。でも1回読んだから、100円で売ってやるよ」
きー、足元見られましたね。
ニゴシは結局、もっている残り金の26円で買い取りましたが、中のグラビアページは全部切り取られていました。
……というのが第1話で、毎回こんなパターンです。
思い出す、1978年の夏
第20話の『夏だ!プールだ!スキミーだ!』では、体育でプールの授業がテーマです。
ま、当然でてくるのが、女子の着替えの覗きです。
4人組+矢島先輩が、建物の隙間から覗くものの、バレてしまうドタバタです。
冒頭のコマでは、3人は『24時間テレビ』が始まることを話題にしています。
そして、矢島先輩が鼻歌を歌ってやってくるのですが、歌がサーカスの『ミスター・サマータイム』。
そうです。
時代は1978年なのです。
この回の最後にも、「ちなみに78年の夏は記録的な暑さであった」と書かれています。
いや懐かしい。
まさに、そのとおりなんです。
実はこの時、私は高校3年生。
大学受験のため、1日6~8時間の勉強をしていましたが、とにかく暑くて暑くて仕方ない。
冷房が効かないのです。
そんなときは、化粧品店からもらってきた、資生堂の『時間よ止まれ』のカレンダーに出てくる女性5人を見て、一息ついていました。
1978年夏といえば、資生堂とカネボウのCM合戦がもっとも熱くなった年です。
1970年代後半は、2大化粧品会社のCMソング戦争は季節の歳時記でした。
とくに、服部まこさんをイメージガールにした『Mr.サマータイム』(歌、サーカス)はレコードがミリオンセラーとなりました。
1978-1989 サーカスCM集 with Soikll5 https://t.co/NbXunB9lmN @YouTubeより 服部まこさん、ステキですね
— 赤べコム (@akabecom) February 13, 2023
これで17歳ですから、衝撃的でしたよ。
服部まこさん、これで同い年かい!とびっくりしたものです。
歌は、サーカスの『Mr.サマータイム』。
資生堂ビューティケイク [1978年] https://t.co/CTnmy1z7Ea @YouTubeより こちらのcmも良かったですね
— 赤べコム (@akabecom) February 13, 2023
女性が、1度の過ちを彼に対して悔いている歌ですね。
一方、資生堂は、矢沢永吉さんの歌に、堀川まゆみさんら5人のモデルが登場した『時間よ止まれ』。
当時私は男子校でしたので、クラスでは当然、5人のうち誰が一番いいか、という一切の妥協を許さない論争(笑)がありました。
夏の歌に、どちらもぴったりでね。
で、この戦いは、レコードセールスでは、サーカスが矢沢永吉さんに僅差で勝利。
サーカスにとっては、いわゆる“キャリアハイ”の仕事になりました。
私としては、もう甲乙つけがたかったですね。
ほんと、暑い夏、受験、CM対決。
1978年の夏の思い出ですよ。
で、少しずれて秋になると、『ゆうひが丘の総理大臣』が放送開始されたと(笑)
ま、それはいいか。
とにかく、1978年の夏を思い出させてくれただけでも、この漫画サイコーですよ。
みなさんにも、おすすめします。
以上、昭和の中坊+俺たちのラブ・ウォーズ~その後の昭和の中坊たち~(漫画/吉本浩二、原作/末田雄一郎、双葉社)は青春昭和回顧漫画、でした。
「昭和の中坊」+「俺たちのラブ・ウォーズ~その後の昭和の中坊たち~」+特典『令和の「昭和の中坊」』 合本版 (アクションコミックス) – 吉本浩二, 末田雄一郎
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