有栖川宮詐欺事件(2003年)は、高松宮宣仁親王のご落胤をカタッた詐欺事件。『実録!女たちの猟奇事件簿』(ぶんか社)が漫画化しました。大正時代に断絶した皇族を称して結婚披露宴を開き、祝儀など約1200万円をだまし取った事件です。
『7人目:後続詐称事件』というタイトルの漫画が、安武わたるさんがぶんか社から上梓した『実録!女たちの猟奇事件簿』(ストーリーな女たち)にあります。
有栖川宮詐欺事件(2003年)を漫画化したものです。
有栖川宮詐欺事件は、大正時代に断絶した皇族の有栖川宮を名乗った男女が、有栖川宮記念祝晩餐会と称した結婚披露宴を、赤坂のカナダ大使館地下パーティー会場で開催。
327人の出席者から祝儀約1200万円と高級絵画をだまし取った事件です。
詐欺で捕まるぐらいですから、もちろん当人たちは有栖川宮とは何の関係もありません。
そもそも、2人は婚姻関係の事実すらなかったそうです。
披露宴は、俳優・石田純一や、エスパー伊東、歌手・ダイアモンド☆ユカイ、デーブ・スペクター夫人、元東京都議ら著名人も出席しており、石田純一は警察から“広告塔”と疑われ、取り調べを受けたことを明かしています。
本書は2022年9月5日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
そもそも当事者の2人には婚姻関係がなかった
昔、有栖川宮のニセモノが詐欺事件としてニュースになったのですが、親族では
アレ、誰??1908年有栖川宮栽仁(たねひと)王が20歳で亡くなり、妹の実枝子様が最後。そして徳川慶喜家へ嫁しました。
祭祀は高松宮さまが継承され、実枝子さまの娘、徳川喜久子様が高松宮家へ嫁ぎました。 pic.twitter.com/n589IVh8M8— 山岸美喜 (@yamagishimadam) August 2, 2021
有栖川宮詐欺事件のこの人
明治三十七八年従軍記章(日露戦争)
戦捷紀章(第一次世界大戦)
昭和六年乃至九年事変従軍紀章(満州事変/上海事変)を佩用するという歴戦の猛者だ( pic.twitter.com/YnZZD3m1DG— 宮北 (@dehua1936) December 12, 2015
2003年4月、有栖川宮家の祭祀継承者で、高松宮宣仁親王のご落胤である「有栖川識仁(さとひと)」と詐称した男性と、その妃殿下と詐称する女性が、偽の「有栖川宮家の結婚披露宴」を開催。
招待客から祝儀等を騙し取り、詐欺罪で起訴されました。
しかも、そもそもこの「夫婦」は婚姻関係がなく、それどころか2人の間に恋愛関係、内縁関係などもありませんでした。
当時、出席した歌手・ダイアモンド☆ユカイは、ラジオのプロデューサーを名乗る人物から「宮様の結婚式を仕切るから出演してくれ」と依頼が来たそうです。
終了後、報酬が「ご祝儀から出してる感じ」で、「これヤバいんじゃないかと、バンドマンと言いながら帰った」と話したといいます。
石田純一も、「知り合いのラジオ局のプロデューサーに紹介されて出席した。軽率だった。これからは直接の知り合いじゃなければ出席しないとか、気をつけたい」と反省しきりだったそうです。
第三者的に見れば、虚言癖としかいいようがありません。
女性は自称元女子アナで、事件前の2000年のインタビューでは、
- ミス・インターナショナルに選ばれたことがある。
- TVレポーターやモデルの仕事をしていた。
- 大手企業の役員室秘書を務めていたこともある。
- エイボン化粧品ではトップセールスになったこともある。
などとカタッていたそうです。
しかし、皇族といえば系譜なども公になっていますから、バレてしまうのは時間の問題ではないかとやもうのですが、見栄や虚栄心の前にはそんな懸念もすっ飛んでしまうのでしょうか。
平凡な人生が嫌だったら作ればいい
本作の設定では、新郎は「有田川宮琴彦」こと北川康夫(41)、新婦は有田川春子こと坂谷晴子(44)となっており、新婦を主人公に描かれています。
晴子は、公務員の両親に平々凡々な家族。
「私にはもっとドラマチックで華麗な人生がふさわしいのに」
と自分では思っています。
周囲からは、「あの子キレイねえ」と言われていたようです。
その「美貌」を以て、「だって私は『選ばれた人間』なんだもの」と思いこんでいたのです。
18歳で、ミスコン熊本地区予選で準ミスに選ばれたことも、その思いを強くするのに役立ったと描かれています。
まあ、たしかにそういう実績があるということは、一定の評価を得られるルックスだったのだろうと思いますが、地方の「地区予選」で「準ミス」程度ですと、まあ、若い時の思い出として、年を取ってからの一つ話程度の「華やかな実績」かもしれませんが、そこから「私は選ばれた人間」と思うのは、少しうぬぼれが強すぎませんか、という感じがします。
しかし、その後、結婚は2度失敗。
子供も生まれ、37歳になり、いっこうに華やかにならない自分の人生に焦りを覚えます。
そんなとき、知り合ったのが、自称有田川宮琴彦。
あるパーティーで、「一目惚れ」と告白されます。
「とうとうやった。これこそが私に用意されていた人生」
報道では、先に書いたように、婚姻関係がなく、それどころか2人の間に恋愛関係、内縁関係などもありませんでしたが、本作では、一応肉体関係はあったようです。
ま、お互い協力して詐欺を働くいい大人ですから、信頼関係の構築に、肉体関係ぐらいはあったのかもしれません。
関係ができたところで、「有田川宮琴彦」は彼女に対し、有田川宮は自称であることを打ち明けます。
京都の八百屋の息子で、昔たまたま名乗った偽名から「宮様」と間違えられ、以来「皇族」の肩書で顧問料などももらえることがある。
でも、あなたには本当のことを打ち明けたほうがいいと思って……。
ところが、晴子は、「何を仰るの。あなたは間違いなく殿下ですわ」という意外な反応が。
春子は開き直ります。
これこそが私に用意されていた人生と思っていたが、そうではないという。
いえ、用意されていないというのなら作ればいいんだわ。
彼女は、皇族としての挙式を計画します。
判決は実刑判決がつきましたが、出所後もめげずに2人は記念財団を設立しています。
人間誰しも見栄や虚栄心がある
人間誰しも、ちょっとした見栄や虚栄心があるものです。
この2人のように開き直ってしまえば何でもできますが、さすがに詐欺になるのは嫌だからそこまで羽目を外さないだけで、自分の身分や先祖について、ちょっと盛ってしまうことってあるのではないでしょうか。
最初は対外的なものとして、ささやかに盛った物語を構築しながらも、そのうち自分自身が本当にそのつもりになってしまい、次第に物語がエスカレートする。
その抑えがきかなくなった例が、この宮家詐欺ではないのでしょうか。
もっとも、この2人は、すでに事件になって面が割れて実刑判決を受けているにも関わらず、財団を作っているのですから、現在は決して詐欺ではなく、これまでの「平凡な人生」と決別して、新たな人生を歩むという決意の現れと思いますので、それはそれでいいのではないでしょうか。
私も、事情があって先祖や親類との関係をぶった切って人生をやり直そうと姓の変更を思いつき、最初は妻の伯母さんに夫婦養子に入ることを考えましたが、それも諸事情から熟慮の末見送り、姓の「よみ」を変えることで落ち着きました。
あとは、その「よみ」にふさわしい漢字への変更を家庭裁判所に申し出れば、姓は変えられます。
つまり、「草野」を「くさの」から「かやの」に変えましたが、なかなか「かやの」と呼んでもらえないので、漢字を「萱野」とか「鹿屋野」に変更することを家庭裁判所に申し出て、許可されれば戸籍を変更できます。
別に詐欺なんかしなくたって、そうやって新しい姓を得て、人生やり直したっていいんじゃないかと思いますが、彼らは、皇族をカタッた結婚式自体に意義があったので、私とは全く事情が違うのでしょうけどね。
女性が主犯、もしくは共犯となった事件を描く
本書『実録!女たちの猟奇事件簿』は、タイトル通り、女性が主犯、もしくは共犯となった凶悪猟奇事件を描いたストーリーです。
具体的な場所や発生年、容疑者の実名などは書かれていませんが、実際の事件を漫画化した実録物です。
その目次です。
1人目:セレブ妻
2人目:秋田子殺し母
3人目:中国人妻…
4人目:スナックママ
5人目:赤い自転車の女
6人目:歯科医嫁殺人
7人目:皇族詐称事件
8人目:埼玉女児虐待
9人目:介護殺人事件
10人目:代理ミュンヒハウゼン症候群事件
11人目:マリオネット殺人
12人目:ネットアイドル
13人目:父子保険金殺人
14人目:トリカブト事件
15人目:主婦連続殺人
16人目:悪魔祓い殺人
17人目:大阪姉妹餓死
18人目:裁判官ストーカー
19人目:女教師事件簿
20人目:千葉長男殺人事件
すでに、セレブ妻(新宿・渋谷エリートバラバラ殺人事件)と、トリカブト事件(本庄保険金殺人事件)についてはご紹介しました。
興味深い事件がまだまだ収載されているので、機会を改めていずれご紹介できればと思います。
以上、有栖川宮詐欺事件(2003年)は、高松宮宣仁親王のご落胤をカタッた詐欺事件。『実録!女たちの猟奇事件簿』(ぶんか社)が漫画化、でした。
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