歓迎たけや旅館(ありま猛著、グループゼロ)は、子供のために37歳で水商売から老舗旅館に転職した1児の父の奮闘&人情漫画です。水商売時代に培ったお愛想や話術とともに、旅館の信用を守るための厳しさも備えて旅館は改革されていきます。
『歓迎たけや旅館』は、ありま猛さんが描き、グループゼロが発表している全4巻の漫画です。
この記事は、マンガ図書館Zで無料公開されている作品をもとにご紹介しています。
ありま猛 『歓迎たけや旅館』 #マンガ図書館Z https://t.co/MiNMQDpwSg
— 赤べコム (@akabecom) February 5, 2023
マンガ図書館Zでは、2023年2月15日現在、無料リストに含まれています。
小学生の一人息子のために、37歳にして水商売から老舗旅館の社員に転職した、一児の父の奮闘&人情漫画です。
大学時代から水商売に入り、その後ずっとスナックを営業してきた石根鉄也(いしね・てつや、37歳)は、10年間営業していた店を閉め、京子(きょうこ、34歳)夫人や息子とともに転居。
長野にある、湯乃元温泉の老舗・たけや旅館に就職します。
畑違いの転職理由は、息子が父親の職業欄に「ふつかにいっぺんのお仕事」と書いたのがきっかけ。
夫婦で1日交代で店に出ていたことを、そう書かれたのでした。
そこで、堅気のサラリーマンになろうと老舗「たけや旅館」の番頭に転職したつもりが、月給15万円の見習い客室係り、フロントなど、それまでとは勝手の違う仕事につきます。
しかし、その中でも彼の情熱やアイデアは、旅館運営に大いに貢献。
最終回では、「えっ」と思わせる結末を迎えますが、それはネタバレになるのでここでは控えます。
37歳の転職ながら旅館に新しい発想を持ち込む
「準備できたぞ」
出社1日目、石根鉄也はスーツででかけます。
それはそうです。
旅館には番頭として就職するつもりで、デスクワークのつもりだったのですから。
旅館へはマイカー出勤。
しかし、いきなり叱られます。
車を正面玄関につけてしまったのです。
「ここはお客専用だ。従業員は裏へ回れ」
すぐにスーツを脱がされ、客室係の制服に着替えさせられます。
「じゃあ、ここにある布団を敷いてもらおうか」と課長に言われ、デスクワークでないことを知らされます。
「できました」
「石根クン、うちの一泊料金知ってるかね?」
「2万円以上だと……」
「そうだ。2万円以上だ。その料金を払って、このヨレヨレのシーツで寝たいかね?」
うーん。
これは課長も酷だな。
畑違いの転職が、いきなりきちんとできるわけないんだから、最初に見本を見せないと。
いきなりやらせて「ダメだし」すると、次からも「また間違うんじやないだろうか」と、何するのも消極的になるんですよ。
ところが、課長は自分では見本を見せず、何度も何度もダメだしします。
これは効率の悪いやり方です。
この日から、すぐに戦力になってもらう従業員教育としては、むしろこの課長にダメ出しだな。
まあこれは、課長の点数稼ぎでもあるわけですけどね。
ダメやつで苦労しています、ということを社長にアピールしています。
旅館の従業員たちは、みんな石根鉄也を縁故入社だと思っています。
何しろ、若い人も含めて20名の応募もあったのに、37歳を採用したのですから、何か特別な理由があるんだろう、と思ったんでしょうね。
採用は、会長の独断でした。
息子(社長)と同い年。
収入は前職の方が多い。
それでも転職してきた。
「これからは、新しい発想をする人間が必要になると思うよ」というのが会長の採用理由でした。
石根鉄也は、「一室に何分かかってんの?」と嫌味を言われたり、重ねたお膳を運ぶ途中でひっくり返して仲居さんに厳しく叱られたりしますが、「3ヶ月で東京に帰ったたまるか」と、毎朝妻に背中をマッサージしてもらいながら、見習い布団敷きをモクモクと頑張ります。
そんなある日、客が新聞を広げたまま風呂に行きます。
石根鉄也は、それをそのままにして布団を敷きますが、たけや旅館のルールは、新聞は畳んでテーブルの隅に置いておくと課長から注意を受けます。
すると、石根鉄也は、課長に物申します。
「このままの方がいいと思いまして」
「何」
「自分の家で読んでいて、ちょっといない間に片付けられるとイヤですからね」
「キミの意見をきいてるんじゃないよ」
そのとき、客が部屋に戻ってきます。
そして、広げたままの新聞記事から、得意先の会社が大変なことになっているのを知り、慌ててチェックアウト。
次の日、幹部会議で課長は、一連の出来事を報告し、新聞は広げたままにする、とルールが変更されます。
このように、会長の考えた通り、石根鉄也は「新しい発想」で旅館を少しずつ変えていきます。
そして、試用期間を終えて、配置されたのはフロント。
玄関で客を招き入れる仕事です。
そこには、何か口うるさい専務がいて、こちらも最初は苦労します。
あるとき、2泊した客が、連チャンで芸者を呼びます。
その客が、近くのモーテルで、指輪を忘れました。
旅館に来たのに、わざわざモーテルで1泊するということは、誰かと泊まったわけです。
芸者置屋が呼ばれましたが、最初は芸者は否定していたものの、結局客と寝たことを白状します。
最初、専務は、付き合いの長い置屋なのでお目溢ししようと思いましたが、石根鉄也はそれを否定。
「こういう不祥事はどこかから漏れる。老舗旅館の信用にかかわるから、けじめはつけるべき」と専務に進言し、専務はその芸者を出入り禁止、置屋を1ヶ月取引停止させます。
「厳しいのね」と他の芸者に言われましたが、石根鉄也は、「オレはお客と寝るなと言ってない。ただし、公然としたら出入り禁止にするしかないだろう」と、旅館の信用を守るためにけじめは必要なのだといいます。
タイトルに、「奮闘&人情」と書きましたが、何となく許すのではなく、けじめを付けさせるべきはつけさせる厳しさがあってこそ、信用されるわけです。
ま、結局その芸者は、寝た客と結婚することになったので、誰も悲しい結末にはなっていないんですけどね。
こうして、石根鉄也は、旅館を次々改革していきます。
「堅気のサラリーマンになるんだ!」という固い決意
『連ちゃんパパ』の作者、ありま猛の『歓迎たけや旅館』読んでみたけど、同じ作者と思えないぐらい熱い人情モノで頭おかしくなりそう pic.twitter.com/SPg8YObOsn
— NyangTang / にゃんたん (@ohmyasshole) May 13, 2020
奮闘&人情漫画とご紹介しましたが、やはり印象深いのは「奮闘」の部分ですね。
思えば私自身の半生は、苦しいことがあると、すぐケツをまくっていたように思います。
漫画では、最初はコネ入社と思われ、まあ軽く意地悪もされましたし、すぐに東京時代の客が、いい条件で引き抜きにも来ましたが、主人公は動かなかったんですね。
東京を離れるのも、そう簡単に決意はできないだろうし、東京の水商売よりも収入が落ちることもわかっていて転職するというのは、なかなかできることではありません。
それをやりとげたのは、子どもに、父親の仕事が「堅気のサラリーマン」であると言わせたかったから。
水商売だから、クラスメートにいじめられていた、というわけではないようですが、子どもが親の仕事を、ちゃんと語れるようにしようというのは、親の自覚として大切なことです。
先日も、『まるっちょ』という漫画をご紹介しましたが、そのときにも書きました。
まるっちょ(原作/かわさき健、作画/人見恵史、双葉社)は、妻子を不慮の事故で亡くした男が、孤児となった娘を育てる話です https://t.co/m9CVnXIvh0
— 石川良直 (@I_yoshinao) February 5, 2023
カメラマンになりたい若者に対して、カメラマンがこう言います。
「テクニックなんてもんは、数撮ってりゃ勝手に身につく。ましてや感性なんてもんは、他人から教わるもんじゃねえ。プロとなるためにまず必要なのは…、自分は何が何でもこの世界でやってくんだ!そういった強エ気持ちなんじゃないか。それがスタートラインだよ」
私は還暦過ぎてから、大学院の修士課程に進むことにしたのですが、学業からもずっと離れているし、もともと学部はその専攻ではなかったし、何より還暦で覚えも悪くなってるしで、試験に合格するのも苦戦は免れなかったわけです。大学側だって、どちらかといえば若い将来性のある学生に指導の時間は使いたいじゃないですか。
が、もう何が何でも受かるんだ、人生の悲願なんだと顔色が悪くなるほど自分自身に言い聞かせ、がんばったら受かりました。
合格自体も嬉しかったですが、それによって、今までの人生で自分の志望通りに物事が成就しなかったのは、その「何が何でも」という思いが十分でなかったからではないか、という気づきもありました。
まあ、もう私も歳を取っていますから、もうどこも雇ってくれないでしょうけど、何か成果や充足感を得るためには、ちょっとやそっと苦しいことがあっても逃げずに「石にかじりついても頑張る」という気持ちが必要なんだに、と改めて思いました。
ネットのレビューには、「いい話だったなー」と書かれているものがありますが、まさにそんな感じです。
無料ですし、ぜひ読んでいただきたい作品です。
以上、歓迎たけや旅館(ありま猛著、グループゼロ)は、子供のために37歳で水商売から老舗旅館に転職した1児の父の奮闘&人情漫画、でした。
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