漫画で読む文学『走れメロス』(太宰治/原作、だらく/漫画訳)は、信頼の尊さ描いた太宰治の短編小説を漫画化したKindleです。古代ギリシアの伝承と、ドイツのフリードリヒ・フォン・シラードイツの詩をもとに創作したことが明らかにされています。
だらくさんは、著作権フリーの名作を、Kindle(Amazon規格の電子書籍)用に漫画化しています。
漫画で読む文学『葉桜と魔笛』は、姉妹の美しくも切ない心の交流を描いた短編小説を漫画化しました。
宮沢賢治作品の中では、漫画で読む文学『注文の多い料理店』をだらくさんが漫画化しています。
本作『走れメロス』は、処刑されるのを承知の上で友情を守ったメロスが、人の心を信じられない王に信頼することの尊さを悟らせる物語です。
もちろん、本作もkindle unlimitedの読み放題リストに含まれています。
無二の親友を人質として猶予は3日間
羊飼いのメロスは、妹の結婚準備のためにシラクスの町に行きます。
オマーロ(伊勢海老)を購入したメロスに店主は、「豪勢だね、お客さん」
「妹の結婚式があるんだ。そのための衣装やごちそうを買いに来てね」とメロス。
そこで、スピリチュアルペンダントも勧められますが、メロスはそちらは「遠慮しときます」。
メロスは、非合理主義者ではないようです。
それはともかくとして、久々に訪れたシラクスの町は暗い。
何かに怯えているような、暗い雰囲気の満ちた街に変貌していました。
「どうしてか」と通行人に尋ねても、答えることを拒絶されます。
気の弱そうな通行人を捕まえてもう1度尋ねると、この街を統べるディオニス王が猜疑心の強い暴君で、人々を次々と処刑していることを知ります。
怒ったメロスは、「王を生かしておけぬ」と王城に乗り込みます。
が、門前で門番に捕まり、短剣をしのばせていることがバレて、王の前に差し出されるメロス。
「お前に、わしの孤独がわかるものか。疑うのが正統な心構えであると教えてくれたのはお前たちだ。人の心はあてにならない」
メロスは市民から聞いた暴挙に対して抗議しましたが、ディオニス王はそれを拒絶し、メロスは死刑の処分を下されます。
「私は命乞いなどしない。ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑まで3日間いただきたい」
「ばかな。とんでもない嘘を言うわい。逃した小鳥が返ってくるというのか」
「そんなに私を信じられないならば、セリヌンティウスという私の無二の親友を人質としてここにおいていこう」
偉そうなこと言いながら、メロスもあんまりですね。
正義感が強いのは結構ですが、無関係の人をいきなり人質にしろというのですから。
「……願いを聞いた。3日後の日没をちょっと遅れてくるがいい。命が大事だったら遅れてこい。お前の心はわかっているぞ」
王としては、「人間なんてそんなもん。だから誰も信用できない」という結果を求めているわけです。
それには、メロスが約束を守らないほうが都合がいいのです。
そんな思惑から、メロスは「仮釈放」されます。
メロスは、まず妹の元へ向かい、2日目に大急ぎで結婚式を済ませます。
そして、3日目に約束の時間までに、王城に戻るために走り出します。
しかし、途中で川の氾濫や、王の命令と疑える山賊の襲撃などの障害に遭い、死ぬ覚悟をするほど苦労します。
途中、歩けなくなり、メロスは自分に「言い訳」を言い聞かせます。
「私は精一杯つとめたが、だめだったのだ。約束をやぶるつもりはみじんもなかった。だから、私は不信の徒ではない」
ですが、ふと気がつくと泉があり、一口水を飲むとまた元気が出てきました。
所期の目的のため、メロスは再び走り出します。
そして、メロスは何とか日没直前に王城に到着し、セリヌンティウスを救います。
2人はお互いに一度だけ疑ったことを告白し、殴り合って許し合います。
その光景を見ていた王は2人の友情に感動し、「わしも仲間に入れてくれ」と頼みます。
ここで、メロスが「断る」と言ったら面白いと思うのですが、原作は3人が手を携えてハッピーエンドです。
いや、その前に、メロスはなぜか全裸のため、少女がマントをもってきてくれ裸体を隠しました。
この時代は、肌着はなかったのかもしれませんが、どうして全裸だったんでしょうね。
作品の肝は「信頼」
国内外からバードウォッチャーが集う伊豆諸島最大の淡水湖「#大路池」。
今から86年前の昭和12年に、昭和の文豪「#太宰治」が来島の際に池のほとりで一休み。
この3年後に代表作 『走れメロス』が初出となります。
来島時の様子は短編『#小さいアルバム』に記載されています。#三宅島 #三宅村 pic.twitter.com/c6kI9ncWMY— 三宅島観光協会 (@miyakejimaTA) August 27, 2023
本作については、「走れ」といいながら、実はまる1日走るほどの距離ではなかったのではないか、という突っ込みもあるのですが、あくまで作品の肝は「信頼」ですから。
『走れメロス』は、小学校高学年で出てきたような記憶があるのですが、今はもっと早いのかな。
太宰治作品については、『人間失格』の漫画版もご紹介したことがあります。
太宰作品は、人によってはお好みでない場合もあるようですが、人間の心の弱さを極限まで問うセンシティブな作品が多いので、私はよい作品だと思っています。
太宰治作品はお好きですか。
だらくさんの漫画化Kindleはほかにもあるので、また機会を作ってご紹介したいと思います。
以上、漫画で読む文学『走れメロス』(太宰治/原作、だらく/漫画訳)は、信頼の尊さ描いた太宰治の短編小説を漫画化したKindleです。でした。
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