父娘ぐらし55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話(渡辺電機(株)、KADOKAWA)は、妻の連れ子との生活を描いた実話コミックです。還暦近くなってからの子育てに戸惑いながらも、一方で、子を持つ楽しさ、結婚生活の張り合いも実感しているようです。
『父娘ぐらし55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話』は、渡辺電機(株)さんがKADOKAWAから上梓しました。
55歳独身男性マンガ家が、ツイッターで意気投合した女性と結婚。
相手には8歳と3歳の娘がいました。
すぐには同居生活できないため、発達障害のある8歳の女児と東京で生活を始めます。
本書は2022年11月23日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれます。
本書を読む上で考えさせられるキーワード
本書のキーワードから見ていきます。
連れ子
著者にとって、娘は相手の連れ子です。
残念ですが、戸籍上は絶対に著者の実子には出来ません。
それまで、85歳と84歳の両親の戸籍に入っていた主人公の著者は、結婚することで新しい戸籍を作ります。
ちなみに、本書でも「入籍」という言葉を使っていたと思いますが、正しくは「婚姻」です。
結婚することを入籍というのは、家制度時代の名残ですね。
今は、結婚によって2人で新しい戸籍を作るので、入籍とは言いません。
ま、著者がシングルマザーの戸籍に入るのなら「入籍」ですけどね。
しかし、それは著者と配偶者の戸籍です。
この時点では、連れ子はシングルマザーの戸籍に残ったままです。
次に、連れ子を2人の戸籍に入れます。
これこそ入籍(届)です。
これによって、連れ子は著者の氏を名乗れます。
ただし、この時点では著者の子供ではありません。
著者の子供にするには、養子縁組の手続きが必要です。
養子縁組すれば、著者の子供にはなりますが、ただし嫡順はつきません。
もし、その2人の間に子供が出来たら、初めて長男、もしくは長女になります。
連れ子はどこまでいっても、戸籍上は連れ子なのです。
逆に、シングルマザーの戸籍に著者が入るのなら、養子縁組の手続きは必要ありません。
ですからね、戸籍って実は女系なんですよ。
そりゃそうですね、生むのは女性だから。
この場合は、著者が相手の氏を名乗ります。
選択的夫婦別姓って、女性の側も「自分の家を守りたい」という古い考えをもっている人も支持していますが、戸籍のルールは、女性の戸籍に男性が入る「女系」にしたほうがいいようにできているのです。
別姓といわず、夫を自分の戸籍に入れたら良いのではないでしょうかね。
本書の場合、連れ子は著者の姓を名乗っているので、戸籍上は養女ということになります。
……と、なんでそんなことを書いているかというと、本書の時点では、「自分の子供じゃない」ことは問題になっていませんが、たぶん、2人の間に子供が出来てからは、ちょっとセンシティブな問題になるのではと思います。
だって、3人目の子供が「長男」もしくは「長女」になるのですから。
もっとも、著者も55歳だそうで還暦近いわけですから、作るのなら早くしたほうが良いと思いますけどね。
発達障害
当面は、連れ子であることよりも、発達障害であることのほうが大変かもしれませんね。
落ち着きがないようなので、たぶんADHDだと思います。
ADHD(注意欠陥多動性障害)は、注意力や集中力などが続かずに、極端にそわそわして落ち着きがない特徴があります。
「自分の行動をコントロールする機能が弱い」ということです。
落ち着きがなかったり、行動が度を越していたり、場の空気を読めなかったり、約束を忘れたりするために、人間関係を築けないことが少なくありません。
要するに、人間関係をうまく築けず、友だちができにくいということです。
しかし、知能が著しく遅れているわけでもなく、会話も問題なさそうなので、手帳を持つほどではなさそうですね。
本書を見る限り、友達遊びもできているようです。
50代の子育て
50代の子育ては、私もまさに該当します。
私の場合、11年前に火災を経験して、ちょっと普通の感覚としては好ましくないところがあるのです。
たとえば、食育は失格だと思います。
食べ物は食べたいものを好きなだけ食べさせて、太ってしまいました。
中学生で80キロは、ちょっと肥満体ですよね。
11年前に子供はICUに入り、ヨーグルトの瓶ぐらいの容量の液体を、胃と十二指腸に管を入れて流し込んでいた時期があり、「ああ、元気になったら好きなものを食べさせてやりたいな」と思ったため、そうなってしまいました。
ま、そういう苦労をしたものでないと、わからない心境でしょう。
食べさせてもいいから、カロリー消費(すなわち運動)をさせれば良いのかもしれませんが、そこがまさに50代ですと、一緒に動いていたら体力が持たない、ということはあります。
著者も大変でしょうが、でもまあ、今頑張れば、いずれ良い思い出になりますよ。
人生設計
著者には、本書を通して葛藤があります。
今の相手と結婚しなければ、自分だけが食える文だけ働いて気楽にやっていけたのに、還暦近くなってから突然、他人の子を育てるなんて、という思いがあります。
一方で、子を持つ楽しさ、結婚生活の張り合いも実感しているので、後悔はしていないようです。
私は還暦過ぎて2人未成年の子供がいますが、妻などは、まだ「赤ちゃん欲しい」とか言ってますよ(笑)
子供ではなく、孫がいてもおかしくない年代なのにね。
もちろん、現実に赤ちゃんがいたとしたら、大変ですよ。
赤ちゃんほどではなくても、今小学校の低学年でも大変だと思います。
でも、いたらいたで、楽しいと思いますよ。
子供ってそういうものです。
おれがしたいから結婚するんだ
第1話から見ていきます。
著者は作中、「おれ」という1人称を使っています。
著者は55歳の「あまり売れてないマンガ家」。
8歳のアユが親子になったのは、平成30年の3月といいます。
16歳年下の妻と婚姻したのがその3週間前。
大阪在住で、8歳と4歳のシングルマザー。
お互いの仕事の都合もあり、すぐに同居というわけにはいかず、半年ほどの間、東京と大阪に分かれて別居生活。
発達障害児童で、学校に馴染めないアユに年度途中の転校は、不登校に陥る懸念があるので、4月のクラス替えに合わせて、アユだけ先に東京にこさせることになったそうです。
そこではじまったのが、著者とアユの2人の生活。
連れ子でもすぐに馴染みましたが、子育て自体が大変なので、マンガのネタ出しやネームを考える時間も、子どものことにとられたり、居眠りをしたりする日々。
学校生活はなんとかできているものの、遊びに連れて行ったり、習い事をさせたり、毎日のごはんもあります。
著者は、日々の惣菜までコンビニに頼っているようですが、コンビニは割高なので、私はほとんど使いません。
スーパーで、「特売」など効率よく買い物をしたほうが良いと思います。
著者は両親健在。
父が85歳で、母が84歳。
血縁関係もない子供を、孫としてかわいがってくれることで、頭が上がらないとか。
両親が元気で健在というのはね、それだけで著者は恵まれたほしのもとです。
それも、良い両親ではないですか。
明治大学まで出してもらい、よい家庭で育ったのだろうなあと思います。
ですから、いくらこきたなく描いていても、知的水準や品の良さを著者に感じるところがあります。
著者の葛藤は温かい。
かわいいけど…いざ育てるとなったら、それだけじゃ済まんよな。正直、今から背負うのはシンドい…
言ってみりゃ、アカの他人のガキを育てるワケで、貧乏くじと笑うヤツもいるだろう
おれ自身あと何年生きるかわからない
残った時間は自分のために使いたい
あの母娘を助けるための結婚だったらすべきではない………
えーい、悩むこたぁねえ!
誰のためでもねー
おれがしたいから結婚するんだ
どう考えてもそっちの方が…面白そうだからな
私もきっと、同じ立場なら、こういう葛藤でこういう結論になると思います。
著者、がんばってください。
以上、父娘ぐらし55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話(渡辺電機(株)、KADOKAWA)は、妻の連れ子との生活を描いた実話コミック、でした。
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