『病気の9割は歩くだけで治る!』(長尾和宏著、山と渓谷社)は、“ベストセラーの町医者”長尾和宏医師が歩くことを推奨する書籍です。タイトルで本書の全てが表現されています。とにかく歩くことであらゆる病気はよくなると述べているのです。
歩くだけで治る!とはなんだ
歩く健康法というと、思い出すのは、ヤクルトスワローズと西武ライオンズを日本一に導いた広岡達朗さんです。
広岡さんといえば、すき焼きを味噌で食べたり、選手に玄米食を勧めたりと健康志向でしたが、あるとき、野球中継の解説で、こんなことを仰っていたのを覚えています。
「健康には何が良いかいろいろやってみたが、歩くにまさることはない」
玄米を勧められた、当時の西武の選手たちの立場は?というツッコミは措くとして、歩くのが良い、というのはテレビ番組で医師も行っていたのを聞いたことがあります。
私自身は、「過敏性大腸症候群」と診断されたことがあります。
ただその解消は、体験的には歩くことが一番ではないかと思いました。
若いころは、話し相手に友達を誘い、多摩川の土手を下流から中流ぐらいまで歩くと、腹具合がスーッとしたものです。
それだけに、本書はその裏付けという動機で手にとってみました。
本書の主張は、
歩くだけでよくなる。
とにかく、これが本書の全てです。
- 歩けば病気の予防になる
- 歩けばボケを防止できる
- 歩けばうつも良くなる
- 歩けば未来も変わる
この4つのことを、206ページにわたって述べています。
すべて、歩くことでよくなるといいます。
たとえば、がんでも歩いたほうが良いと言い、歩くことで、積極的な治療をしなくても延命した末期のがん患者を例に出しています。
本書の構成
難病も予防や改善になる
第1章では、「現代病の大半は、歩かないことが原因だった」としています。
そして、認知症、高血圧、不眠症、逆流性食道炎、便秘、がん、風邪、脳卒中などいろいろな難病を挙げ、歩くことによる予防や改善を唱えています。
風邪ですらも、体力に余裕があるなら歩いて治そうと述べています。
長尾和宏医師は、かぜの対処法は2つあるとしています。
風邪対策も「歩く」
ひとつは、かぜをひいたら、ひたすら休んで自分の体力が戻るのを待つこと。
発熱や鼻水は、免疫細胞が戦っている証拠なので、むしろ薬で止めないほうがいいという考えです。
私も、火災で、子どもたちが集中治療室(ICU)に入った時、熱が上がったので心配したのですが、担当医師には、「発熱はある程度許容しましょう」と言われました。
発熱は、体を治そう、菌を排除しよう、というはたらきだからだといわれました。
民間療法ではそういう話はよく聞きますが、病院の治療もそういう考えになったのかと、そのときしみじみ思ったものです。
私が子供の頃は、風邪をひくと必ずおしりに注射をされましたからね。
そして、もうひとつが、本書のテーマである「歩く」ということです。引用します。
もう一つの治し方はというと、これはあまり万人にすすめられるものではありませんが、私自身は、風邪をひいたかなと感じたときほど、歩くようにしています。
ひき始めに「葛根湯」を飲んで、それから歩いて少し汗をかき、お風呂に入ってゆっくり休む。たいていはこれで良くなりますが、翌日にもまだ風邪症状があれば、今度は「小青竜湯」を飲みます。私の風邪はだいたいこれで治ります。
実は、私はこの本を読む前から、これと似たようなことを実践していました。
今頃の風邪はこのとおりですが、風邪の流行ではない季節に、自らの過労などで風邪の症状が出てきた時には、「十味敗毒湯」も加えるのです。
すると、かなりの発汗作用を起こすので、だいぶ楽になります。
著者によると、歩くことでNK細胞が活性化されて、免疫力が高まるからいいそうです。
ただし、それは若い人や体力に自信がある人です。
また、普段から歩いている人は、免疫力が上がっているので、そもそも風邪をひかない。ひいてもすぐにケロッと治るとも述べています。
何でも薬で解決させようとするな
第2章では、医師でありながら医学常識や投薬に懐疑的な立場から、歩くことを推奨しています。
たとえば、 『薬で老化は治りません』『「骨折=手術」とは限らない 骨折しても歩くことを忘れるな!』と述べています。
というと、まるで長尾和宏医師は、こんにちの通常医療を否定したり、奇妙な民間療法を進めたりするトンデモ医師のように誤解しがちですが、そのようなことはありません。
長尾和宏医師は、『「医療否定本」に殺されないための48の真実』という書籍も上梓されていますが、内容はむしろ、「がんもどき理論」など、現在の医学・医療を否定する「新説」・珍説を否定するものでした。
つまり、長尾和宏医師は、ごく当たり前の医師として、通常の治療を行います。
ただし、医療産業が儲かるためにあるような治療には疑問符をつけています。
たとえば、風邪を引いたからといって、やれ解熱剤だ、やれ咳止めだと何種類もの薬を出すことには批判的です。
風邪そのものを治す薬など存在せず、それらはみな対処療法の薬に過ぎません。
国はジェネリックを勧めますが、長尾和宏医師は、要らない薬を減らすほうが先決だと述べています。
そして、自分でできる健康法として、歩くことを推奨しているのです。
決定版、かぜの治し方
後半の第3章、第4章では、具体的な歩き方の教示を行っています。
たとえば、「腕を振るのではなく肩甲骨を動かす」とか、脊椎ストレッチウォーキング、川柳ウォーキングなどを紹介しています。
「腰や膝が悪い人におすすめの歩き方」「障害があっても歩行補助具で歩く(歩き方)」など、「歩くことが健康に良いとはいっても、歩くのは困難なんだ」という方も、諦めずに同書を読まれたら良いと思います。
まとめ
ということで、本書『病気の9割は歩くだけで治る!』は、ただひたすら歩くことを推奨しています。
しかし、章ごとにその詳しい解説で納得。
本書の「歩けばよくなる」という主張は、説得力があり同意できます。
歩くという行為は、全身をまんべんなく、そして無理なく動かすもっとも合理的な体操だと思います。
ジョギングをされる方が、「自分のほうがもっと激しい全身運動だから」と思われるかもしれませんが、走ることは心臓や膝に負担がかかります。
少なくとも、年齢やコンディションを問わずにできるものではありません。
ぜひ、みなさんにもお勧めしたい書籍です。
以上、『病気の9割は歩くだけで治る!』(長尾和宏著、山と渓谷社)は、“ベストセラーの町医者”長尾和宏医師が歩くことを推奨する書籍、でした。
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