ザ・女の事件【合冊版】Vol.2-2(ユサブル、Kindle版)は、シングルマザー硫化水素隣人心中巻き添え事件など実録5作品の合冊版です。桐野さおりさん、なせもえみさんの作品収載。スキャンダラス・レディース・シリーズというシリーズ名がついています。
『ザ・女の事件【合冊版】Vol.2-2』は、ユサブルから出版された5作品の合冊版です。
合冊というのは、単独で書籍化されている作品をまとめて収載して1冊としてたものです。
つまり、1冊で5冊分楽しめるわけです。
本書はKindle版をご紹介しています。
面白いのは、5冊合わせた本書は、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
つまり、同サービスに加入していれば追加料金はなく無料で読むことができます。
ところが、ひとつひとつの単冊はそれぞれ値段がついた有料です。
ですから、私は、というより私でなくても誰でも、本書の合冊版をおすすめすると思います。
収載仕ている作品は、以下のとおりです。
ザ・女の事件【合冊版】Vol.2-2~特集/暴走する母親たち
- 恐怖の死神シングルマザー 桐野さおり
- 三人子持ちシングルマザー生活保護不正受給事件 桐野さおり
- 盗撮母と引きこもり息子 桐野さおり
- 偽クレーマー主婦、愚かなる報い 桐野さおり
- アラサー独身女 エゴまみれ幼児斬りつけ事件 なせもえみ
『本書収録の作品は、すべて実際にあった 事件を元に構成したフィクションです。』と記載されています。
つまり、実録漫画です。
ただ、具体的にいつどこであった事件かは明記されていません。
私も調べましたが、わかりませんでした。
たとえば、硫化水素自殺を図り、家族や隣人を巻き添えにする事件は、ひとつやふたつではないからです。
それだけ多いので、特定の事件を伝える、つまり実録であるかないかよりも、硫化水素自殺事件があることを読者に伝えることには意義があると思いました。
硫化水素自殺、巻き添えの迷惑
本書が硫化水素自殺を取り上げたのは、巻き添えを食った事例がいくつもあるからだと思われます。
硫化水素は、硫黄と水素の無機化合物で、無色の気体です。
卵の腐ったようなにおいで、空気に対する比重は1.1905。
つまり、空気よりかなり重く、高濃度で吸い込むと呼吸障害を起こして死に至らせることもある危険なガスです。
にもかかわらず、危険物扱いではなく家庭用洗剤などで硫化水素を発生させることができるので、自殺や事件に使われることがあります。
洗剤は誰でも入手できるので規制はできません。
自殺の場合には、本人だけでなく周囲の人間も巻き添えにするのです。
なぜかというと、空気より軽ければ、発生したガスはそのまま大気中に浮遊していきますが、空気より重いために、階下や周囲に充満するのです。
ですから、団地のような集合住宅の、巻き添えがしばしば問題になります。
しかし、硫化水素を発生させた本人は自殺を遂げるので処分もできません。
一般的に、においを感じたら近づかず、風上に避難することが大事だと指摘されているのですが、私が思うに現実はなかなか難しいかも。
何の匂いかわからないと、逆に積極的にクンクンとかぎますよね。
それで、ニオイのもとはどこだろう、台所だろうか、こないだ買った卵だろうか、とかニオイのもとを探し出そうとしますよね。
硫化水素は火山ガスや汚泥などにも含まれます。
過去には登山客や下水処理の作業員らが死亡する事故も起きているのです。
そんな劇物だということを含みおいた上で、本書の『恐怖の死神シングルマザー』を読むと、その問題点がはっきりすると思います。
心を入れ替えることはなかった。それどころか……
登場する女性の名は後藤玲子。
離婚して、安普請のアパートに越してきました。
仕事を探さなければならないのですが、いい就職先がなくて困っています。
そんなとき、上の階の西倉宅から、ドンというものすごい音が聞こえました。
何事かと思い訪ねてみると、首吊りに失敗した女性が倒れていました。
玲子は急いで119番。
対応が早く、西倉は一命をとりとめました。
搬送された病院の看護師によると、西倉は2ヶ月前にも手首を切って迷惑をかけたばかり。
小学3年生になる西倉の娘・亜美は玲子に、「お願いします。これからもお母さんのこと助けてください。自殺しちゃだめって言ってください。お願い、おばちゃん」とお願いされます。
西倉は精神を病んでいて、薬の世話になっており、時々自殺を企てるといいます。
迷惑な存在ですね。
話を聞いて放っておけないと思った玲子は、倉が自殺をしないよう目を光らせ、亜美のためにも彼女が人生を立て直せるよう、事あるごとにお節介を焼いていくことを決めます。
まずは、西倉の病室を見舞いますが……
「あなたね、余計なことをしてくれたのは」
西倉には、いきなり憎まれ口を叩かれる玲子。
「どうして救急車呼んだの。どうして死なせてくれなかったの」
玲子も西倉に言い返します。
「あなたが死んだら亜美ちゃんはどうなるの。ひとりぼっちになっちゃうんですよ。可愛そうだと思わないんですか」
「……思わないわ。亜美は…私なんかといるより、施設に入ったほうがよほど幸せなのよ」
「そんなわけないじゃないですか!子供は親といるのが一番幸せに決まってます」
玲子は、自分だって大変な身の上だけど、いつかいいこともあると思って頑張っているんだと話しますが、西倉のような人は、説教が苦手です。
「頭痛がするの。かえってちょうだい」
と、玲子を追い返してしまいます。
しかし、玲子は事あるごとにお節介を焼いていきます。
普通の物語ですと、その姿に西倉も心を打たれて心を入れ替えて……となるのですが、本作は実録のため、そのような展開にはなりませんでした。
Amazonの販売ページもこう書かれています。
そんな玲子を待っていたのは西倉からの思いもよらない”死の恩返し”だった―――!
西倉は度々自殺を図りますが、硫化水素自殺によって、階下の玲子が巻き添えを食うのです。
しかし、意識を取り戻した西倉は……。
他人を変えることは難しいが……
まあ、私の結論を述べると、こういう人には関わらないほうがいいと思います。
他人を変えることは難しいでしょう。
精神の病があるならなおさらのことです。
ただ、ここで一言しておきたいのは、そもそも自殺についての認識です。
先日ご紹介した菊谷隆太さんは、仏教の教えとして、人生が50年で終わろうが80年生きようが、仏教的にはそれほどの差はないんだといいます。
しかし、自殺は勧めていません。
なぜ自殺がいけないのか。
自殺は悪いことなのか、お釈迦様は何と言われたか、キリスト教や世間一般とはまったく違う、その驚くべき答えとは https://t.co/J3OfN1IKaQ @YouTubeより
— 赤べコム (@akabecom) October 1, 2022
牛が牛車を引くのが重いからといって、牛車を壊すと、さらに頑丈で重い牛車に作り変えられてしまった、という例え話から、辛くなって自殺しても、死ねばもっと辛い世界にいかねばならないと言います。
今生の苦に耐えかねて死んでしまったら、後生の一大事と言って、後生はさらに辛くなるのだと。
それよりも、今生で絶対的な幸福になることで、後生は浄土で佛の悟りを開く幸せな身になれる。
今生には、そのようなかけがえのない目的があるのだというのです。
これは、あくまでも仏教という世界観の中での自殺に対する見方です。
三世を信じないなら、無意味に思えるかもしれません。
ただね、辛ければ、辛いのもまた人生、そういう人生なのだ、と割り切るわけにはいかないのでしょうか。
人間どうせいつかは死ぬのだし、自分から死ぬこともないでしょう。
まあ、わからないこともないですけどね。
不運・不幸ばかり続くと、「(生きるのも)もういいか」という気持ちになってしまうかもしれません。
生きる情熱をなくしたとしても、だからといって即死ぬのではなく、開き直って成り行きに任せていればいいのではないでしょうか。
それが私の考えです。
みなさんは、いかが思われますか。
以上、ザ・女の事件【合冊版】Vol.2-2(ユサブル、Kindle版)は、シングルマザー硫化水素隣人心中巻き添え事件など実録5作品の合冊版、でした。
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